「BtoBでのクロスセルは、どうやって実行するの?」
「クロスセルを実行するときの、注意点を知っておきたい」
BtoB企業のマーケティング担当者のなかには、このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
検討段階にいる見込み客や既存顧客に、関連商品やサービスを購入してもらうクロスセルは、アップセルと同様に収益の増大につながる施策です。しかし、間違ったアプローチを行うと、顧客の離反を招いてしまう恐れがあります。
本記事では、BtoBにおけるクロスセルの必要性や実行方法、押さえておきたい注意点までを解説します。
目次
クロスセルとは
「クロスセル」とは、自社の製品やサービスの購入を検討中、もしくは購入後の顧客に対して、関連するほかの製品やサービスを購入してもらうことです。例えば、次のような例が挙げられます。
・サーバを契約する顧客に、セキュリティプランもあわせて導入してもらう
・ パソコンを購入する顧客に、ディスプレイの保護フィルムもあわせておすすめする
クロスセルと似ていてよく混同されるのが、「アップセル」です。アップセルでは、自社の商品やサービスを検討している顧客に対し、より上位のモデルやプランを購入してもらうことを指します。アップセルには、次のような例があります。
・ 3万円のスマホではなく、より高機能の8万円の機種を購入してもらう
・ 契約の更新時に、3ヵ月契約から1年の長期契約に変えてもらう
クロスセルもアップセルも、顧客単価を増大させ、収益の拡大につながる施策です。本記事では、クロスセルについて詳しく解説します。
BtoBにおいてクロスセルが必要な理由
BtoBにおいてクロスセルが必要とされているのには、次の理由があります。
1.顧客単価を上げることができる
クロスセルを行うと、顧客単価を上げることが可能です。企業の売上は、「顧客単価」と「顧客数」の掛け合わせで決まります。
売上 = 顧客単価 × 顧客数
つまり、売上を増やすためには、顧客単価を上げるか、顧客数を増やすか、あるいは、両方に取り組む必要があります。しかし、顧客数を増やすのは、多くの企業にとって簡単なことではありません。それは、BtoBはBtoCと比較して、ターゲットとなる顧客が少なく、常にパイの奪いあいとなるためです。
その点、すでに商品やサービスの検討段階にある顧客や既存顧客であれば、顧客単価を上げることで、自社の売上を拡大することが可能です。もともと市場が限定されているBtoBでは、顧客数を1増やすより、1万の顧客単価を1万2,000円にするほうが、ハードルは低く、着実に売上を伸ばしていけるのです。
2.営業コストを抑えることができる
マーケティングでは、「新規顧客を獲得するのには、既存顧客の5倍のコストがかかる」という、いわゆる「1:5の法則」があります。同じ1万円を払う顧客であっても、新規顧客は、獲得コストが5倍かかることから利益率が下がります。
つまり、自社の売上を増やそうと「顧客数」を増やすことばかりに目がいくと、営業コストが膨大になり、かえって経営を圧迫する可能性があるのです。先ほども述べたように、BtoBは市場が限定されているため、見込み客の母数が限られています。少ないパイの奪いあいは、体力だけを奪われる結果にもなりかねません。
そのため、営業の強化や新人の育成に課題を抱えている企業は特に、既存顧客に目を向けるほうがいいのです。既存顧客の離反を防ぎ、さらにクロスセルで単価を上げることができれば、営業コストを抑えた上で、効率的に利益を増やしていけるでしょう。
BtoBのクロスセルを実行するステップ
それでは、BtoBにおいてクロスセルを実行する、具体的なステップを解説します。
1.顧客をリストアップする
まずは、SFA(Sales Force Automation=営業支援システム)やCRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)を活用し、既存顧客のうち比較的LTVが大きい顧客を選別します。
