BtoB企業の多くは、Webマーケティングのミッションが「リード(以下、CV)獲得」です。そのため、実施する施策も「CV獲得」が期待できるリスティング広告(検索広告)や、ペイドメディアでのリードジェネレーション(※)が中心になっているケースが多いと思います。
一方で、「ディスプレイ広告やSNS広告で、テストマーケティングを実施してみたが、CV獲得につながらず施策を取りやめた」。そんなケースをよく耳にしますが、本当に「ディスプレイ広告は、CV獲得につながらなかった」のでしょうか?
実は、この評価は間違っている可能性があります。本当は、「ディスプレイ広告がCV獲得につながっていることを可視化できていなかった」だけかもしれません。本記事では、広告評価を間違える要因と解決策となる正しい広告評価方法を紹介します。
(※)見込み顧客を獲得するための活動であり、顧客の連絡先(メールアドレスや電話番号など)を獲得するための施策全般を指します。
目次
実はよくある!3つの間違った広告評価方法
まず初めに、BtoB企業で陥りがちな間違った広告評価方法について、3つのケースを紹介します。
1.ディスプレイ広告を実施したが、CV獲得に至らなかった
冒頭でも紹介した「ディスプレイ広告にチャレンジしてみたものの、CV獲得につながらなかったため、施策を取りやめた」というケース。実は、広告に対する評価を間違っている可能性があります。
1つ例を挙げてみましょう。Googleのディスプレイ広告をクリックしたユーザが、サイトから離脱後に検索し、今度はGoogleの検索広告をクリックしてCVに至った場合、CVは検索広告(キーワード)に紐づきます。この場合、ディスプレイ広告はCV獲得に「貢献」しているものの、CV自体が紐づいていないため評価されません。
2.媒体CV件数と実際の問い合わせ件数に乖離がある
各広告媒体でのCV件数の合計と実際に発生している問い合わせや資料ダウンロード件数との間に乖離が生まれることは多々ありますが、この場合も正しく広告を評価できていないと言えるでしょう。
乖離が生まれているケースの大半は、媒体CV件数の方が実際の問い合わせ件数や資料ダウンロード件数より多く計測されているのですが、この原因は各媒体間でCVが重複しているためです。各広告媒体のCV件数は、その媒体で広告をクリックしたことがあるユーザが最終的にCVした場合、ラストクリックがほかのチャネルだとしてもCVとしてカウントされてしまいます。
例えば、下図のように、同一ユーザがGoogle広告、Yahoo!広告、Twitter広告、Facebook広告という順に接触と離脱を繰り返した場合、最終的にFacebook広告でCVに至ったとしても、Facebook広告以外の広告媒体上でもCVが計測されてしまい、結果CV数と実問い合わせ数との間に乖離が生まれてしまいます。
3.広告媒体の多くがCV計測期間を「最長90日間」としている
このケースは多くのBtoB企業にあてはまる課題かと思われます。Google広告・Yahoo!広告をはじめとした広告媒体の多くは、CV発生日から90日以前の情報は追えない仕様のため、広告がレポート上での結果以上にCV獲得に貢献している可能性があります。BtoC商材のWebマーケティングの場合、広告接触からCVまでの期間が短く、特に問題になることは少ないですが、検討期間が長いBtoB商材の場合、広告接触からCVまで90日以上かかる可能性が十分にあると思います。
実際に、弊社がマーケティングを支援しているBtoB企業数社のデータを集計してみたところ、潜伏期間(※)が90日以上経過しているCVは、全体の20%~25%を占めているという結果になりました。
(※)ユーザが広告に初回接触してからCVするまでの日数。
それでは、上記で紹介した3つのケースのうち、どれか1つでもあてはまっていた場合、どのように改善したらよいのでしょうか?次項からは、解決策となる、広告全体を正しく評価できる「アトリビューション分析」という考え方を紹介します。
アトリビューション分析とは?
