「バリュープロポジションの重要性を知りたい」
「バリュープロポジションの作成手順は?」
BtoB企業のマーケティング担当者の中には、このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
どの業界においても競合が増え、競争が激化している現代は、品質だけを求めて製品やサービスを提供しても、容易には売れない時代になってきています。これから、さらに競争が激しくなることが予想される中で、企業が生き残るために検討しておきたいのが、「バリュープロポジション」です。
「バリュープロポジション」の重要性を理解し、自社のバリュープロポジションを正しく作成できれば、自社の提供する価値と顧客ニーズの「ずれ」を解消でき、より多くの集客や高い売り上げが期待できます。
本記事では、現代で必要不可欠とされる「バリュープロポジション」の重要性や作成手順、注意点などを解説します。
目次
バリュープロポジションとは?また、なぜ重要なのか
バリュープロポジションとは、簡潔にいうと「顧客に求められているが、競合他社では提供できない、自社だけが提供できる価値のこと」です。
現代は一昔前と違って、クオリティを上げるだけでモノが売れるような時代ではありません。競合企業が増えている中で、顧客に自社を選んでもらうために、競合と差別化を図った商品やサービスを提供する必要が出てきています。しかし、ニッチな商品を目指したつもりで、顧客のニーズからかけはなれた商品を出しても、顧客はさらに離れていくだけです。
そこでよく検討しておきたいのが、「バリュープロポジション」です。バリュープロポジションでは、顧客ニーズに重点を置くのが前提です。そこから自社の優位性や他社との差別化を考えていきます。
「顧客が求める価値」と「競合にはない、自社が提供する価値」が重なる部分を明確にしたのが「バリュープロポジション」なのです。
バリュープロポジションとは?また、なぜ重要なのか
バリュープロポジションを検討するために活用できるテンプレートが、「バリュープロポジションキャンバス」です。これは、バリュープロポジションを明らかにするためのフレームワークです。
バリュープロポジションキャンバスには、上図の右側に顧客の「目標(達成したいこと)」が存在し、それを達成する上での「ゲイン(嬉しいこと)」と「ペイン(嫌なこと)」が記載されています。上図の左側に記載されているのは、「自社が提供する製品・サービスの価値」です。
これらの項目を埋めていくことで、自社が、どのような顧客ニーズに、あった製品・サービスを提供しているか、が明らかになります。
競合との差別化を図る場合、「顧客ニーズ」と「自社が提供する価値」に「ずれ」が生じるケースも少なくありません。しかし、バリュープロポジションキャンバスを用いることで、「顧客のニーズ」と「自社が提供する価値」が可視化でき、顧客ニーズとの「ずれ」が生じにくくなります。
バリュープロポジションキャンバスの作成手順
バリュープロポジションキャンバスは、どのように活用したらよいのでしょうか。ここでは、すぐに実践可能なバリュープロポジションキャンバスの作成手順を説明します。
バリュープロポジションキャンバスの作成手順は、次のとおりです。
1.「顧客セグメント」「提供価値」を明らかにする
2.「顧客が達成したいこと」を明らかにする
3.2.を叶えるにあたって、「嫌なこと」を明らかにする
4.2.を叶えるにあたって、「嬉しいこと」を明らかにする
5.2.を達成するための自社の製品やサービスを書く
6.3.のニーズを満たすにあたって自社が提供できる価値を明らかにする
7.4.のニーズを満たすにあたって自社が提供できる価値を明らかにする
次に各手順を詳しく解説します。
1.「顧客セグメント」「提供価値」を明らかにする
まずは、それぞれのセグメントを細かく書いていく前に、「顧客セグメント」と「提供価値」の内容を大まかに定義しておきましょう。具体的には、「自社のサービス内容」と「ターゲットとしている顧客の情報」を明確にしていきます。
