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RevOps(レブオプス)とは?顧客体験と収益を最大化する経営戦略について徹底解説

Oct 3, 2025 7:27:40 PM

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近年、BtoB企業を中心に「RevOps(レブオプス)」というキーワードを耳にする機会が増えています。

 

RevOpsは、営業、マーケティング、カスタマーサクセスといった収益に関わる部門を横断的に統合し、組織全体で収益の最大化を目指す革新的なアプローチです。導入により、部門間の情報分断を解消し、効率的な顧客対応や正確な収益予測を実現できます。

 

一方で、高度な取り組みであるため、概念的で理解が難しいと感じている担当者の方も少なくありません。そこで本記事では、RevOpsの基本概念に加え、なぜ今注目されているのか、導入ステップやメリット、具体事例まで詳しく解説します。

 

【この記事でわかること】

  • ・RevOps(レブオプス)が、部門間の分断という課題をどう解決するのか
  • ・データの一元化を通じて、オフラインの売上や広告効果を可視化する方法
  • ・RevOpsを導入し、ビジネスの収益を最大化するための具体的なステップと実践ノウハウ

 

 

RevOps(レブオプス)の定義:部門横断で収益を最大化する経営戦略

RevOps(レブオプス)は「Revenue Operations(レベニューオペレーション)」の略称で、営業、マーケティング、カスタマーサクセスといった顧客と接点を持つ各部門を横断的に統合することで、収益(レベニュー)の最大化を図ろうとする経営戦略です。

 

これまで各部門が個別に運用していたツールやデータを連携させることで、顧客体験全体をシームレスにし、企業全体における効率的な収益成長を目指します。

 

RevOpsが注目される背景:サブスクリプションビジネスと顧客体験の重要性

近年、サブスクリプションビジネスの普及や顧客体験の重要性の高まりを背景に、部門横断で収益を最大化する仕組みとしてRevOpsが注目されています。

 

もともとRevOpsは欧米で生まれた比較的新しいプロセスですが、ここ23年で日本でも少しずつ知られるようになりました。特に注目される背景には、SaaSなどの「as a service」に代表されるサブスクリプションビジネスの拡大と、顧客体験に対する要求の変化があります。

 

近年は、多くのビジネスが「モノを売って終わり」ではなく、継続的なサービス提供を前提としています。顧客との接点すべてが契約や継続の材料となり、利用開始から解約に至るまでのライフサイクル全体を通じて高品質かつパーソナライズされた体験が求められるようになりました。

 

一方、企業内の営業部門は分業化が進んでいます。縦割り組織では、顧客へのアプローチや施策が部門ごとに異なり、顧客体験が分断されてしまうことが課題となります。部門によって対応が異なったり、対応に時間がかかったりすると顧客の離脱につながり、収益の低減を招くためです。

 

また、サブスクリプションビジネスでは、企業の収益を図る主な指標はLTVLife Time Value:顧客生涯価値)になります。LTVを最大化するためには、顧客の満足度や継続率を維持することが必要であり、シームレスな顧客体験を提供する体制づくりが求められます。

 

そのような背景から、顧客に関わるすべての部門の業務とデータを統合・連携し、全社的な収益をマネジメントするRevOpsが注目されるようになりました。

 

RevOpsは以下3つの観点から、顧客体験の向上やLTVの最大化に寄与します。

 

  • データの一元化:顧客データを部門横断で共有し、サイロ化を防ぐ
  • 非効率な業務プロセスの排除:データの重複入力や手作業を自動化し、各部門の生産性を向上させる
  • 収益予測の精度向上:リアルタイムでデータを活用し、より正確な収益予測を可能にする
  •  

データの一元化

RevOpsを導入することで、部門をまたいでデータを一元管理できるようになります。部門共通のデータソースを構築し、各チームが必要なときに必要な情報に適切にアクセスできる環境が整えられるためです。

顧客情報や他部門での進捗などもデータソースの中で共有されるので、情報のサイロ化を防ぐことができます。

 

