購買プロセスが複雑なBtoBビジネスにおいては、オフラインでの接点が重要な役割を果たすケースが多く、オンラインでのコンバージョンを計測するだけでは、集客に関わる施策の全体像を掴むことが困難です。
そこで、重要となるのが「オフラインコンバージョン」の計測です。本記事では、オフラインコンバージョンとは何か、なぜ、BtoBマーケティングで重要なのか、計測手法、導入のポイントなどを詳しく解説します。
目次
オフラインコンバージョンとは?
目標として設定した顧客行動のうち、オンラインコンバージョンは、Webサイト上での購入や問い合わせなど、オンラインで完結する顧客行動の達成を指します。一方、オフラインコンバージョンは、Webサイト上での行動だけでは完了せず、電話や訪問、展示会への参加、資料請求後の商談成立、契約締結といったオフラインでの顧客行動の達成を指します。
なぜ、BtoBマーケティングでオフラインコンバージョン計測が必要なのか?
BtoBビジネスにおいては、顧客が製品やサービスを検討し、購入に至るまでのプロセスが多岐にわたり、長期になることが一般的です。そのため、オンラインでの情報収集や問い合わせだけではなく、対面での商談、提案、契約交渉など、オフラインでのコミュニケーションが購買決定に大きく影響します。このようなプロセスに対応するために、オンラインでの顧客行動だけではなく、オフラインでのコンバージョンを計測することで、成約につながる施策の効果を正しく評価することが可能になります。さらに、オンラインとオフラインの施策を統合的に分析することで、マーケティングROI(投資収益率)の最大化を図り、営業部門との連携強化、効果的な営業活動にも役立ちます。
オフラインコンバージョン計測で実現できること
オフラインコンバージョン計測で実現できることは多岐にわたり、マーケティング戦略の策定と実行に大きく貢献します。具体的には、下記の点が挙げられます。
■各マーケティング施策の費用対効果を正確に評価できる
■顧客の行動パターンを正確に分析できることで、最適なマーケティング戦略の立案が可能になる
■見込み顧客の育成状況を可視化できることで、営業活動の効率化をはかれる
■広告接触から購買に至るまでのプロセスにおけるボトルネックを特定し、改善策を講じることで、最終的な購買率の向上につなげられる
■オフラインコンバージョンを広告配信の最適化の対象に取り込むことで、商談や受注など、本来伸ばすべき指標を基にした運用を実現できる
■広告プラットフォーム(媒体)側での機械学習により、広告配信の精度向上が見込まれる
これらの効果を最大限に活用することで、より効果的なマーケティング活動が可能となります。
オフラインコンバージョン計測の事例紹介
弊社メディックスが広告運用を担当しているBtoBの通信サービスの事例を紹介します。
オフラインコンバージョン計測を行うことで、全体最適を行えた例として、参考にしてください。
[施策概要と効果]
Salesforceのデータを広告データと連携することで、オンラインとオフラインのコンバージョンを紐づけし、リードの案件化率を加味した広告運用を実現した例です。
案件化したリードの情報を用いて、広告プラットフォーム側で機械学習を実施し広告配信を最適化。その結果、案件化率(商談率)131%、商談単価67%と改善をはかることができました。
※CV:コンバージョン、CVR:コンバージョン、CPA :顧客獲得単価
オフラインコンバージョンを計測する2つの手法
Cookie規制対策として、プライバシー保護を図りつつ、オフラインでの顧客行動を計測する代表的な2つの手法を紹介します。
オフラインCVインポート(オフラインコンバージョンインポート)
オフラインCVインポートは、広告クリック時に発行・付与される「クリックID(clickID)」を使用して、電話や店舗来店、対面商談などのオフラインでコンバージョンに至ったデータを広告プラットフォームに取り込む仕組みです。
クリックIDを、広告プラットフォームから企業側のCRM(顧客管理システム)などに引き継ぎ、企業側のシステムで管理するメールアドレスなどの個人情報とクリックIDを紐づけることで、オンライン・オフライン双方の行動を一括管理できます。この際、個人情報そのものを直接広告プラットフォームに送るのではなく、クリックIDをキーとして紐づけることで、プライバシーが保護されています。
