SaaS企業向けマーケティング支援を事業の柱としてきた株式会社メディックスは、株式会社ハイウェイと共催で、オンラインセミナー「SaaSビジネスのグロースに欠かせないパートナー戦略のはじめかた」を2024年8月28日(木)に開催しました。
近年、SaaS業界において、パートナービジネスの重要性が急速に高まっています。しかし、多くのSaaS企業が「とりあえずパートナー契約を結べば良い」と考えがちで、効果的なパートナー戦略の構築に苦心しているのが現状です。
本セミナーでは、SaaS企業の方向けに「事業成長に貢献するパートナー戦略」をどのように構築し実行すべきか、BtoB SaaSマーケティングに強みを持つメディックスと、パートナー管理プラットフォームを提供するハイウェイ社から、その方法について事例を交えて詳しく解説しました。本記事では、セミナーの一部を抜粋したレポートをお届けします。
目次
第1部:SaaSビジネスにおけるパートナー戦略の重要性
【講演者情報】
製品選定にはパートナーが大きく関与
現在、SaaS企業の中でパートナービジネスが成長戦略の打ち手として注目されています。
株式会社メディックスでは、自社に導入するIT製品を選定された方を対象に独自のアンケート調査を行っています。IT製品の最初の情報収集を行う主体となっているのは外部の人間なのか、内部の人間なのか、また、IT製品導入の際の主なRFP(提案依頼書)作成を行うのは外部の人間なのか、内部の人間なのかを質問したところ、どちらの場合においても、外部のコンサルタントや協力会社が関与するケースが半数以上あることがわかりました(図1参照)。
図1:製品選定における情報収集の実態
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さらに、中小企業庁の調査(図2参照)によると、ITツールベンダーが中小企業に販売する上で、ダイレクトセールスの割合は24%にとどまっており、7割強は外部のコンサルタントや協力会社などパートナーを通した販売であることがわかっています。
図2:中小企業庁「中小企業の身の丈に応じたITツールの普及促進について」(令和元年10月10日)
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これらのデータは、影響力のある外部パートナーとの関係構築が、製品選定に大きな影響を与える可能性があり、SaaS企業がエンドユーザーに直接アプローチするだけでは不十分だということを示しています。そして、自社だけではリーチができないユーザー層が一定数存在することによって、パートナービジネスが注目されていると言えるでしょう。
パートナービジネスによるマジョリティ層への拡販
前述の通り、直販でアプローチできる顧客層には限界があります。特にPMF(プロダクトマーケットフィット)以降のフェーズで、CAC(顧客獲得コスト)やCPAなどが高騰するマーケットにおいては、ダイレクトセールスだけではいずれ売上高が頭打ちになることが予見されます。
CACが高騰するマーケット環境においては、直販に加えて、アーリーマジョリティ層、レイトマジョリティ層、ラガード層といった直販ではアプローチしにくい顧客層へのチャネル拡大策としてパートナービジネスを取り入れることは有効な一手です。効果的なアプローチの拡大により、直販とパートナービジネスの両軸でトップラインの成長をはかることができます。
第2部:なぜ今パートナービジネスが SaaS で注目されているのか
【講演者情報】
なぜ今パートナービジネスが SaaS業界 で注目されているのか?背景にある市場動向からパートナービジネスを成功に導くためのポイントについて解説します。
セールスコストを抑える成長戦略としてのパートナービジネス
SaaS業界でパートナービジネスが注⽬を集める大きな要因として「事業環境の変化に伴う、利益重視の経営スタイル」へ変化してきていることが挙げられます。特にSaaS業界においては、「Rule of 40」という指標が重視される傾向にあります。
そこで、セールスコストを抑えながら新規獲得をするための戦略として、パートナービジネスが注目されているのです。
利益重視の経営スタイルを求められる背景
BtoBのSaaS事業はすでに下降トレンドとなっています(図3参照)。具体的には以下が挙げられます。
●ARR(年間経常収益)の成長率鈍化
●新規顧客の獲得ペース低下
●既存顧客の維持困難
●営業生産性の低下
図3:グローバルBtoB SaaS事業環境の推移