従来の企業では、顧客を「リード(見込み)」から「商談」「契約」「顧客」へと引き継ぐ際に、部門間の連携不足で情報が分断されがちでした。特に、営業はExcel、マーケティングはMAツール、カスタマーサクセスはCRMなど、部門ごとに異なるツールで顧客データを管理している場合、必要なデータを探すだけで時間を浪費するケースも少なくありません。

 

しかしながら、顧客にとって重要なのは、期待する成果やメリットをスムーズに得られるかどうかですRevOpsでは、必要なデータが共有されることで、チームの全員が同じ成果やKPIに責任を持ち、一貫した顧客体験やコミュニケーションを提供できるようになります。

 

非効率な業務プロセスの排除

部門間の連携不足による非効率な業務が削減されます。RevOpsでは、部門を横断するテクノロジーツールを導入しながら、部門間の業務プロセスをシームレスにつなげ、作業の自動化を進めていくためです。

 

たとえば、マーケティングで獲得したリード情報を営業担当者が手作業でSFAに登録したり、CS担当が契約状況をExcelで管理したりといった作業は、ほぼ自動化されます。データの重複入力や手作業による情報の転記といった非効率な業務プロセスはなくなり、組織全体のパフォーマンスが向上していきます。

 

収益予測の精度向上

RevOpsを導入することで収益予測の精度が向上し、経営判断の質を高めることができます。顧客の契約状況や商談進捗、利用状況などをリアルタイムで把握でき、先を見据えた予測が可能になるためです。

 

たとえば、リテンションリスクを細やかに把握しやすくなり、解約率の算出がより正確になります。顧客の行動変容に応じ、適切なタイミングで訴求やフォローを実施しやすくなるので、契約確度も適正値を把握しやすくなります。

結果として、意思決定の迅速化や顧客対応の最適化につながり、収益機会の損失を最小化することができます。

 

 

RevOpsを導入するための具体的な5つのステップ

RevOpsを組織に導入するには、単にツールを導入するだけでは不十分です。部門ごとの最適化だけでは顧客体験が分断され、収益機会の損失につながるため、全社的な視点での最適化が必要です。また、長年根付いてきたやり方を変えるためには、メンバーの意識変革も欠かせません。

 

ここでは、準備から導入までの5つのステップを紹介します。

 

ステップ1:現状の業務プロセスを可視化する

まず、マーケティングから営業、カスタマーサクセスに至るまでの顧客の購買プロセスを部門横断で洗い出します。部門ごとの業務を見える化し、分断されているポイントを明確にし、業務改善の優先順位を決定します。

実施方法:

  • 顧客接点の全フローをマッピングし、データの流れを可視化する
  • 部門ごとのデータ管理と、情報が途切れているポイントを把握する
  • 手作業や重複作業などの非効率なプロセスを洗い出す

 

ステップ2:プロジェクトチームを組成する

営業、マーケティング、カスタマーサクセス、IT部門など各部門から代表者を選び、プロジェクトチームを結成します。ここでの目的は、RevOpsの導入に向けて部署間の利害調整を行い、共通の目標で動ける体制をつくることです。

 

このとき、各部門の連携を強化するために、協働プロジェクトとしてRevOpsの導入を推進することがポイントです。RevOpsの責任者(CROChief Revenue Officerなど)を置き、全体の調整役を担わせることも有効です。

 

ステップ3:最適なツールと技術スタックを構築する

ITツールの統合や技術開発を行い、収益に関するデータが一元管理でき、顧客接点を横断的に把握できるパイプラインをつくります。とくにRevOpsには、部門ごとに運用されている各種ツールを連携させる統合基盤が必要です。

実施方法:

  • 現状運用されているCRM(顧客関係管理) を基盤に、MA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援)を連携させる。もしくは、レベニューインテリジェンスツールやCDP(カスタマーデータプラットフォーム)などを新たに導入し、データ連携プラットフォームをつくる
  • 顧客の行動データ(Web行動、メール開封、商談進捗、CS対応など)を各種ツールと連携し、リアルタイムで把握できる仕組みを整える
  • BIツールなどで可視化・レポーティングを行う

