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デプスインタビューの方法とは?事前準備から当日の流れ、成功させるためのコツを紹介

Jan 12, 2023 8:30:00 AM
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BtoBマーケティングは、BtoCマーケティングに比べて顧客の課題やニーズが表面化しづらいといった特長があります。

「ニーズに沿ったアイデアを訴求できていない」
「新商品・サービスを展開する際の顧客層が見えにくい」
などの悩みを持つ担当者の方も多いのではないでしょうか。

自社の商品・サービスのマーケティングを行うにあたっては、顧客が、どのような課題・ニーズを持っているか、を把握するための市場調査が必要です。その1つとして、「デプスインタビュー」という調査手法が注目されています。

この記事では、デプスインタビューとは何か。また、事前準備やコツについて解説します。


目次

 

デプスインタビューとは、定性調査の方法の一種


顧客に対して実施するインタビューには、定量調査と定性調査の2種類の方法があります。

アンケートのように大多数に対して無作為にデータを取得する方法は、定量調査の一種に含まれます。今回、紹介するデプスインタビューは、「定性調査」に該当します。では、定性調査とは、どのようなものなのでしょうか。

この章では、定性調査とデプスインタビューについて詳しく解説します。


定性調査とは


定性調査とは、商品の問題点や顧客の持つニーズなどを、数値(数や割合など)ではなく、より具体的に言語化して調査する方法です。対象者の発した言葉や行動、もしくは調査者が観察して感じた印象など、数値化できないデータを収集します。

一般的なインターネットリサーチや街頭調査は、定性調査ではなく、定量調査にあたります。定量調査では、調査項目の設定次第で必要なデータを数値として取得できます。

これに対して定性調査では、対話を中心に、より詳細な情報を取得します。定量調査に比べて、対象者のより内面的かつコアな情報を得られることが特長です。代表的な手法として、インタビューや日記調査、行動観察調査などが挙げられます。

ただし、定性調査は、調査員の技術力や思考に左右される傾向がある点には注意が必要です。


デプスインタビューのメリット


デプスインタビューとは、一対一の対話を通して実施する定性調査の一種です。大多数を対象に行うアンケートでは得られないような、対象者の感情や価値観、潜在意識などを引き出すことを目的としています。

インタビュアーと回答者は、一対一で対話するため、他者がいると話しづらいような内容でも、本音を引き出しやすくなることが期待できます。

このデプスインタビューには、回答に対する理由や背景などを理解したり、回答者本人が自覚していない潜在的なニーズを見つけ出したりできるメリットがあります。ただし、心理学的な面が強くなるため、インタビュアーには、ある程度のスキルが求められます。

また、デプスインタビューは、既存顧客の感情や考えだけではなく、新たな市場で商品・サービスを展開するときにも活用できます。ターゲットとなる顧客はどのような人か、顧客がどのような感情を持っていて購買行動を起こすのか、などを事前に知ることで、マーケティング戦略に反映することができます。

 

デプスインタビューのデメリット


メリットがある一方、デプスインタビューには、以下のようなデメリットがあります。

・個人の意見が強調されるリスク

デプスインタビューは、人々の個人的な意見や体験に基づいています。そのため、情報が一方向に偏る可能性があります。インタビュアー(質問者)の思い込みや聞く質問によっても結果が影響を受けることがあるので、注意が必要です。

・一般的な傾向を導きにくい

デプスインタビューは、少数の人々に対して行われることが多いです。そのため、その結果を広く一般的な傾向として捉えるのは難しいことがあります。信頼性と有効性を確保するために、注意深いサンプリングと分析が重要です。

・ある程度の時間と人員が必要

デプスインタビューは、対話を通じて情報を収集する方法です。そのため、多くの時間がかかることがありますし、インタビュアー(質問をする人)のスキルも必要です。また、インタビューが終わった後も、詳細な分析が必要です。こうした作業には時間と人員が必要です。

・ばらつきの問題

同じテーマで複数のインタビュアー(質問者)がデプスインタビューを行う場合、質問の違いや解釈の違いが出ることがあります。それによって、結果の比較や合意形成が難しくなることがあります。

 

デプスインタビューの前に準備しておくべきこと


デプスインタビューを実施する前には、いくつか準備が必要です。ここからは、各段階で、どのような準備が必要なのか、を1つずつ解説します。


目的を明確にする


まずは、どのような目的でデプスインタビューを実施するのか、を明確にすることが重要です。

「売上を伸ばしたい」「商品にまつわる問題点を見つけたい」「購入に至る理由や意思決定のプロセスを把握したい」といったように、目的は様々です。

目的が明確でないと、ターゲットや質問内容の軸がぶれてしまい、引き出したい情報が得られなくなる可能性があります。このような失敗を防ぐために、顧客から聞き出したい内容は何なのか、を事前に整理してみましょう。