リード拡張コンバージョン
リード拡張コンバージョン(Enhanced Conversions for Leads)は、オンラインでのコンバージョン時にフォームで入力されたメールアドレスなどの個人情報を使用して、オフラインでコンバージョンに至ったデータを広告プラットフォームに取り込む仕組みです。
ブラウザのCookie制限強化やプライバシー保護の観点から、フォームで入力されたメールアドレスなどの個人情報は、安全にハッシュ化(個人が特定できない形に変換)されて広告プラットフォーム側に引き継がれ、個人が特定されない形でオンライン・オフライン双方の行動が紐づけられます。
オフラインCVインポートとリード拡張コンバージョンの違い
オフラインコンバージョンを計測する2つの手法について紹介してきましたが、それぞれ具体的にどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの仕組みについてもう少し詳しく紹介し、オフラインCVインポートとリード拡張コンバージョンの違いを解説します。
オフラインCVインポートは、クリックID取得のために設定が必要
オフラインCVインポートでは、オンライン広告をクリックしたユーザのクリックID(GCLIDなど)を取得する必要があります。広告クリック時に発行・付与されたクリックIDは、ランディング先となるWebサイト側とCRM(顧客管理システム)側で設定を行っておくことで、Webサイトのフォーム送信時などにCRMで取得・保存できます。
その後、保存したクリックID・CV種別・日時を広告プラットフォームにアップロードします。これにより、オンライン広告のクリックとオフラインでのコンバージョンが紐づけられ、広告の効果を正確に測定できるようになります。
Google 広告のほか、Yahoo広告、Microsoft 広告でも実装可能です。
[オフラインCVインポート:イメージ図]
リード拡張コンバージョンは、実装が比較的容易。ただし、Google 広告のみ
一方、リード拡張コンバージョンでは、クリックIDをCRMで取得・保持・抽出する必要はありません。代わりに、顧客のメールアドレスや電話番号などの個人情報をハッシュ化したものを広告プラットフォームに送信します。広告プラットフォーム側では、同様にハッシュ化された個人情報と広告クリック時の情報を照合し、オフラインコンバージョンを紐づけます。この方法では、クリックIDを直接扱う必要がないため、実装が比較的容易になります。
ただし、実装できるのは、Google 広告に限られます。
[リード拡張コンバージョン:イメージ図]
Googleは、リード拡張コンバージョンを推奨
オフラインコンバージョンのインポートをすでに使用している場合、Googleはリード拡張コンバージョンへのアップグレードを推奨しています。これにより、より正確なコンバージョン測定が可能となり、入札パフォーマンスが向上すると説明しています。
どちらの手法を選ぶべきか、それは現状の環境や今後の展開によって異なります。
GoogleのみでオフラインCVインポートを実装し、クリックIDの取得・吐き出しをこれから設定する場合 |
⇒リードの拡張コンバージョンを推奨(実装が容易なため)
Yahoo、Microsoftなどの広告プラットフォームも含めてオフラインCVインポートを実装予定の場合 |
⇒オフラインCVインポートか、Googleのみリード拡張コンバージョンを実装するかを検討
[比較表]
参考:Web拡張コンバージョン
参考としてオンラインのコンバージョン計測の精度を上げる補完手法も紹介します。
Web拡張コンバージョンでは、フォームで入力されたメールアドレスや電話番号などの個人情報をハッシュ化して広告プラットフォームに送信。広告プラットフォーム側でユーザ行動の重複や欠損を補正する仕組みです。
これにより、プライバシー保護と両立して、従来のCookie情報だけに頼る計測よりも高い精度でのコンバージョン計測を可能にします。
[Web拡張コンバージョン:イメージ図]
オフラインコンバージョン計測を導入する際のポイント
