「カスタマーサクセスとは?」
「カスタマーサクセスのKPI設定や取り組み方を知りたい」
BtoB企業のマーケティング担当者、またはカスタマーサクセス担当者の中には、このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
カスタマーサクセスは、顧客1社あたりが自社に対して支払う総収益である「LTV」を、高めるための取り組みの1つとして知られ、サブスクリプション型サービスが増えてきた近年、より注目を集めています。
カスタマーサクセスに正しく取り組めば、会社の売り上げを伸ばせますが、期待している効果を得るためには、正しいKPI設定やBtoBマーケティングとの関係性などを理解しなければなりません。
本記事では、カスタマーサクセスの重要性やKPIの設定方法、正しい取り組み方などを紹介します。
目次
カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセスとは、直訳で「顧客の成功」という意味があり、顧客がサービスや製品の利用を早期に慣れ、使いこなすことができるよう、能動的にサポートする概念や取り組みのことを指します。
カスタマーサクセスのポイントは、受動的ではなく、能動的に顧客をサポートする点です。例えば、顧客から「〇〇の使い方がわからない」と要望があった場合に対応するのは、受動的であって、能動的ではありません。
顧客にとっての成功(サクセス)を理解した上で、顧客に必要なアクションプランなどをこちらから提案する能力が必要です。カスタマーサクセスにより、顧客が期待している結果を与えられるようになると、最終的に自社の利益にもつながります。
カスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスは、カスタマーサポートと混同することがよくあります。しかし、カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、違う概念となるので注意が必要です。
カスタマーサポートは、顧客から問い合わせがあって初めて顧客の悩みや困りごとを助けるアクションを指し、受動的にサポートする概念です。顧客から疑問点やクレームが届いた場合、すみやかに課題解決をすることは、カスタマーサポートに分類されます。
一方で、カスタマーサクセスでは、顧客から問い合わせを受ける前に、何かしらのトリガーを検知して、能動的にサポートします。例えば、「1週間以上ログインしていない」「使われていない機能がある」などの問題を発見すれば、速やかに顧客の期待値を超えるような提案を行わなければなりません。
両者の違いを表で確認してみましょう。
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カスタマーサクセス |
カスタマーサポート |
ミッション |
・計画的な対応 ・顧客の事業成長 |
・迅速な対応 ・顧客の問題解決 |
スタンス |
能動的 |
受動的 |
KPI |
・LTV ・解約率 |
・対応件数 ・対応時間の短縮 |
ゴール |
顧客の成功 |
問題の解決 |
表で見ればわかりますが、両者は全く別の概念です。混同しないように注意しましょう。
BtoBマーケティングとの関係
カスタマーサクセスは、マーケティングや営業との連携も欠かせません。その理由は、カスタマーサクセス部門が、オンボーディングの完了率をKPIの1つとして評価するためです。
オンボーディングとは、「製品・サービスへの定着を目指す概念」を指します。オンボーディングの完了率が高いということは、そのサービスに満足し、定着している利用者が多いということです。
企業は、オンボーディングの完了率を高めるために、サービス利用者が「このまま使い続けたい」と思ってもらえる体験を提供しなければなりません。
このオンボーディング完了率を高めるためには、カスタマーサクセスの活動だけではなく、BtoBマーケティングから営業、オンボーディグに至るまでのコミュニケーションを一貫させる必要があります。
例えば、マーケティングや営業の段階では、「ツールの導入で、人事部門の生産性が50%アップ」と聞いて契約に至っても、導入後にその効果を感じなければ、すぐに解約されてしまいます。契約してもすぐに解約されるのであれば、オンボーディングは成功したといえません。
このような理由から、カスタマーサクセスは、マーケティングや営業とも密接な関係にあり、連携を取っていかなければならないのです。
カスタマーサクセスが重要視されている理由
近年、カスタマーサクセスの注目度は上がってきています。なぜ、これほどまでに重要視されているのでしょうか、
そこには、主に2つの理由があります。各理由について詳しくみていきましょう。
1.サブスクリプション型サービスが増えている
サブスクリプション型サービスとは、提供する商品やサービスの数ではなく、利用期間に対して対価を支払うサービスのことです。身近なところでは、Amazonのプライム会費やNetflixなどの映像配信サービスなどで、月額・年額を支払うサービスが例です。
近年、このサブスクリプション型でサービスを販売する企業が増えています。サブスクリプション型サービスには、手軽に導入してもらえるというメリットがありますが、一方で、解約も簡単である点がデメリットです。
そのため、どの業界においても類似サービスが多い現代では、顧客に「このサービスは使いづらい」「期待した効果は得られなさそうだ」と思われると、すぐに解約や競合へのリプレイスにつながってしまいます。
サブスクリプション型サービスを利用していて、業界に類似サービスが多い場合、「使いづらいから問い合わせて聞いてみよう」と、コンタクトを寄せてくれる顧客はなかなかいません。すぐに解約されて、別の類似サービスへ流れてしまいます。
