
昨今、BtoB企業において「企業価値の向上」が喫緊の経営課題であり、特に2023年の東証による要請以降、「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」への対策は待ったなしの状況となっています。こうした背景から、企業の魅力を形にする「広報」と、投資家と対話する「IR」は重要性が年々増しています。しかし、その一方で現場の担当者様からは、「社内にノウハウがない」「組織が分断されている」「成果が可視化しにくい」といった切実な声も多く聞かれます。
こうした現場のリアルな課題に対し、具体的な解決の糸口を模索すべく、2025年10月8日に第2回ユーザー交流会「Escalledge(エスカレッジ)」を開催いたしました。
当日は、「PBR1倍割れから企業価値向上へ」をテーマにしたメディックスの講演に加え、上場企業の最前線で活躍するゲストを招いたパネルディスカッションを実施し、熱い議論が繰り広げられました。
本レポートでは、講演、パネルディスカッション、そして懇親会で共有された現場のリアルな課題感を併せてお届けします。
- なぜ、今「PBR向上」が企業の命題なのか
イベント冒頭では、弊社の廣江より、広報・IRの視点から見た企業PBRの現状と課題について講演しました。
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株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット マーケティングスペシャリスト 廣江俊介 |
イベント冒頭では、弊社の廣江より、広報・IRの視点から見た企業PBRの現状と課題について講演しました。
―PBR1倍割れ企業の多さと東証の要請―
2023年3月、東京証券取引所から PBR1倍割れ企業に対して改善要請が発表されました。
東証の要請の背景には、プライム市場・スタンダード市場の50%以上がPBR1倍割れという実態があります。東証は、単に売上や利益だけでなく、バランスシートをベースとした「資本の効率」を意識した経営と、その取り組みの投資家への積極的な開示を求めています 。
一方で、とある広報・IRへのアンケート調査では、「人手不足やノウハウ不足」、「広報成果の伝えにくさ」、「広報戦略がない」、「社内の合意・協力が得られない」という課題を抱えていることがわかっています。

講演で提示された課題を受け、具体的な解決策をパネルディスカッションで議論しました。
- トークテーマ①:「企業の株価、売上/業績改善、PBRの課題」
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株式会社インフォネット |
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株式会社Blueprint one 代表取締役 鈴木 大樹 氏 |
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株式会社メディックス コーポレートスタッフ 広報 徳田 裕美子 |
上場企業の命題である「PBR(株価純資産倍率)向上」。しかし、認知度も高く、統合報告書も出しているのに、株価が上がらないという企業が多数存在します。
―統合報告書は読まれていない?―
斎藤氏は、PBRの向上施策の第一歩として、「Webサイトの動線分析」の重要性を指摘しました。
斎藤氏(インフォネット):統合報告書を何千万円もかけて発行しても、Googleアナリティクスで見ると、投資家層がESGレポートや統合報告書に全然リーチできていないケースがほとんどです。その結果、短期売買が中心の売買になってしまっています。
投資家は、PDFのリンクを貼ってあるだけのWebサイトは読んでくれません。トップメッセージ、戦略、ガバナンスの要諦をWebサイトで充実させ、統合報告書と連携させる必要があります。
―広報とIRの分断を乗り越えるべし―
広報とIRの連携の重要性が語られる一方で、両部門の「分断」が多くの企業で共通の課題として浮き彫りになっています。
鈴木氏(Blueprint one): 広報は、会社の全体を誰よりも理解し、経営の言葉を憑依している存在であるべきです。また、ネタを自ら探しに行く姿勢が必要です。なので、「分断が」と言っている企業は、その余裕がまだあるんだなと思います。
鈴木氏は、地方の支所や事務所にこそ、ネタが転がっていると指摘。また、ローカルメディアを巻き込んだプレスツアーによって、東京では事例止まりでも、地方ではニュースとしてジャックできることを具体的な成功事例として紹介しました。

- トークテーマ②:「 BtoB広報・PR/IR/採用課題 (KPI~予算)」
多くの広報担当者を悩ませるKPI設定と予算確保。特に、PR活動は短期的に成果が出にくいため、経営層へのコミットが難しいという現実があります。

