
BtoBマーケティングにおいて、HubSpotを導入して顧客情報を一元管理する企業が増えています。しかし、広告運用を担当するマーケターの中には、「HubSpotに蓄積された顧客データをGoogle広告にうまく活用できていない」「連携できることは知っているが、設定が難しそうで手を出せていない」といったお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
実は、顧客データと広告データを切り離したままの運用には課題が潜んでいます。検討期間が長いBtoB商材において、通常の広告運用では、資料請求などの「リード獲得数」や「CPA(顧客獲得単価)」をKPIとして最適化を図ります。しかし、事業としての最終的なKPIは「商談化」や「受注(売上金額)」にあります。広告管理画面の数値だけを見て運用していると、最終的に売上に繋がらない質の低いリードを安く集めてしまうリスクが生じるのです。
CRM(顧客関係管理)ツールであるHubSpotとGoogle広告を連携すると、この「オンラインでの広告クリック」から「オフラインでの商談・受注」まで、分断されていたデータを統合し、一元管理することが可能になります。
本記事では、HubSpotの機能をさらに活用したいマーケターに向けて、Google広告連携で得られる具体的なメリットから、失敗しないための正しい設定手順、実際の運用時に陥りやすい落とし穴までを分かりやすく解説します。
HubSpotとGoogle広告の連携で得られる4つのメリット
広告の評価基準を「獲得数」から「リードの質」へ引き上げられる
HubSpotとGoogle広告を連携することで、単にCPAを指標とする運用で見落とされがちな『質の低いリードを安価で集めてしまうリスク』を回避できます。HubSpotとGoogle広告を連携すれば、「どの広告が商談や成約につながったか」をHubSpot上で明確に特定できるようになります。これにより、単なるリード獲得数ではなく、最終的な売上に直結する施策へ予算を集中させる「質の高い運用」ができるようになります。
オフラインでの受注データを自動で広告側に連携できる
HubSpotとGoogle広告を連携すれば、HubSpot上の商談ステータスを「成約」に更新するだけで、その情報がコンバージョンとして自動でGoogle広告へ送信されます。また、データが蓄積されることで、Google側が「成約しやすいユーザー」の特徴を学習するので、自動入札の精度がさらに向上します。
CRMデータを活用した精度の高いターゲティングができる
HubSpotに蓄積された顧客リストを活用し、Google広告で精度の高いターゲティングが行えます。例えば「すでに成約済みの顧客」を広告配信対象から除外して無駄なクリックを抑える、あるいは「過去に失注したが再検討の余地がある層」にだけ広告を配信する、といった運用です。顧客の検討状況に合わせた、パーソナライズされたアプローチが実現します。
広告ROIの一元管理ができる
HubSpot上で、支出した広告費に対して「どれだけの受注金額を獲得できたか」を一覧で確認できるため、バラバラだったデータを手作業で統合する手間は不要になります。さらに、成約状況に連動して投資対効果(ROI)が自動で算出されるため、レポート作成も管理画面の数値を参照するだけで済むほど効率化されます。
Google広告の管理画面で行う事前設定
HubSpotと連携する前に、Google広告管理画面にログインし「受け入れ態勢」が整っているか、以下の項目を必ずチェックしてください。
「エキスパートモード」での運用確認
HubSpotは、Google広告の「スマートキャンペーン(旧称Google Expressキャンペーン)」のトラッキングやレポート出力には対応していません。
Google広告管理画面の URLが「ads.google.com/jp/express」で始まっている場合はスマートモードになっています。Google広告の管理画面上部[ツール]から[エキスパートモードに切り替える]を選択し、エキスパートモードに変更しましょう。
アカウントの権限確認
Google広告アカウントの「管理者」の権限が必要です。[ツール]>[アクセス]で確認しましょう。標準権限や閲覧権限では、HubSpotからのデータ書き込み(コンバージョン作成など)ができません。
「自動タグ設定」と「データ利用規約」の同意
HubSpot側で広告流入を識別するための「自動タグ設定」(設定場所:管理>アカウント設定)が有効化になっているか確認しましょう。
自動タグ設定が有効化になると、URLに「gclid(Google Click Identifier)」というパラメータが付与され、流入元が正確に識別できるようになります。
続いて、オフラインデータを扱うための「拡張コンバージョンのデータ利用規約」(設定場所:目標>設定)へ進み、規約に同意します。
カスタマーマッチの利用要件確認
HubSpotのコンタクトリストを広告配信ターゲットとして利用したい場合、Google広告の「カスタマーマッチ」のポリシーを満たしている必要があります(過去の総支出額が一定以上であることなど)。要件を満たしていない場合、リスト同期機能が利用できないため注意が必要です。
HubSpot側で行う事前確認
担当者のアクセス権限の確認
HubSpot側の作業を行う担当者にも、広告ツールへの「公開」アクセス権が必要ですので、付与されているか確認しましょう。
広告ブロッカーの解除
ブラウザに広告ブロッカー拡張機能(AdBlock等)がインストールされていると、接続時にエラーが発生したり画面が表示されなかったりするので、接続前に解除します。
HubSpotからのアカウント接続手順
- 事前準備ができたら、HubSpotから次の手順でGoogle広告アカウントへ連携を行います。