いくら「1:5の法則」で、既存顧客のほうがコストはかからないといっても、決してゼロではありません。そのため、既存顧客への働きかけにおいても、ターゲットの絞り込みは必要です。
また、2:8の法則ともいわれる「パレートの法則(※顧客全体の2割である優良顧客が売上の8割をあげているという経験則を指す)」から考えれば、上位20%の顧客が全体売上の80%を占めることになります。数字の真偽はともかく、重要なのはLTVが大きい顧客はロイヤルティが高いと考えられ、売上へのさらなる貢献が期待できるということです。
LTVを大まかに把握する際には、「LTV=平均購買単価×購買頻度×継続購買期間」などの式で求めます。既存顧客のうち、よく購入してくれるお客様や長くお付き合いのある、顧客ロイヤルティが高いお客様に焦点をあて、計算してみましょう。
LTVを、より正確かつ自動的に算出し、詳しく分析したい場合には、BIツールを用いるのもおすすめです。LTVの算出式は、上記に上げたもの以外にも種類が多く、顧客1人ひとりのデータを把握して計算するのは、なかなかに困難です。こういったときに、ビッグデータの収集と分析を得意とするBIツールが役立ちます。
2.顧客ニーズを分析する
LTVが大きい顧客を選別したら、彼らが抱えているニーズを分析します。現状、自社の製品・サービスで解決できていない課題がほかにないか、これまでの顧客とのコミュニケーションをMAやCRMなどで振り返り検証をしてみましょう。
ツールに頼り切るのではなく、日常のコミュニケーションのなかで、ふと聞いた話がヒントになることもあります。ロイヤル顧客とは、日ごろから能動的なコミュニケーションを取っておくことも大切です。
3.関連商品を用意する
顧客が購入した製品・サービスと一緒に購入することで、利便性や効果がアップする商品を用意します。
例えば、WEB制作会社であれば、ホームページの制作と一緒にSEO対策やWeb広告の運用、サーバ保守管理といったメニューを用意すると、継続的な売上増加が見込めます。
勤怠管理システムを提供しているのであれば、連携可能な給与計算システムをおすすめしてみましょう。勤怠情報が自動計算されて、給与計算に反映されるようになるため、顧客の利便性を高めます。
コンサル型ビジネスであれば、ツールの代理販売契約を行い、導入・運用時の手数料を得るなどすれば、顧客の手間を省いて信頼を獲得しつつ、自社の利益を増やせます。
BtoBのクロスセルを実行するステップ
BtoBでクロスセルを実行するときには、顧客ロイヤルティが十分高まっているかを見極めることが大切です。
商品やサービスに満足感を得て、信頼を獲得できていなければ、押し売りの印象を与えて、かえって離反を招きかねません。いくらLTVが高くても、惰性で使っているようなら、クロスセルはうまくいかないこともあるのです。
さらに、クロスセルにおいては、自社視点ではなく、顧客視点で考えることが重要です。クロスセルによって、さらに顧客満足度が上がるのか?という観点で、商品やサービスを選び、提案しましょう。「自社が売りたいもの」を売るのではなく、「顧客の役に立つもの、メリットを感じるもの」を提案し、より高い価値を提供することを重視します。
そうすることで顧客のロイヤルティは、さらに高まります。結果的にLTVが増大し、業績が伸びていくのです。
まとめ
クロスセルは、企業の売上を伸ばすために効果的な施策です。新規顧客を獲得する施策や顧客数を増やす施策は、コストがかかり、体力が必要になります。それだけの体力がない、人材が育っていない場合は、既存顧客の顧客単価を上げる施策が有効です。
ただし、クロスセルは、顧客が製品やサービスに十分満足していないと、かえって反感を招きます。LTVを測ると同時に、顧客ロイヤルティの成長具合の見極めも必要です。
メディックスでは、クロスセルやアップセルを実施する際の、マーケティング環境の分析やペルソナの作成、カスタマージャーニーマップの作成といったサービスも実施しています。 これらのサービスに興味がある方は、ぜひ、お気軽に相談ください。