 

ステップ4:ルールとKPIを統一する

RevOpsの導入には、部門ごとに異なる評価軸をそろえ、収益最大化に向けた共通の指標を持つことも必要です。「リード」や「顧客」といった用語の定義、各部門が追うべきKPIを明確に揃えます。

実施方法:

  • MQL(マーケティング合格リード)やSQL(営業合格リード)などの定義を明確にし、共通化する
  • 各部門のKPIをLTVの最大化に結びつける
  • レポーティングのフォーマットや更新頻度を標準化する

 

ステップ5:教育機会の提供や運用サポートを行う

RevOpsを単なる仕組みで終わらせず、組織文化として根付かせる取り組みも欠かせません。

 

RevOps下の営業組織では、従来型のスキルに加え、顧客との関係性をデータから読み解く力やテクノロジーを使いこなす力が求められます。そのため、メンバー同士がお互いから学びあえる環境や人材育成の機会を整えることも重要です。

実施方法:

  • 研修・ハンズオンセッションを設け、ツールの使い方やデータの読み方などの教育支援を行う
  • 他部門の視点を学ぶクロスレビュー会の実施や、社内の成功事例をナレッジ化し共有する

 

RevOpsの導入メリット:LTV最大化、顧客体験向上、生産性向上

米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が20205月に発表したレポート『Revving Up Go-to-Market Operations in B2B』によると、RevOpsを導入した企業では、デジタルマーケティングのROI100200%向上、営業生産性も1020%改善しています。

 

このような成果が得られる理由として、RevOpsには以下のメリットがあります。

 

  • LTVの最大化:効率的な顧客獲得と解約率の低下により、長期的な収益成長を実現する

  • 顧客体験の向上:シームレスな情報連携により、顧客はどの部門とやり取りしても一貫したサポートを受けられる

  • 生産性の向上:テクノロジーインフラの整備と業務プロセスの最適化により、各部門はより戦略的な業務に集中できる

  • 部門間の連携強化:共通の目標とデータを持つことで、部門間の対立が減り、協力体制が強化される

 

RevOpsの基本的な考え方は、新たな大規模投資を行うのではなく、既存リソースを効率的に活用することで収益成長を実現するというものです。すでに保有している人材、ツール、データを最適に組み合わせ、効果的な顧客獲得プロセスを構築していきます。既存リソースの有効活用が進む結果、既存顧客へのアップセル・クロスセル機会を増やせるなど、さまざまな側面から企業の収益力を強化できる可能性があります。

 

LTVの最大化

RevOpsにより顧客データを統合的に管理することは、顧客価値(LTV)の最大化に寄与します。その理由は、継続利用やアップセルにつながる顧客のインサイトを得やすくなることにあります。

また、オンライン・オフライン双方の顧客行動データを統合・分析することで、マーケティング施策の全体最適が可能です。

たとえば、メディックスではCRM上のリードの案件化率を広告の入札戦略に活用し、配信最適化を実施しました。結果として商談率を131%に向上させ、商談単価も67%まで改善しました。このように、顧客接点のデータを横断的に扱うことでROI把握と全体最適したマーケティング施策の実行が可能となります。

 

顧客体験の向上

RevOpsを導入することで、顧客はどの部門とやり取りしても一貫したサポートを受けられるようになり、顧客体験が向上します。共通のデータ基盤を通じて営業・マーケティング・カスタマーサクセスが同じ情報を共有できるため、顧客とのコミュニケーションや提供する情報のバラつきが最小限になるためです。

 

この顧客体験は、顧客との最初の接点である広告にも現れます。たとえ広告であっても、顧客は自身の興味やニーズに合った、価値ある情報と出会うことを期待しています。RevOpsの考え方を取り入れることで、単なる「コンバージョン獲得」から、より深い「顧客のニーズに合致したコミュニケーション」へと広告の役割を広げることができます。