目的が明確になれば、対象者にどのような質問をすればよいか、具体的な項目を設定できるようになります。質問には、自社が知りたい情報を引き出せるような内容を設定しましょう。

ターゲットを選定する


次のステップとなるのが、ターゲットの選定です。調査のターゲットを選定することを「リクルーティング」とも呼びます。

ターゲットの選定にあたっては、デプスインタビューを実施する目的と一致するユーザ属性を考えることが重要です。

事前にアンケートを行い、年齢や性別、利用している製品などにより絞り込むことで、ターゲットを選定しやすくなります。選定例として、下記が挙げられます。

ターゲットの選定例
・自社製品を利用しており、今回の調査目的に一致する属性の人
・無作為に選ばれた人のうち、調査目的に一致する属性の人
・マーケティング施策のターゲットセグメントに含まれる属性の人

調査テーマと関わりがある人や、関心の高い人などを選定すると、ミスマッチを防ぎやすくなります。また、対象者の深層心理を引き出すためには、「積極的に対話をしてくれそうか」「言葉で自分の感情や価値観を説明できるか」といった内容を考慮することも大切です。

なお、新規参入の事業で社内に顧客情報がない場合や、BtoB事業のように選定する母数自体が少ない場合には、ターゲットの選定が難しく、ターゲット選定には、技術と経験がより一層必要になります。


対象人数と、かかる費用を明確にする


最後に、対象人数と費用を決定します。デプスインタビューの対象人数は、少人数がよいとされています。なぜなら、対象人数が多すぎると、徐々に既存の意見と同じものが出てくるようになる傾向があるためです。同じ属性の対象人数は3名程度が基本と考えておくとよいでしょう。

対象人数を決定したら、費用についても計算しておく必要があります。外部に調査を依頼する場合の費用は、一般的に10万円前後とされています。質問項目が多くなるほど、費用も高くなりやすいと考えられます。

そのほかにかかる費用は、インタビューを実施するための場所の利用費として2〜3万円程度、参加してもらった回答者に渡す謝礼として1人あたり2万円程度とされています。なお、最近ではコロナ禍などの影響で、オンラインで行うインタビューも浸透しており、ZoomなどのWeb会議ツールを利用して行うことも可能です。

また、インタビュー実施後に作成するレポートにも10万円程度の費用が必要です。内容しだいでレポート費用が増える可能性もあるため、費用対効果が得られるか、検討してから実施することが重要です。

デプスインタビューの手順や、成功させるコツについては、下記で紹介します。

 

デプスインタビューを行う手順

 

デプスインタビューでは、事前に用意した質問内容に沿って回答を求めます。次に、得られた回答をもとに、答えを掘り下げられるような質問を投げかけましょう。

例えば、1つの回答が得られた際に「そう考える理由」や「その考えを持つに至ったきっかけ」「今後、改善されていく上で何を期待するか」などをヒアリングします。

このとき、対象者からよく発せられる言葉や、対話で印象に残った事柄についても掘り下げてみましょう。深層心理や本質を知るきっかけとなり、潜在的ニーズを引き出すことにもつながります。1つの回答に対して深掘りして、顧客の価値観や興味・関心、動機、心理などの情報を得ることで、マーケティングの施策を立てる際に役立ちます。

また、対象者が話しやすい環境を整えることも大切です。いくら調査であるとわかっていても、初対面の相手に本音をぶつけることはなかなかできません。すぐに本音を引き出せなかったとしても、根気強く対象者との仲を深めて、リラックスしてもらうことが重要です。

一方で、デプスインタビューは、インタビューで情報が取得できたら終わりではなく、得られた情報を目的に合わせて活用できるように整理・分析することが大切です。ただし、デプスインタビューで得られる情報は、言葉や行動、印象など、数値化できないデータなので、整理・分析には専門的なスキルを要します。

 

デプスインタビューを成功させるためのコツ

 

デプスインタビューは、個人の詳細なデータを収集できる一方で、本音を引き出すのが難しい面もあります。ここからは、デプスインタビューを成功させるためのコツを紹介します。

 

自分のことから話して信頼関係を築く

 