BtoBマーケティングにおいてオフラインコンバージョン計測が重要であること、そして、その手法について解説してきました。ここでは、実際にオフラインコンバージョン計測を導入する際に考慮すべきポイントをまとめます。
目標設定を明確にする
オフラインコンバージョン計測を行う目的を明確にし、どのようなデータを取得し、どのように活用したいのか、を具体的に定義しましょう。目標が明確であれば、計測に必要な項目やツールも自ずと見えてきます。
KPIを適切に設定し、計測・分析
目標達成度を測るためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。KPIは、コンバージョン数だけではなく、コンバージョン率や顧客獲得単価など、多角的な視点で設定することが重要です。また、定期的に計測・分析を行い、改善点を洗い出すようにしましょう。
顧客データのプライバシー保護に配慮
オフラインコンバージョン計測を行う際には、顧客データのプライバシー保護へ十分に配慮する必要があります。個人情報保護法などの関連法規を遵守し、顧客の同意を得た上で、データを取得・利用することが重要です。適切なデータ管理体制を構築し、セキュリティ対策を万全にすることで、顧客の信頼を維持しながら、効果的なマーケティング活動を行うことができます。
関係部署との連携を密にする
オフラインコンバージョン計測は、マーケティング部門だけではなく、営業部門や顧客管理部門など、様々な部署との連携が不可欠です。各部署の間で情報を共有し、協力体制を築くことで、より効果的な計測が可能になります。
必要に応じてツールの導入を検討
オフラインコンバージョン計測を効率的に行うためには、専用のツールを活用することが有効です。様々なツールが提供されており、自社のニーズに合ったツールを選択することが重要です。ツールによっては、CRMやSFAとの連携機能や、自動化機能などが搭載されているものもあります。これらの機能を活用することで、計測にかかる手間を削減し、より精度の高いデータを取得することが可能になります。
外部委託も視野に入れる
自社でオフラインコンバージョン計測を行うのが難しい場合は、広告代理店などのデジタルマーケティングの支援を行える会社に委託することも検討しましょう。社内にはない、専門的な知識や豊富な実績を持っているため、的確なアドバイスやサポートを受けることができます。
これらのポイントを踏まえ、自社のビジネスモデルや顧客の特性に合わせたオフラインコンバージョン計測の仕組みを構築することが、BtoBマーケティング成功への鍵となります。
まとめ:オフラインコンバージョン計測で、BtoBマーケティングを成功に導こう
BtoBビジネスでは、多くの場合、受注までにオンライン外のプロセスが存在します。オフラインCVインポート、リード拡張コンバージョン、Web拡張コンバージョンを使い分け、オンラインとオフラインのデータを統合的に活用することで、正確なROI把握と最適なマーケティング施策の実行が可能となり、より確実な成果をもたらすでしょう。
メディックスでは、オフラインコンバージョン計測をはじめ、各種広告およびWebサイトデータなどのマーケティングデータとSFAやCRMに格納されている営業・顧客データを連携する、マーケティング施策の費用対効果の可視化ソリューションを提供しています。これらのソリューションを導入・運用することで、より精度の高いデータ分析が可能となり、効果的なマーケティング戦略の立案と最適な施策実行を実現します。
BtoBビジネスの広告運用やデジタルマーケティングについてお困りごとや課題などありましたら、ぜひ、メディックスまでお気軽にお問い合わせ、ご相談ください。
また、オフラインコンバージョン計測を取り入れた成功事例を下記の記事でも紹介しています。ご一読いただき、貴社の課題解決のヒントとしてお役立てください。
事例から学ぶ:BtoB広告で有効リードの最大化を実現した自動入札運用モデルを解説【前編】
事例から学ぶ:BtoB広告で有効リードの最大化を実現した自動入札運用モデルを解説【後編】
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