ステップ1:HubSpot内での接続操作
HubSpotの「設定(歯車アイコン)」>左メニューの「マーケティング」>「広告」へ進みます。 「アカウントを接続」をクリックし、ダイアログボックスで「Google広告」を選択します。
ステップ2:HubSpotのアカウントを選択
ログイン画面が開くので、管理者権限を持つGoogleアカウントでログインし、Hubspotに接続する広告アカウントを選択します。
【重要】 HubSpotに接続できるのは個々のGoogle広告アカウントのみであり、Google広告マネージャーアカウント(MCC)を直接接続することはできません。MCC配下にある、実際に広告を運用している個別アカウントを選択してください。
この接続フロー内で「Google広告ピクセルをインストールする」に同意すると、HubSpotが管理するページにGoogle広告の計測タグが自動で設置されます。
Google広告側でのオフラインコンバージョンアクション作成手順
HubSpot側の接続が完了したら、Google広告側でHubSpotのデータを受け取るための「コンバージョンアクション」を作成します。
まず、左メニューの「管理」>「データマネージャー」経由でHubSpotを接続します。
そして、「目標」>「概要」>「+新しいコンバージョンアクション」に進み、「オフライン コンバージョン」を選択します。
データソースを選択すると、「HubSpotから送られてくるデータのうち、どの状態(商談化や成約など)をコンバージョンとしてカウントするか」という条件を指定する画面に進みます。Google広告では、この抽出条件を設定する機能を『フィルタ』と呼びます。
フィルタの作成の注意点
フィルタの設定手順には、管理画面の仕様上、落とし穴があるため注意が必要です。
カスタム項目(独自プロパティ)は条件に指定できない
フィルタで指定できる条件は、「ライフサイクルステージ」などのHubSpot標準プロパティに限られます。自社で独自に作成した「カスタム項目」は成果条件として指定できない仕様となっているため注意が必要です。広告のコンバージョンとして計測したい特定の状態がある場合は、あらかじめ標準のライフサイクルステージ等と連動するよう運用フローを設計しておく必要があります。
初期設定では最適化(プライマリ)をオフにする
コンバージョンアクションを作成した直後は、初期設定として「最適化(プライマリアクション)」がオンになる場合があります。意図しないデータでGoogleのAI学習が進むのを防ぐため、まずは最適化をオフ(セカンダリアクション)に設定し、正しくデータが計測されているかを確認できたら、「最適化(プライマリアクション)」へ変更してください。
導入前に必ず確認!運用上の注意点
本連携機能を実際の業務で活用するうえで、法務やセキュリティの観点で以下の点に留意する必要があります。
個人情報の取り扱いと権限
HubSpotはCRMとして、見込み客の「氏名やメールアドレスなどの個人情報」と、「広告のクリック履歴や商談進捗(ライフサイクルステージ)といった行動データ」を、一つの顧客データとして統合管理しています。
この仕組み上、広告の運用担当者に対して「個人情報の部分だけを匿名化(マスク)して、広告の成果データだけを見せる」といった設定ができません。
(※ご利用のプランによって権限管理の細かさは異なりますが、完全な匿名化は不可です)
この仕様は、社内の担当者全員がCRMデータにアクセスできる一般的な運用体制であれば大きな問題になりません。しかし、社内で個人情報の閲覧が厳しく制限されている場合や、広告運用を外部の代理店・パートナー企業に委託する場合など、特定の運用担当者に個人情報を見せてはいけない環境下では注意が必要です。
運用担当者に個人情報を見せないように「CRM(SFA)データそのものの閲覧権限を外す」という対応をとると、ライフサイクルステージやClickID、UTMパラメータなど、広告効果の測定に必要なデータへのアクセス権まで一括で失われてしまいます。結果として、個人情報の保護を優先すると、運用担当者が広告の可視化レポートを作成できなくなるという構造的な課題(トレードオフ)が生じます。
回避するためには、「必要なプロパティ項目のみを指定し、権限を持つ管理者にレポート作成を依頼する」か、「社内ワークフローで個人情報の取り扱い申請を厳格化する」といった、システムではなく運用ルールによる対応が必要です。
データプライバシーと同意管理
プライバシー保護規制の観点から、サイト訪問者がCookieの利用に同意しない場合、広告のクリック履歴とHubSpotのコンタクトデータは紐付けられません。データの計測精度を最大限に高めるためには、HubSpotの同意管理機能を正しく設定し、法規制を遵守しながらユーザーから適切な同意を得られる仕組みを整えることが不可欠です。
データの反映にはタイムラグがある
HubSpotとGoogle広告間のデータ同期はリアルタイムではありません。CRMで成約処理をしてからGoogle広告の管理画面に数値が反映されるまで、通常数時間〜最大24時間程度のタイムラグが発生します。日次の数値報告などでズレが生じることをあらかじめ理解しておきましょう。
まとめ
HubSpotとGoogle広告の連携は、マーケティング部門が追う「リード獲得」の指標と、営業部門が追う「受注金額」を統合し、実際の売上ベースで広告を最適化するための仕組みです。
連携のメリットを正しく引き出すためには、Google広告側での正確なコンバージョン作成手順(フィルタ設定など)を守るだけでなく、社内における個人情報の取り扱いルールを整備しておくことが不可欠です。
本記事で解説した設定要件と注意点を事前に確認した上で、ビジネス成果に直結する広告運用を進めていきましょう。