この部分は決して長い文章である必要はなく、シンプルで短い文章にまとめるのがポイントです。誰にでもわかるようにしておくと、バリュープロポジションキャンバスを作成しやすくなります。
ここでは具体例として、自社のサービス内容を「SFA(営業支援システム)の開発・販売」と仮定してみます。
2.「顧客が達成したいこと」を明らかにする
次は、「顧客が達成したいこと」を明確にします。このとき、主観や想像で考えてはいけません。できるだけ顧客目線に立つために、顧客インタビューや現場観察などを通して客観的に考えていく必要があります。
もし、自社のサービスが「SFA(営業支援システム)の販売」であれば、「顧客が達成したいこと」の項目には「案件ごとの営業履歴や進捗管理を簡単に行いたい」のような一文が挙げられます。
3.「2.」を叶えるにあたって、「嫌なこと」を明らかにする
ステップ3では、「顧客が達成したいこと」を叶えるにあたって生じる顧客にとって「嫌なこと」を明らかにしていきます。
SFAを求めている企業が顧客であれば、「SFAは機能が多すぎて使いづらい」といった嫌なことが挙げられるでしょう。これらの項目は一文である必要はなく、思いつくことがあれば、複数列挙していくことが重要です。
4.「2.」を叶えるにあたって、「嬉しいこと」を明らかにする
次は、先ほどのステップと同様に、「顧客が達成したいこと」を踏まえて顧客にとって「嬉しいこと」を考えていきます。
SFAを販売している企業を例にした場合、「嬉しいこと」の項目には、「コストをかけずにシステムを使いたい」といった願望や、「はじめのうちは専門家のサポートが欲しい」といった願望が浮かび上がるかもしれません。
5.「2.」を達成するための自社の製品やサービスを書く
先に顧客視点に立ち「顧客セグメント」を書き出したことで、いよいよ顧客への提供価値である「バリュープロポジション」のセグメントを書き出せるようになります。
まずは、「顧客が達成したいこと」を踏まえた上で、自社の製品やサービスを書き出しましょう。
ここでの例では、「リーズナブルでシンプルな機能だけを備えた営業支援システムの提供」のような書き方になります。
6.「3.」のニーズを満たすにあたって自社が提供できる価値を明らかにする
ステップ3で書き出した、顧客にとって「嫌なこと」を極力減らすために、自社ができることを考えていきましょう。
「SFAは、機能が多すぎて使いづらい」という顧客の悩みがある場合は、「機能をシンプルにして、専門知識がなくても使いやすく」といった価値を提供できるかもしれません。
7.「4.」のニーズを満たすにあたって自社が提供できる価値を明らかにする
最後に、ステップ4で書き出した、顧客にとって「嬉しいこと」に対応する「自社が提供できる価値」を明らかにしていきましょう。
ここでの「SFAを販売している企業」の例では、「コストをかけずにシステムを使いたい」というニーズがあるので、「無駄な機能やサービスを排除し、リーズナブルな料金設定で提供する」といった価値が考えられます。
このように、顧客セグメントから考え、顧客セグメントに呼応する形で自社の提供する価値を埋めていくと、「顧客ニーズとのずれ」を解消したバリュープロポジションの作成が可能です。
バリュープロポジションを検討する上での注意点
競争が激化していくこれからの時代、バリュープロポジションの重要度は着実に増していきます。しかし、誤った考え方でバリュープロポジションを組み立ててしまうと、顧客のニーズとずれが生じてしまう恐れがあるので注意が必要です。
バリュープロポジションキャンバスを作成する前に、検討する上での3つの注意点を確認しておきましょう。
1.顧客ニーズを起点にする
バリュープロポジションキャンバスでは、「顧客が達成したいこと」に加え、顧客にとって「嬉しいこと」や「嫌なこと」も考える必要があります。しかし、提供者が顧客の目線に立つのは難しく、想像だけで「嬉しいこと」や「嫌なこと」を考えることはできません。
独りよがりのバリュープロポジションキャンバスとならないように、ユーザインタビューを行ったり、現場で事実を観察して、正確に顧客ニーズをとらえるようにしましょう。
2.競合との差別化も忘れてはならない