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日本においても顧客獲得コスト回収期間(CAC Payback)の悪化が見られています。一般的に顧客獲得コスト回収期間は12ヵ月以内が良く、少なくとも24ヵ月以内を目指すべきと言われていますが、日本の上場SaaS企業では、顧客獲得コストの回収に平均74ヶ月もかかっている状況です(図4参照)。昨年および過去3年間の実績値としても顧客獲得コスト回収期間が悪化していることがわかっています。
図4:⽇本のSaaS事業においても、CAC Paybackが上昇
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株式市場での上場SaaSの評価基準である「Rule of 40」という指標があります。「Rule of 40」とは、ARR(年間経常収益)の成⻑率と利益率の合算が40%超えているかどうかでSaaS企業の成長の健全性を判断する基準です。
実際に、「Rule of 40」を達成している企業のほうがPSR (株価売上高倍率)が高い傾向にあります。達成企業の平均PSRが7.1倍であるのに対し、未達企業は5.3倍と、明確な差が出ています(図5参照)。
単純に成長しているSaaS企業ではなく、売上・利益の両方が出ている企業が評価される局面に入っている現実があると言えます。
図5:Rule of 40達成企業と未達企業のPSR比較
既存の営業戦略ではリーチできない層へのアプローチ
前述の通り、市場の変化により、いかにセールスコストを抑えながら新規獲得をするかが重視される中で、パートナービジネスが注目されるようになってきています。
また、既存の営業戦略に則したマーケティングコストを投下してもリーチできない顧客層として、地方の中小企業、エンタープライズ企業、非IT企業が考えられます。なお、直販ではアプローチできない顧客層の中でも、非IT企業、東京以外の地方企業が9割です(図6参照)。
図6:既存のオンラインマーケティング施策だけではリーチしづらい顧客層
また、オンラインで情報収集をしない購買層のいるエンタープライズ企業にはパートナーからのアプローチが有効です。
一方で、グローバルの話に戻すと、グローバルBtoBでもパートナービジネスの重要性が上がってきています。とある調査では、直販よりもパートナービジネスのほうが成約までの期間が短いという結果が出ています(図7参照)。さらに、全体売上におけるパートナービジネスの売上比率も上がってきている状況です。
図7:グローバルBtoBにおける代理店営業戦略の重要性
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利益重視の経営が市場に求められている中では、パートナービジネスを通してより広い顧客層に、より多くの製品を届けていく必要があります(図8参照)。
図8:利益重視の経営スタイルで注⽬されるテーマ
パートナーセールスのはじめかたとポイント
実際に、代理店営業やパートナー営業とも呼ばれるパートナーセールスをどうやって始めるかというテーマに入っていきます。皆様の中でもよく聞くかもしれませんが、パートナーセールスの立ち上げがうまくいかないという問題があります。
一言でパートナーセールスといっても、代理店戦略の策定から開拓、オンボーディング支援、アクティブ化、リレーションの構築とかなり多岐にわたるステップがあります。さらに、社外のパートナー企業とその担当者の巻き込みが必要になるなど、広い範囲に渡る高いビジネススキルが求められるため、一筋縄ではいきません(図9参照)。
図9:専⾨性と⾼いビジネススキルが求められるパートナーセールス
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パートナーセールスを立ち上げる際のポイントを3つに絞って解説します。
図10:立ち上げ時に考えるポイント
1.販売パートナーに求める期待役割と⽬的
まず1つ目は「販売パートナーに求める期待役割と目的」です。リード獲得からアポ獲得、案件の受注、解約の防止まで、パートナーセールスには期待される様々な役割があります(図12参照)。自社の営業フローの中でパートナーにどこまで求めるかを決めることが一つのテーマになってきます。
ほとんどのSaaS企業は直販を立ち上げる際には、ザ・モデル(the model)型の組織を組み立てていくことになるかと思います。この役割の中に外部のパートナーセールスを使ってレバレッジをかけていくことになります。ただ、パートナーセールスに期待する役割が増えれば増えるほど、育成の難易度は上がり、代理店の成功は難しくなっていくと思います。