カスタマーサクセスの役割の1つは、このように、導入しやすいが解約もされやすい、サブスクリプション型サービスでの解約率を低下させることです。顧客側の視点に立ちサポートをしていくことで、顧客の満足度が上がり、解約率が下がります。
2.LTVの向上が期待できる
カスタマーサクセスは、顧客が困っているその瞬間に能動的なサポートを目指します。そのため、顧客は早期にサービスを理解することができ、そのサービスによって期待どおりの結果を得られます。カスタマーサクセスに取り組むことで、顧客が自社のサービスや製品を好きになってくれる確率が上がるのです。
結果として、解約(チャーン)を防ぎ、顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益である「LTV」の向上が期待できます。
カスタマーサクセスのKPI
カスタマーサクセスを成功させるには、KPIの設定が重要です。しかし、KPIは設定を誤ると期待した効果を得られなくなるので、正しい設定方法を知っておかなければなりません。
ここでは、カスタマーサクセスに取り組む際のKPIを紹介します。
1.LTV(顧客生涯価値)
カスタマーサクセスで考えられるKPIの1つが「LTV(顧客生涯価値)」です。LTVを簡単に説明すると、「顧客1社あたりが自社に対して支払う総収益」といえます。
一般的な計算式は「平均購入単価×平均購入頻度×平均購入期間」で求めることができ、サブスクリプション型であれば、「月額費用×契約期間」が計算式です。
数式を見てもわかるように、重要となる要素は「購入単価」と「購入期間」の2つです。アップセルやクロスセル、サービス付加価値の向上により、購入単価を上げながら、カスタマーサクセスにより、解約率(チャーンレート)を下げる取り組みが重要です。
2.解約率(チャーンレート)
解約率(チャーンレート)とは、ある期間で解約に至った顧客の割合のことを指します。解約率が高いとLTVも低下するので、カスタマーサクセスのKPIとして設定可能です。
マーケティングや営業に力を入れても、解約率(チャーンレート)が高いと網目が粗いザルのように、顧客が流れてしまい、効率が悪くなります。特に、サブスクリプション型のサービスであれば、新規顧客を増やしていくよりも、契約している顧客の解約を防止することが重要です。
解約率(チャーンレート)は、特に優先して改善しておきたい指標といえるでしょう。
3.オンボーディング完了率
顧客のサービスへの早期定着を目指す概念が、「オンボーディング完了率」です。
オンボーディング完了率は、
・マーケティングから営業、オンボーディングまで、コミュニケーションを一貫
・サービス・ツール内でのチュートリアルやFAQサイトの構築
などにより、向上させられます。
オンボーディング完了率が上がるということは、サービスを理解した上で、定着してくれる顧客が増えるということです。結果として、解約率(チャーンレート)の低下につながります。
4.NPS(ネットプロモータースコア)
NPS(ネットプロモータースコア)とは、顧客に対して「同僚や友人に紹介したいと思えるか」とアンケートを取り、0(批判的)から10(好意的)の間で評価を得るシンプルな質問調査です。自社サービスに対するロイヤルティを測る指標として使われます。
NPSは、プロダクト部門やカスタマーサクセス部門などの活動を通じて得られたカスタマーの満足度を把握するには、非常に有効です。NPSの低下は、解約率(チャーンレート)の低下につながります。
NPSをKPIに設定し値の向上を目指すことで、結果的に解約率(チャーンレート)の低下やLTVの向上にもつながります。
5.CAC(顧客獲得コスト)
CACとは日本語で「新規獲得コスト」と呼ばれ、名前のとおり新規顧客を獲得するためのコストのことを指します。
マーケティングから営業、オンボーディングへと至るまでにかかった総費用を、新規顧客の数で割ることで求められます。計算式にすると「CAC=営業やマーケティング費用の合計÷新規顧客数」です。
売上を考えたとき、LTVを高くするのではなく、CACを小さくしたほうが有効な場合があります。例えば、LTVで3万円の売上が見込めたとしても、CAC(顧客獲得コスト)で2万やしていれば、実質的な粗利は1万円しかありません。
CACを最小限に抑えることで、より効率的に粗利を伸ばしていくことができるのです。
カスタマーサクセスに取り組む方法
カスタマーサクセスの重要性を理解しても、正しい取り組み方を知らなければ、期待した効果は得られません。
カスタマーサクセスに取り組むためには、
・顧客の解約の予兆を早期に察知して、能動的に働きかける
・オンボーディング完了率を高める
の2点が、なによりも重要です。
これら2点を効率よく行うためには、まずは、過去のデータから解約の予兆を掴むことがポイントになってきます。
例えば、「2週間ログインがない」「基本情報の入力が50%未満」、「データ登録数が30件未満」など、顧客のアクションは解約の予兆を掴むサインとしてとらえられます。このような動きを察知したらメールで即座にアラートするようにしたり、専用ツールを導入して早期に予兆を察知し、能動的に働きかけます。
また、オンボーディング完了率を高めるために、チュートリアルや訪問レクチャ、FAQサイトの構築なども重要です。顧客が求めていることを察知した上で顧客の手助けをすることが、解約率の低下につながります。
まとめ
カスタマーサクセスは、サブスクリプション型サービスが増えている背景があることや、LTVの向上が期待できることから、重要視されるようになっています。
カスタマーサクセスに正しく取り組み、施策を成功させるためには、解約率やオンボーディング完了率などのKPIを正しく設定することが重要です。正しいKPIを設定し、過去のデータを参考にしながら、期待どおりの結果を得られるようにしましょう。
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カスタマーサクセスやBtoBマーケティングに関してお困りの際は、お気軽にご相談ください。