―KPIの切り札は「アワード(賞)」―
鈴木氏は、広報のKPIについて、広告換算的な話は悪手だと警鐘を鳴らし、アワード受賞を提案しました。
鈴木氏(Blueprint one): 経営層が大事にするのは、やはり数字です。しかし、広報の効果は複合的。そこで、私はアワード(賞)を取ることをKPIに据えていました。内閣総理大臣賞など、業界の権威性があるものを2年計画で仕込みます。
経営層やお客様は権威性に弱いんです。社長は裏側でめちゃくちゃ自慢しますし、お客様に対しても「内閣総理大臣賞を取った会社」というだけで、信用説明が不要になるほどのパワーがあります。
ただし、単純な応募ではなく、審査主体と日頃からの情報交換や関係構築が必須であることも強調されました。「賞を取るための根回し」ととらえられないよう、公共性を名目に「情報交換したい」というスタンスでアプローチすれば、官僚や省庁は意外にも門戸を開いているそうです。
―広報の予算は企業の用途や目的によって様々―
広報の予算については、事業部支援やIR、採用、TVCM等の広告を行うなど、用途によって大きく予算取りが異なります。
事前アンケートの結果でも、広報予算は、年間1千万円~年間5千万円の範囲で予算取りしている企業が多いですが、年間1億円~5億円で予算取している企業も11%あり、予算範囲についてはばらつきが見られました。

鈴木氏(Blueprint one):広報に予算を投じる場合もあれば、「人件費」に投じる場合もあります。
徳田(メディックス): 予算次第なので、工夫でどうにかしています。数値化し、「今期リリースを何本打つ」「認証バッジを何件取る」といった行動目標をKPIとして見せることで、実績を作って次の予算を取りに行っています。

- トークテーマ③:「 BtoB広報・PR/IR/採用の成功事例、知見」
最後に、これまでの議論を踏まえた具体的な成功事例と知見が共有されました。
―政府系アワードは最強の「印籠」―
鈴木氏が前職で受賞した内閣総理大臣賞は、広報活動における「最強の印籠」として語られました。
鈴木氏(Blueprint one): 内閣総理大臣賞を取って、劇的に変わったのが採用です。それまでコストをかけていた採用が、コストをかけずに旧帝大クラスの人材がバンバン応募してくるようになりました。営業ツールとしても強力で、安倍元総理との握手写真を出すだけで、水戸黄門の印籠のように業績向上にも寄与しました。
「賞」の賞味期限は長いです。5年以上経っても、まだ味を出して使えていると思います。
―IRの短期成果はインデックス評価―
斎藤氏は、IRにおける短期的な株価向上策を具体的に示しました。
斎藤氏(インフォネット): 短期的な成果を確実に上げるなら、インデックス評価へのアプローチです。FTSE、MSCI、CDPといったESGインデックスの評価を上げる取り組みは、株価の上昇という成果が確実に出ます。これは基準が明確だからです。
一方で、本質的な成功は、これらの短期的な成果に終わらない企業の永続性(ゴーイングコンサーン)にあると強調。
斎藤氏(インフォネット): 本質は、ダイキン工業のようにロイック(ROIC)などの経営指標を現場まで浸透させ、全社一丸となってその指標を追い求める社内コミュニケーションを築くことです。また、役職者層がPLベースだけのコミュニケーションになっていないか、財務三表を読み解けるようになっているか、が重要です。

- 懇親会で語られた広報・IRの「リアルな現場」
パネルディスカッション後の懇親会では、広報・IR活動が社長のトップダウンに左右されやすい実態や、部門間のデータ分断による効果検証の困難さ、そして、属人化といった課題が共有されました。また、鈴木氏の「広報が、自ら媒体に積極的にアプローチし、ネタを獲得する」という考え方に大きな共感が集まり、広報の仕事の透明性やブランディングとの境界線、AI時代への対応についても活発に議論されました。

まとめ
広報・IR活動の最前線で語られたリアルな課題感は、多くの参加者様にとって共感や新たな気づきとなったのではないでしょうか。
「予算の低さ」や「KPIの未確立」といった共通課題に対し、「広報が自らネタを取りに行く覚悟と行動」、そして、「アワード獲得による経営層へのコミット」が、課題を乗り越えるための重要なポイントとして挙げられました。
メディックスでは、今後も皆様の課題解決につながる情報提供やイベントを企画してまいります。ご参加いただいた皆様、そして、熱い議論を交わしてくださったパネラーの皆様、本当にありがとうございました。

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