図11:営業フローの中でパートナーに求める期待役割
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パートナーシップは大きく3段階に分かれると言われています(図12参照)。アフィリエイトパートナー、紹介パートナー、代理店の3つです。
当たり前ではありますが、新規リードを創出するアフィリエイトパートナーよりインサイドセールスによるアポ獲得、さらに営業活動を代替する代理店の方が受注率は高くなりますが、営業の難易度も上がっていきます。パートナービジネスをはじめる際には、自分たちはいまどのようなフェーズを攻略したいのか、どこまでが現実的にパートナーに任せられるのかを見極める必要があります。
海外では、最初はアフィリエイトパートナーとして新しいリードを作っていくことから始めて、その次に商談を作る紹介パートナー、そして商談も任せられる代理店としてステップを踏むことが推奨されています。
図12:BtoBパートナーシップのピラミッド
一方、日本では役割によって活躍するパートナーのプレイヤーが変わってきます。アポ獲得まで担当するのか、代理店まで担当するのか、地方の企業やSMBをターゲットとするのかエンタープライズをターゲットとするのかによってプレイヤーは違います。そのため、自社の商材はどこのセグメントに拡販していきたいのか、それが地方なのか東京なのか、アポまででいいのか、売り切ってもらいたいのかを定義する必要があります(図13参照)。
図13:パートナーに求める期待役割と必要なプレイヤー
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パートナーに委託していく範囲を決める際には、直販での勝ちパターンを言語化、コンテンツ化する必要があります。ターゲット企業やアプローチ方法が整理されているほどパートナーへ委任しやすくなります。
2.プロダクトの成熟度と営業難易度
次に考えるポイントとして、プロダクトの成熟度と営業難易度があります。私は代理店とメーカーの両方の経験をした人間として伝えたいことがあります。よく代理店契約を結んだだけではなにも起きなかったという話がありますが、それは代理店の中の営業マンの商材に対する解像度がどのくらいあるのかが留意すべきところです。
よく勘違いされますが、代理店の営業マンは百戦錬磨のベテランで、ちょっとインプットすればすぐに売り抜けられる営業マンだと思われがちです。しかし、代理店側は多数の商材を扱っていることが多く、毎週のように勉強会が開催されてはいるものの、広く浅く理解している程度にとどまり、すべての商材に詳しいわけではありません。
ですので、代理店契約をした時点では、「代理店に委託できる新人営業マンができた」と思っていただくくらいのイメージですり合わせを行う方が、正確なコミュニケーションをとることができるでしょう。(図14)。
図14:代理店の営業担当のイメージ
3.代理店担当者の⽀援
3つ目は代理店担当者の⽀援です。パートナービジネスのよくある失敗する捉え方として、企業単位で考えてしまうということがあります。実際に動くのは代理店の裏にいる営業担当者であるため、その営業担当者がどのように売っていくのか、動くのかを人単位で考えていくほうがよいでしょう。
そのため、支援の面においても、勉強会が終わった後はもう「じゃあ売ってきてください」ではなく、営業担当者一人ひとりに深く製品知識を移植していく、という考え方がベストです。
したがって、関係性の構築として、効率的にしたいと考えられがちですが、必ずしも対面に限らずとも一人ひとりとのリレーションを重視し、個別最適化を図っていくと良いでしょう。教育においても同様で、直販でうまくいった素材を使えば、同じように成果が出るというわけではなく、個別に教育を行っていく必要があります(図15参照)。
図15:成功する企業と、失敗する企業のマインドの違い
営業担当者単位で捉えるという考えの上では、いかに商品のマインドシェアが取れるかというところまで支援を行うことが重要です。マインドシェアを取るためには、課題感が顧客から出てきた際に、「このベンダーのこの担当者に相談すれば良い」と考えてもらえる状況を目指す必要があります(図16)。
図16:担当者単位で考える
勉強会後のパートナー支援方法
ここからは、商材に関しての画一的な勉強会を開催したあとに、パートナーの営業担当者とのリレーションを深めていくためにどのようなことをすればよいかお伝えします。
ポイントは以下の5つです。-