デプスインタビューを実施するにあたって、インタビュアーと対象者の信頼関係を築くことが重要です。対象者のなかには、初めて会う人に対して緊張をしたり、堅苦しさを感じたりする人もいます。

初対面の相手という印象を取り払い、緊張をほぐすためのコツは、アイスブレイクを活用することです。アイブレイクの代表的な方法には、自己紹介があります。インタビュアーの自己紹介から始めることで、雰囲気を和ませて、その後のコミュニケーションにつなげやすくなります。

自己紹介をする際は、ビジネス感を出しすぎず、なるべくプライベートな内容を取り入れることが効果的です。インタビュアー自身に関する話をすることで、肩の力を抜いてもらい、対象者が話しやすい雰囲気をつくることができます。

そのほか、相手の不安や緊張を解くアイスブレイクとして、商品・サービスの業界やトレンド、地域性のある話題を取り入れて雑談する方法もあります。

 

相手の意見に共感を示す

 

相手の意見に共感することも、信頼関係を築く上で効果的です。会話の最中に相手への共感を示したり、相手の話を聞いていることを表現したりすると、「自分の話を聴いてくれている」と感じ、本音を引き出しやすくなります。

話している内容からお互いの共通点を見つけて、そこから話を広げたり、相手が興味のある話題を話したりすることも効果的です。ターゲットの選定の時点で、ある程度の対象者データを収集して、共通点や興味があると思われる話題などについて考えておくことが重要です。

また、人間の心理として、「自分に興味を持ってくれている相手に対して、興味を抱く」といわれています。質問をする際は、相手に興味を示していることが伝わるような表情・姿勢を心がけることが大切です。

具体的には、対象者が話しているときに、相槌を打つ、相手の目を見る、回答に対して感情を示すなどが挙げられます。相手の話に共感しながら、インタビューを行うことで、話しやすい雰囲気をつくることができます。

 

相手が話しやすい状況を作る

 

デプスインタビューを実施する際は、インタビューを行う環境に気をつけることが重要です。特に、インタビューをする人数や場所は、相手がリラックスできるかどうかに大きく関わります。

インタビューを実施する場所は、周囲が気にならないところを選びます。インタビューをする空間が周りから見えないようにすることで、対象者が本音を話しやすくなります。

多くの場合は、自社の商品を利用している場所や、対象者の自宅または職場などでインタビューをします。普段と同じような環境でインタビューをすることで、リラックスしてもらいやすくなります。

また、インタビューは、基本的に一対一で行うことがベストです。なぜなら、回答者が周りの意見に影響されることなく、本音が話せたり、緊張せずに話してもらえたりする状況をつくりやすいためです。調査チームにおいて複数人で実施する必要がある場合は、できるだけ少人数のグループに分けるようにしましょう。

 

回答を誘導しない

 

本当に思っていることを引き出すためには、こちらから回答を誘導しないようにすることが大切です。回答を誘導してしまうと、対象者の本音を引き出すことができず、正しいデータを収集できません。

例えば、「~とは〇〇のことですか?」といった質問は、対象者自身の言葉を妨げる原因となりかねません。質問をする際は、はい・いいえで回答できる内容ではなく、「なぜ」「どのように」といった質問を投げかけて、対象者自身の言葉で話してもらうことが重要です。

意識するポイントは、自分が聞きたいことを引き出すための質問をするのではなく、相手が本当に話したいことを自然に話せるように質問を投げかけることです。こちら側で用意した質問をするのは最初の1回目のみで、そこから出てきた回答に対する深掘りは相手の発言に合わせて行いましょう。

ついついインタビュアーがほしい回答を引き出したくなりますが、正しいデータ取得のためには、会話の誘導は厳禁です。対象者に話してもらうことを意識してインタビューに臨みましょう。

 

質問を投げかけるときは、相手の様子を観察する

 

質問を投げかける際は、対象者の様子をしっかりと観察する必要があります。相手が今、何を思っているのか、表情やしぐさを観察することで、反応に応じた質問を投げかけることができます。

また、対象者の本音を引き出すためには、過去の回答者の発言を参考に紹介することも効果的です。例えば、「過去には〇〇のような意見がありましたが、いかがですか?」と投げかけると、対象者が自分の意見を言葉に出しやすくなります。

相手が回答に迷っていたり、言葉に詰まったりしている場合は、じっくりと待つ姿勢も大切です。質問を重ねて回答を急かしたり、話の途中で質問を投げかけたりすると、反感を買ってしまったり、心を閉ざしてしまったりする可能性があります。途中で聞きたいことができても、相手が話し終わるまでは待ちましょう。

