エンジニアが持つ顧客とのコンタクトポイントを、
開発や運用保守だけではなく「案件創出」に生かしたい
NTTと日本IBMによって、1985年に設立された日本情報通信株式会社(NI+C)。コンサルティングから要件定義、設計、開発、テスト、運用まで、システムサイクルすべてのフェーズに対応できるシステムインテグレーターとして、顧客企業の経営課題解決に貢献してきました。しかし、近年はビジネスモデルが変わりつつあるとクラウド事業本部クラウドサービス部 第4グループ グループ長の田部井 貞治 氏は明かします。
「当社は、NTT向けの大型なものをはじめ、インフラのSI(システムインテグレーション)案件を多数手がけ、開発およびプロジェクト管理、品質管理のノウハウを蓄積してきました。しかし近年は、大規模開発よりスポット的な対応が増えてきました。また、運用基盤もオンプレミスからクラウドへの移行が増えています」(田部井氏)
いわゆる人月ビジネスからサービス型へ、ビジネスモデルが変わっていく中で、クラウドサービス部ではIBM i(旧AS/400)ユーザ向けのDXおよびアプリケーションモダナイズの推進に取り組んでいます。IBM iは、多数の企業を長年支えてきた基幹システムですから、DXやモダナイズのプロセスで様々なニーズが発生しています。クラウド事業本部クラウドサービス部 第3グループ主査の中山 義久 氏は、現場での雰囲気について次のように話します。
「お客様が明らかにスピードを重視するようになってきました。細かい要望も非常に増えています。それに合わせて都度ご提案をしていましたが、今ひとつうまくいきませんでした。何がダメだったのか、どう分析すればその理由が解明できるのかも、はっきりと理解できていなかったのです」(中山氏)
日常業務も抱えているため、十分に検証する余裕もありません。そうした状況に危機感を覚えた田部井氏は、組織として提案の仕方を学ぼうと考えました。
「エンジニアは、アプリケーションや基盤構築について、お客様と日々対話をしています。そのコンタクトポイントを開発や運用保守だけではなく、案件の創出に生かすべきだと考えました。そのためには、技術的にできることをただお伝えするだけではなく、お客様がどんな状況にあり、何を課題と考えていて、どうアプローチしたら伝わるかを考えなくてはなりません。営業やマーケティング経験のない若手エンジニアにも、そうした顧客ニーズを理解する手法を学んでもらいたいと考え、IBMのマーケティング支援プログラムを通じてメディックスさんに依頼しました」(田部井氏)
カスタマージャーニーマップの作成で「自社の強み」の解像度が向上。ニーズを的確に掴み、受注につながる提案が可能に
メディックスが提案したのは、ワークショップ形式でのカスタマージャーニーマップの作成です。顧客への理解を深め、適切なコミュニケーションを設計するのが狙いでした。
「カスタマージャーニーマップの存在自体知らなかったため、当初は何を作るのか全くイメージが湧きませんでした。しかし、まず自社の立ち位置や競合との比較から取り組んだので、非常にわかりやすかったですね。自分たちの強みや弱みを改めて見つめる機会はあまりないので、しっかり整理した上で外に向けて何をすればいいか考えることができました」(田部井氏)
言い換えれば、同社が提供できる価値と、その競争優位性を言語化することにつながったということでしょう。アプリケーションや基盤の構築だけではなく、ネットワークから運用、セキュリティまで、すべて高水準でカバーしているという同社の強みを再発見したことで、顧客への提案がしやすくなったといいます。
「自分たちの強みを打ち出せていなかったという『弱み』を把握できたのも大きかったですね。これまでは、競合企業にコンペなどで負けても、お客様から『品質は高いけど、金額も高いから』と言われたことを鵜呑みにしている節もありました。でも、うまくお客様のニーズに合わせた提案ができていなかったり、そうした上流の提案をすべきキーパーソンにアプローチできていなかったりといったことがあったのでは、と気づいたのです」(田部井氏)
カスタマージャーニーマップの作成だけではなく、デプスインタビューも実施したことで、顧客の視点を理解したのも役立ったと田部井氏は振り返ります。中山氏も、顧客への話の進め方や、ポイントの押さえ方がわかるようになったと話します。
「特に、比較検討のタイミングにおける情報提供については強く印象に残っています。それまでの提案活動でも、事例や実績などの情報を求めるお客様が多かったのですが、準備をしていなかったので、すぐに回答できませんでした。しかし、カスタマージャーニーマップで、お客様が比較検討したいタイミングを掴んだことで、その場ですぐ回答できたり、充実した資料をタイムリーに提示できたりするようになったのです。メディックスさんの支援を受ける前は、提案がnice to have(あったらいいね)と受け取られ先に進まないこともあったのですが、そこでつまずくことなく受注につながることが増えました」(中山氏)
顧客との対話や提案の質が向上し、信頼関係の強化を実現。メディックスの「寄り添う」サポートも高評価
カスタマージャーニーマップの作成による顧客理解の深まりは、エンジニアの意識改革にもつながりました。田部井氏はこう語ります。
「システムエンジニアは、どうしても受け身になりがちです。お客様からの質問に答える、営業部門からの要請に対応する、といった業務が多いですからね。でも、せっかくお客様とのダイレクトなコンタクトポイントがあるのですから、言われたことをただやるのではなく、積極的に価値を提供していける存在になりたいと思ったのです。カスタマージャーニーマップの作成は、そこに意識を変える良い機会になりました」(田部井氏)
実際、現場で対応している中山氏は「課題解決への意欲がより高まり、お客様と会話するときの意識が変わった」といいます。
「お客様の言葉の裏にあるメッセージを強く意識するようになりました。お困りごとがあるのか、情報収集したいのか。そう意識すると、必然的にその背景が気になってきますので、業務やシステムに関することだけではなく、お客様の会社のビジネスや業界の状況、体制なども話題にのぼるようになります。お客様からも会社の動向や親会社の情報を伝えてくださる機会が増えてきました」(中山氏)
そうした“生きた情報”が最適なタイミングでの提案、ひいては顧客との信頼関係強化にもつながったと話すお2人。日常業務が忙しい中で、リスキリングに成功したのはメディックスのサポートも大きいと評価します。
「2週間ごとに全6回で行われたワークショップのことを、当初は講義のようなものだと思っていました。しかしそうではなく、カスタマージャーニーマップのシートを『宿題』として毎回その日までに作成し、ワークショップで確認し合いながら進めていくスタイルでしたので、毎回しっかりと知識が身についていく感覚がありました。質問にも親身にわかりやすく答えてくださって、ほかの社員もぜひ受けるべきだと思っています」(中山氏)
「驚いたのは、当社のソリューションに対するメディックスさんの理解が非常に深かったことです。事前に、競合企業の取り組みを調べるなど、相当な準備をしてくださったのだと思います。おかげで、参加メンバーのほとんどがシステムエンジニアだったのに、スムーズに話を掘り下げ、適切に整理してくれて、とても話しやすい雰囲気でした。うまく導いてくださったことに感謝しています。今後は、作成したカスタマージャーニーマップをベースに、インターネット広告の運用も含め、幅広いマーケティングの支援をお願いしたいと思っています」(田部井氏)