・勉強会に積極的に質問してくれたキーマン情報の確認
・その⼈の注⼒顧客や担当顧客のヒアリング
・担当顧客に合わせた紹介スクリプトの提供
・初回訪問から同席⽀援、1件⽬受注を⽬指す
・担当者個別に定期的な情報配信(導⼊事例、製品アップデート)
重要なのは、1回勉強会をしただけでは商材の深い知識や売り方を理解してもらえるわけではないことです。そのため、顧客にどのように商材の魅力を伝えていくのか、どのように売っていくのか、どのような話し方をするのがベストか、など支援していく必要があります。そのためには、初回の訪問に同席していく必要もあるでしょう。
また、パートナーが売ってくれる必然性を作ることも重要になってきます(図17参照)。そのポイントは3つあります。
1つ目は「本業の商談にアップセルできるか」です。
私がかつて代理店に勤務していたときは、商材としてスマートフォンを取り扱い、企業の総務部へスマートフォンを売る際に様々なセット売りをしていました。例えば、チャットアプリやセキュリティ製品などです。セット売りをすることで、パートナー側の単価アップにつながり、商談の流れが作りやすくなります。
2つ目は「本業の商談にクロスセルできるか」です。アップセルだけでなく、クロスセルのしやすさもパートナーが売る理由になります。つまり、パートナーが得意とする分野や顧客層に合わせた、関連性の高い商品を提案することも重要です。上記の例でいうと、スマートフォンとともに経費削減に関するサービス提案するなどは、比較的容易にできるでしょう。このように、顧客のニーズに総合的に応えることができる提案は、パートナーにとっても魅力的です。
3つ目は「自社で取り扱う商材になる」ことです。パートナーは、基本的に自社の商品やサービスを販売することに注力しています。そのため、他の会社の商品を販売する際には、どうしてもモチベーションが低くなりがちです。そこで、提案する商品をパートナーの「自社製品」のように扱ってもらうことができれば、販売意欲を高めることができます。
例えば、SaaS製品の場合、パートナーのブランドで製品を提供するOEM契約を結ぶことで、パートナーにとって「自社製品」という意識を持たせやすくなります。ただし、OEMを作る場合は深い業務提携や投資の必要が出てくるため、まずは既存の商品ラインナップに組み込みやすい形で提案し、徐々に深いつながりを築いていくのがよいでしょう。
図17:パートナーが売ってくれる必然性を作る
第3部:対談企画:パートナー戦略をはじめるには
第3部では、SaaS企業におけるパートナーセールスの開始にあたっての重要ポイントについて、メディックスの小松とハイウェイの久保氏の2名が対談を行いました。
パートナービジネスをはじめるタイミングは?
-多くのSaaS企業がパートナービジネスに力を入れているものの、適切なタイミングがあるのでは?
小松
今現在、ダイレクトセールス中心のSaaS系企業が、いきなりパートナービジネスを始めるのは難易度が高いと思うのですが、始めるにあたりふさわしいタイミングがあれば教えていただきたいです。
久保様
SaaS企業が代理店とパートナービジネスを始めるのに最適なのは、自社製品が「プロダクトマーケットフィット(PMF)」の状態にあることだと一般的に言われています。その状態をもう少し深堀して説明すると、「外部の営業マンが売れるようなレベルなのか」ということです。つまり、自社の古くからいるベテランの営業マンがトップセールスでガンガン売れる状態ではなく、入社したての社内の営業が平均的なリードタイム・平均単価で再現性高く売れるような状態になっているか、ということです。この状態をひとつの指標にしていいのではないかと思います。
具体的にお話しすると、新入社員でもベテラン社員と同様の成績を出せるような営業プロセスが確立され直販の営業再現性ができている、初回商談から契約に至るまでの付帯業務のオペレーション化がされ、誰でもできるようになっている、顧客に製品の価値を簡潔かつ効果的に伝えられるわかりやすいセールスピッチができている、この3つが確立している状態がベストといえるでしょう。
図18:パートナービジネスをはじめるタイミング(内部の要因)
また外部からのシグナルで言えば、顧客からインセンティブのない紹介案件の発生がある、
パートナーになりたいというインバウントが出始めているか、またパートナービジネスを推進する専任担当者を自社に置けるか、などもタイミングとして良いのではないかと思います。
図19:パートナービジネスをはじめるタイミング(外部からの要因)
パートナービジネスはどのような体制ではじめる?