冒頭で解説したように、バリュープロポジションでは、「競合他社にはない、価値の提供」が重要なポイントです。顧客ニーズをファーストにしながらも、自社だけが提供できる価値を検討しなければなりません。
例えば、コロナの流行によって知名度を挙げた「Zoom」は、すでに「Skype」などのWeb会議サービスがありながら、「圧倒的なユーザビリティ」というバリュープロポジションでシェアを独占することになりました。直感的に操作でき、会員登録不要という使いやすさが、ほかのWeb会議サービスとの差別化になったのです。
このように、競合他社と比べて正しい差別化が図れているか、のチェックも、忘れないようにしましょう。
3.誰がみても「わかりやすく」する
バリュープロポジションは、事業と関係するあらゆる部門に浸透させる必要があります。関係者全員が共通の認識を持てるように、「わかりやすく」「短い言葉で」まとめることが重要です。バリュープロポジションキャンバスの作成時も、長すぎる文章は避け、シンプルな言葉でまとめるよう意識しましょう。
バリュープロポジションの企業事例
1.Airbnb
Airbnbは、部屋を貸したい人(ホスト)と部屋を利用したい旅行者(ゲスト)を結び付けるサービスです。ホストに収入をもたらす一方で、ゲストには地元の文化やコミュニティを体験する機会を提供することがバリュープロポジションです。
2.Amazon
Amazonは、他社にはない多種多彩な商品・サービスの提供、迅速な配送が特徴です。幅広い品揃えやスピーディな配送、そして便利なオンラインショッピングプラットフォームを通じて、顧客の利便性を最大限に高めることがバリュープロポジションです。
3.Netflix
Netflixは、従来のレンタルサービスとは異なり、外出する必要がなく手軽にストリーミング動画を楽しむことができます。さらに、他のどのテレビ局でも見られないオリジナルコンテンツがたくさん提供されています。この2つがバリュープロポジションで、他社との差別化を図っています。
4.ニトリホールディングス
ニトリは、低価格で機能的な家具を提供することを強みとしています。彼らのバリュープロポジションは、「高品質で低価格な家具を提供する」という点にあります。ニトリは、多くの消費者にとって手頃な価格の家具を提供することで、日本国内外で成功を収めました。
5.ユニクロ(ファーストリテイリング)
ユニクロは、高品質な衣料品を手頃な価格で提供することを強みとしています。彼らのバリュープロポジションは、「高品質で快適なファッションを手頃な価格で提供する」という点にあります。これにより、ユニクロは幅広い消費者層に支持され、急速な成長を遂げました。
6.ファナック
ファナックは、産業用ロボットや数値制御機器を提供する企業です。彼らのバリュープロポジションは、「高精度で信頼性の高い自動化ソリューションを提供する」という点にあります。ファナックの技術と品質は世界的に高く評価されており、製造業界での生産効率向上や品質向上に貢献しています。
7.サイボウズ
サイボウズは、クラウドベースの業務支援ソフトウェアを提供する企業です。彼らのバリュープロポジションは、「効率的な業務プロセスを実現するソフトウェアを提供する」という点にあります。サイボウズのソフトウェアは、企業内の情報共有やタスク管理をスムーズにし、業務効率の向上に貢献しています。
これらの事例は、それぞれ異なる業界や市場で成功を収めた企業ですが、共通しているのは、明確なバリュープロポジションを持ち、それを顧客に提供することで競争力を築いている点です。
まとめ
製品やサービスの母数が増え、多くの競合が生まれている近年、正しく作成されたバリュープロポジションは、企業が生き残るための1つの軸として大きな役割を果たしてくれます。
競合との差別化や顧客ニーズの調査など、バリュープロポジションキャンバスを作成する上で注意すべきポイントを踏まえながら、現代で必要不可欠となる「自社にしか提供できない価値」を再認識しておきましょう。
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