アトリビューション分析とは、広告を「CVへの貢献度」で評価する分析手法で、CVに至るまでに接触したすべての経路・チャネルを評価する手法です。これまでの主流は直接CVを獲得した広告、いわゆる「ラストクリック」のみを評価し、CVを直接獲得できてCV単価の良いチャネルのみを評価していました。
例えば、下図のように、あるユーザがFacebook広告で初回接触し、その後Googleディスプレイ広告で広告接触。最終的にGoogle検索広告に接触してCVに至ったとします。
これまでの広告評価方法では、直接CVを獲得したGoogle検索広告のみが評価されます。一方で、アトリビューション分析を用いた場合、初回接触のFacebook広告も中間接触のGoogleディスプレイ広告も間接効果が発生しており、CV獲得に貢献しているため、評価に値します。
なんとなく違いがわかってきましたでしょうか。
では、広告評価方法の違いは、日々のマーケティング活動にどのように影響するかを下の例を用いて、より詳しく解説します。
例えば、下図のように、検索広告に50万円の費用を投下し、CVが10件(CV単価5万円)、ディスプレイ広告には同じく50万円の費用を投下し、CVが5件(CV単価10万円)だったとします。
ラストクリックで広告を評価した場合、CV単価の高いディスプレイ広告よりも、CV単価の安い検索広告が評価され、予算の配分もディスプレイ広告の予算を減らし、検索広告の予算を増やすことでCV数を最大化するという判断をされるでしょう。
今度は、同じ例をCVへの貢献度で分析します。下図のように、ディスプレイ広告の直接CVは5件だが、間接CVが15件発生しており、直接CV数と間接CV数の合計(総CV数)は20件、検索広告は直接CV数10件、間接CV数5件で総CV数15件だったとします。
すると、総CV数あたりの単価はディスプレイ広告が検索広告より良い結果となり、ディスプレイ広告はCV獲得に貢献しているため評価することができます。
上記の例のように、ラストクリック評価の場合、ニーズが顕在化したユーザにのみ接触してCV獲得を図るため、いわゆる「刈り取り」を行っているだけの状態に陥っている可能性があります。ユーザのニーズが顕在化しなければ、CV獲得することはできませんが、そのためには、ニーズを掘り起こすための施策を実施する必要があります。つまり、ニーズを掘り起こすための施策を実施しなければ、将来的に獲得CV数が先細りしてしまう可能性すらあるのです。
CVへの貢献度で広告を評価することで、CVに至るユーザの経路を可視化でき、どのチャネルに投資すべきかが明確になります。間接的にCVに貢献しているチャネルを評価することは、潜在層から顕在層にユーザを引き上げることにもつながり、将来的なCV数の最大化につながります。
もう少しわかりやすく、アトリビューションの考え方をサッカーに例えてみましょう。CVをサッカーのゴールとした場合、間接CVはパスを出す人、直接CVはパスをもらいゴールを決める人となります。この時、サッカー選手がゴールを決めた数ではなく、それぞれのポジションごとの役割で評価されるように、広告チャネルもそれぞれの役割ごとで評価されるべきなのです。
では、アトリビューションという考え方の重要性がわかったところで、分析はどのように行えばよいのでしょうか?次項から具体的な手法を紹介します。
貴社に最適なアトリビューション分析手法の選び方3つ
アトリビューション分析の実行難易度順に3つ紹介します。
1.Google広告でのアトリビューションモデル変更
まずは最も簡単に実装・確認できる方法です。Google広告上でアトリビューションモデルを変更する方法で、アトリビューションモデルを変更することにより、CV経路上の間接的にCVに貢献している広告も評価し、CVとしてカウントすることができます。
■設定・確認方法
1.管理画面右上の「ツールと設定」を開き、「コンバージョン」を選択します。
2.コンバージョンアクションを選択し、アトリビューションモデルを変更します。
3.ラストクリック、ファーストクリック以外のモデルが間接効果を計測できます。
設定方法と確認方法はこちらをご参照ください。
2.Googleアナリティクスを活用したCV経路分析
次の方法は、Googleアナリティクスを使って分析する方法です。
■設定・確認方法
1.管理画面左側のタブで「コンバージョン」>「マルチチャネル」の順に選択します。
2.マルチチャネル内でCV経路やチャネルごとの間接効果、CVまでの所要時間などが確認できます。
設定方法と確認方法はこちらをご参照ください。
また、Googleアナリティクスにアトリビューション(※)という新機能ができました。こちらもぜひ、活用してみましょう。
(※)2020年5月1日現在、ベータ版の機能となります。
3.AD EBiSを活用した間接効果分析
最後に紹介する方法は、イルグルム社が提供するマーケティング効果測定プラットフォーム、「AD EBiS」を活用した分析方法です。AD EBiSを活用することで、広告の直接効果・間接効果を可視化でき、媒体間の重複CV計測を避け、広告を正しく評価することができます。トラッキング対象期間は、Google広告やYahoo!広告がCVの発生から90日まで遡れるのに対し、AD EBiSは366日遡ることができます。さらに、広告の直接効果、間接効果が可視化されることで、クリエイティブやプランニングに活かすことができます。例えば、クリエイティブをラストタッチ用、ファーストタッチ用など目的ごとに使い分けることも可能になります。
また、リスティング広告をはじめ様々な外部サービスとの連携もでき、より深いデータ分析が可能です。料金については、月間クリック数ごとに料金テーブルが分かれています。AD EBiSは、メディックスでも取り扱っており、導入実績も多数ありますので、興味のある方はぜひ、ご相談ください。
まとめ
Web上でのユーザ行動は、ますます多様化し、各チャネルの評価方法もよりデータドリブンに評価する方向に変化していっています。アトリビューション分析によりCVへの貢献度も可視化され、従来のラストクリック評価ではわからなかった情報を参照できることが理解できたかと思います。BtoBマーケティングもデジタル化が加速し、成果を出す上で広告を正しく評価することがより一層求められます。
まずは、明日から取り組めることから実践し、より正確にWeb広告を評価されてみてはいかがでしょうか?メディックスでは、アトリビューション分析の支援も行っておりますので、お気軽にご相談ください。