そのほか、無意識でしている言動についてもチェックします。相手が無意識に行った言動には、深層心理が隠れていると考えられます。質問の際に、このような無意識の言動について投げかけることで、対象者自身が内面的な要素を見つめるきっかけとなります。雰囲気や話のテンポをよく観察して、相手が気持ちよく答えられるようなタイミングで質問を投げかけましょう。

 

質問は、言葉で回答できるように設定する

 

質問を投げかける際のコツは、言葉で回答できるような質問を選ぶことです。はい・いいえで答えられるような質問は避けましょう。理由や本音をしっかりと言葉で説明する必要がある質問をすることで、対象者の考えを深掘りしやすくなります。

また、設定した質問項目は、そのまま使用せずに、あくまで参考程度として、その場の雰囲気や、相手の状態に合わせた伝え方にすることも重要です。質問のみを投げかけるのではなく、会話中で自然に質問を挟むことも効果的です。

ずっと質問に答えなければいけない状況は、対象者が疲れてしまったり、ストレスになったりします。すると、質問に対して簡単な回答のみで終わらせたり、本音を話さなかったりする可能性もあります。会話の中で自然と質問を潜り込ませることで、ストレスなく答えを引き出せるようになります。

 

外部サービスを活用するメリット

 

前項でも説明したように、デプスインタビューを成功させるためには、目的に合わせたターゲットの選定や質問項目の設計、得られた情報の整理・分析、さらにはアウトプットが欠かせません。
しかし、これらを実行に移すためには、専門的な知識やノウハウが必要になります。そこで、外部サービスの活用もおすすめです。
下記では、外部サービスの一例として、メディックスが提供するデプスインタビューの特長を紹介します。

 

目的に合わせたインタビュイー(インタビュー対象者)の選定

 

メディックスでは、目的に合わせたインタビュイーの選定が可能です。例えば、新たな市場開拓などで社内に顧客の情報がない場合や、BtoB事業のように選定する母数自体が少ない場合でも、インタビュイーの選定が可能です。
まずは、デプスインタビューを行おうとする企業へのヒアリングを通じて、ターゲット条件とボリュームが満たされることが想定されるセグメントを定義し、セグメントに該当するインタビュイーを、実際にインタビュー可能な人材の条件と照らし合わせながら実施可能な候補者を選定します。

 

マーケティング施策とサービスレビューを意識した独自の質問項目

 

メディックスでは、目的に合わせて、自社が知りたい情報を引き出すために、最適な質問項目を設定した上でデプスインタビューを実施します。一例として、カスタマージャーニーを意識した設問形式でのインタビューなども提案できます。

 

マーケティング施策に落とし込むためのアウトプット

 

メディックスでは、マーケティング施策に落とし込むためのアウトプットまで実施可能です。例えば、複数名のインタビュイーから得た情報をマーケティング施策に活用できるように、共通する傾向やポイントとなる要素などをまとめます。また、想定される行動や情報ニーズなどをカスタマージャーニーマップに落とし込んでいくことも可能です。


まとめ


ここまでデプスインタビューについて詳しく解説しました。

一対一での会話を通じて、顧客の本音を聞いたり、深層心理を引き出したりできるのがデプスインタビューのメリットです。自社商品・サービスの課題・ニーズを確認したり、新たな事業展開において顧客層を把握したりする際に活用されています。

しかし、デプスインタビューのノウハウを持たない状態で自社のみで行おうとすると、ターゲットの選定や質問項目の設計、得られた情報をマーケティング施策に落とし込む作業が難航してしまうことがあります。自社のノウハウに不安がある場合は、外部サービスの活用も検討しましょう。

メディックスでは、BtoBに特化したコミュニケーション設計サービスをワンストップで、企画から実施まで提供しています。

カスタマージャーニーやデプスインタビューなどのコミュニケーション設計をはじめ、BtoBのデジタルマーケティングに必要な施策を網羅しています。

また、メディックスはBtoBマーケティングに精通しており、BtoB企業様と300社以上の取引実績、20年以上の経験・ノウハウを組織的に保有しています。顧客の声を取り入れたマーケティング活動を強化したい企業様は、お気軽にお問い合わせください。

Tag: BtoBマーケティング


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メディックスBtoBマーケティング編集部

デジタルマーケティングの基本的な考え方や最新情報、実践的なノウハウを探している、BtoBマーケティング担当者向けに、日々のマーケティング業務のプラスになるお役立ち情報を厳選して発信しています。

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