 

以下の記事では、BtoB広告の自動入札をtROAS(目標広告費用対効果)に転換することで、有効CVR(コンバージョン率)を向上させた事例を紹介しています。このような広告最適化もまた、顧客に最適な情報を提供するという点で、顧客体験の向上に寄与すると言えるでしょう。

 

生産性の向上

RevOpsを導入することで、データの重複入力や手作業などを削減でき、各部門の生産性を高めます。テクノロジーインフラの整備と業務プロセスの最適化が進み、各部門はより戦略的な業務に集中できるようになるためです。

 

たとえば、営業チームが入力する顧客情報をマーケティングやカスタマーサクセスと共通化することで、転記作業や二重チェックをなくせます。これにより時間的コストを削減し、組織全体のパフォーマンスが底上げされます。このように、部門間の業務プロセルやデータがシームレスにつながることで、各部門は成果に直結する活動へリソースを割けるようになります。

 

部門間の連携強化

RevOpsにより部門を超えた協力体制が強化され、全社的な収益成長を推進できる組織づくりが期待できます。営業・マーケティング・カスタマーサクセスが共通の目標とデータを持つことで、メンバー1人ひとりが現状を理解し、自律的な営業活動を行えるようになるためです。

 

たとえば、MQLSQLといったリードの定義を統一することで部門ごとの認識のズレを解消し、施策の精度を高めることができます。このように、RevOpsを導入することで部門間の連携が強化され、組織の全体最適が推進されます。

 

 

よくある質問(FAQ

最後に、RevOpsについてよくある質問をまとめました。

 

Q:RevOpsはどの企業でも導入すべきですか?

A:すべての企業に必須ではありませんが、以下の特徴を持つ企業にはとくに効果的です。

 

  • ・複数の部門(営業・マーケティング・カスタマーサクセス)が顧客と接点を持つBtoB企業
  • ・サブスクリプション型やリカーリング収益モデルの企業
  • ・顧客獲得から継続利用まで一定の期間を要する企業

 

一方で、シンプルな売り切り型ビジネスで部門間連携の課題が少ない企業では、導入の優先度は下がる可能性があります。

 

Q:RevOpsSales Ops(セールスオプス)はどう異なりますか?

A:Sales Opsは「営業部門の効率化」に特化したアプローチで、営業プロセスの最適化、営業ツールの管理、営業成果の分析などを担います。一方、RevOpsは営業だけでなく、マーケティング、カスタマーサクセスを含む収益に関わる全部門を包括する全社的なアプローチです。

 

Q:RevOpsを導入する際の最も重要なポイントは何ですか?

A:最も重要なのは、部門間の壁を取り払い、共通の目標に向かう組織文化をつくりあげることです。RevOpsは部門横断の取り組みであり、各部門の既存業務や評価制度に影響を与えます。そのため、経営陣の強力なコミットメントとトップダウンの強い推進力も成功のポイントとなります。

 

 

RevOpsでビジネスの未来を切り拓く:顧客と収益を最大化する経営戦略

 

本記事では、RevOps(レブオプス)が収益に関わる部門間の連携を強化し、収益の最大化を目指す経営戦略であることを解説しました。

RevOpsが今注目される背景には、サブスクリプションビジネスの普及と、部門間の情報分断という課題があります。データの一元化、非効率な業務プロセスの排除、収益予測の精度向上といった効果を通じて、顧客体験の向上とLTVの最大化に貢献します。

RevOpsを導入するには、まず現状の業務プロセスを可視化し、部門横断のチームを組成することが重要です。その後、最適なツールを導入し、ルールとKPIを統一することで、組織全体の連携を強化していきます。

RevOpsは単なるツールの導入ではなく、組織文化を変革する取り組みです。全社的な視点での最適化を進めることで、企業は収益力の向上という長期的な成長を手にすることができるでしょう。

 

Tag: BtoBマーケティング

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