-難易度が高く、リソースも一定以上かかるパートナービジネス。各社どのような体制で取り組んでいるのか。
小松
パートナービジネスを始めることは、難易度も高く、リソースも必要となると思われます。久保さんの豊富なサポート経験から、パートナービジネスを成功させるためにはどのような体制が最適か、教えていいただけますでしょうか。
久保様
パートナービジネスの体制は大きく「プログラムの設計・運用」「パートナー開拓」「パートナー育成」「関係構築」の4つのフェーズに分けて考えるとよいでしょう。
それぞれのフェーズで求められるスキルも違ってきます。
前半のフェーズ(プログラムの設計・運用、パートナー開拓)では、パートナーシッププログラムを推進する適切な人材を確保する人事採用スキルや、パートナーの営業担当者に自分たちの商材を魅力づけるといった新規営業的なスキルが重要です。
後半(パートナー育成、関係構築)では、パートナーの営業担当者を自分たちの熱烈なファンにし、商材に関する知識や販売手法を教育するというフェーズになるので、営業を育成するマネージャー的なスキル、また、パートナーの企業規模が大きい場合、大企業の組織構造を理解し、キーマンとの関係性を構築するスキルも同時に必要になります。
図20: パートナービジネスに必要な体制、求められるスキル
※画像をクリックすると拡大表示されます。
「ザ・モデル型」のような体制では、新規顧客を獲得する営業と、既存顧客のサポートを行うカスタマーサクセスは担当する業務が大きく異なるため、別々のチームに分けるのが一般的です。パートナービジネスでも、新規開拓やプログラム開発から育成と業務が幅広いのですが、多くの企業では最初は1人で複数の業務を兼任することが多いのが現状です。余裕が出てきたら、これらの業務を明確に分けた体制にするのがよいでしょう。
小松
多くのSaas系企業がザ・モデル型体制をとっていると思いますが、それと同じように、新規営業とパートナーセールス(マーケティング)は役割・ミッションを分けて対応していくが理想ということですね。
久保様
そうですね、ですが、まだ日本ではそこまで厳密に分かれている企業は少ないですね。新規営業からパートナーセールスまで掛け持ちですべて対応している、という企業も結構見かけます。ですので、フェーズごとに何が今必要なのか、リソース分配をきちんと考えるというができるようになると理想的であると思います。
小松
最初の「パートナー開拓」のフェーズでは、第2部で解説いただいたパートナーシップのピラミッド図(下図)で一番下にある、アフィリエイトパートナーを見つけて、そこから段階を踏んでいくのが正攻法になるのでしょうか?
久保様
海外では、BtoB SaaS企業の製品を自分のウェブサイトで紹介しリード獲得へつなげるアフィリエイトパートナーがたくさんいるのですが、日本ではまだまだ少ないのが現状です。
図の真ん中にある紹介パートナーを見つけていくのが、一般的です。
パートナービジネスのKPI設計のポイント
-パートナー契約を結んだだけでは、成果につながらない。パートナーサクセスに至るまでのKPI設計におけるポイントは?
小松
最後に、パートナービジネスのKPIについてお伺いできればと思います。パートナー契約を結んだだけでは、なかなか成果につながらないため、パートナーサクセス的な取り組みが必要だと考えています。カスタマーサクセスでは、顧客の離脱率(チャーンレート)や月間経常収益(MRR)といったKPIが重要ですが、パートナーサクセスでは、どのような指標が重要になるのでしょうか?
久保様
パートナービジネスでは、代理店を通じて売上を伸ばすことが最終的な目標なので、それにつながるKPIを設定します。
まず、「どれだけ多くの代理店を獲得できたか(新規代理店数)」と「実際に商材を扱ってくれる代理店がどれだけいるか(稼働代理店数)」 この2つが主なKPIになります。
代理店開拓数はさらに掘り下げると、「潜在的な代理店候補と商談した回数」そして「商談から実際に契約につながる案件化率」、そして、稼働代理店数は、「各代理店において、実際に営業活動を行っている担当者がどれだけいるか」「その担当者が紹介してくれた顧客数」「紹介された顧客のうち、実際に契約につながった数 」といった詳細なKPIを追っていきましょう。
すこし泥臭いですが、それくらい掘り下げたKPIを置き追っていくことが、現実的で良いのではないかと思っています。
図21:パートナービジネスのKPI
まとめ
株式会社メディックスの「IT製品選定者アンケート調査」によると、製品選定には第三者(パートナー)の関与が半数以上あることがわかりました。また、中小企業庁の調査では直販でアプローチできるのは24%であり、7割強はなんらかのパートナーを経由した販売です。これらはパートナー戦略の重要性が高まってきていることを示しています。
また、BtoB SaaS分野のサービスはすでに下降トレンドになっており、しっかりと売上と利益があげられる企業が評価されるようになってきています。そして、売上と利益を上げるために、直販ではアプローチしきれない、地方の中小企業、エンタープライズ企業、非IT企業への拡販が必要となっており、その戦略としてパートナービジネスが注目されています。
さらに、パートナービジネスをはじめる際には、どこまでをパートナーに求めるのか、代理店担当者のレベル感と営業難易度の見極め、企業単位ではなく担当者単位での支援を行っていくことが重要です。
今回、株式会社ハイウェイの久保 ⽂誉氏をお招きし、パートナービジネスがSaaS企業で注目されている背景、パートナービジネスの始め方を解説していただきました。
SaaS企業のパートナー獲得施策の実績も豊富にありますので、ご興味のある方は、ぜひ、ご相談ください。
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