BtoB企業向けマーケティング支援事業を柱の1つとしている株式会社メディックスは、株式会社イノーバと共催で、オンラインセミナー「デジタルを武器に会社を強くする。製造業のためのマーケティングDX戦略と実践」を2024年11月6日(水)、7日(木)に開催しました。セミナーの一部を抜粋したレポートをお届けします。
製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進む中、マーケティングのデジタル化も重要な課題となっています。新たなビジネスチャンスを逃さないためには、マーケティングDXの推進が不可欠です。本セミナーでは、株式会社イノーバとメディックスが最新のマーケティング手法や事例を交えながら、製造業におけるマーケティングDXの必要性と実践方法について解説しました。製造業のマーケティング担当者が、今後のデジタル化の戦略を考える参考にできる内容となっています。
目次
Chapter1:株式会社イノーバ 宗像氏 講演パート
【スピーカー紹介】
※登壇者の肩書はセミナー当時のものです。
Chapter1-1:なぜ、製造業がマーケDXに取り組むべきなのか?
先週、私は九州で開催されたDXPO展示会に参加し、ブースに立ちながら多くのお客様とお話する機会をいただきました。マーケティングが今回のテーマですが、現場での対話を通じて改めて感じたのは、マーケティングと密接に関係する営業課題の重要性です。
特に、営業人材の不足や高齢化、また営業育成の難しさについて、多くの企業様からお話を伺いました。そして、製造業においても、従来の営業スタイルが見直される時期に来ているのではないかと強く感じています。私は、以前、製造業系のIT企業に身を置いていた経験から、大手製造業における人材の育成方法について学んだことがあります。多くの場合、先輩の仕事を見て学び、時間をかけてじっくりと成長するスタイルが一般的でした。先輩とチームを組み、丁寧に育成していただいたことは、とても恵まれた環境だったと感じています。しかし、現在は人の入れ替わりが激しくなり、かつてのように手厚く育成することが難しくなってきています。また、提供する商品やサービスが多様化・高度化しているため、育成の難易度も上がっているのではないかと思います。
さらに、営業手法に関しても大きな変化がありました。特にコロナ禍をきっかけに、オンラインの営業活動に注力する企業が増え、営業の在り方が大きく変わったと感じています。取引先についても、以前は限られた大切なお客様と深く関わり、継続的な取引を重視する傾向があったかと思います。しかし、現在では、それがリスクになる時代に差し掛かっていると感じます。幅広い取引先を持ち、その中で売上を伸ばしていくことが求められるようになってきています。また、将来的な売上の確保だけではなく、短期的に受注を増やすことも重視される時代になってきているのではないでしょうか。この点については、福岡での展示会を通して改めて実感いたしました。
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営業改革が急務とされる背景には、営業職の採用難が挙げられます。新卒求人の不足が年々深刻化しており、特に営業職の人手不足が顕著です。ある大手人材会社の役員の方も、「新卒で営業職を希望する学生は、ほとんどいない」とおっしゃっていました。これにより、人気のある職種とそうでない職種・業種の、明確な分かれが進んでいると感じます。
こうした状況の中で、企業として注視すべきはお客様の行動変化です。メディックスのこの後のパートでも取り上げられていますが、お客様がWebを活用して情報収集を行うケースが増えています。
現在、お客様はオンラインで情報収集を行い、企業に対しては製品の性能だけではなく、経営課題への対応や付加価値のある提案を求める傾向にあります。そのため、お客様は課題解決のパートナーとして企業の存在を求めるようになっています。これに応えるためには、お客様が抱える課題を理解し、どのように解決に貢献できるか、を明確に示す必要があります。これは、営業やマーケティング、そしてWebを活用した情報発信など、広範な領域での取り組みが求められています。特に、お客様の購買行動をしっかりと把握することが重要です。
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オンライン化した顧客の購買行動を4段階で示した図があります。お客様は、まず現在の取引先に課題を感じ、次の製品購入の際には別のサプライヤーを検討したいと考え始めます。その後、必要な仕様を定義し、評価検討を経て選定に進むというプロセスを辿ります。しかし、現在はお客様がWebで情報を集める割合が高まり、サプライヤーへの接触タイミングが以前よりも遅くなっている傾向があります。こちらについては、メディックスが毎年実施されている調査データも非常に参考になりますのでご覧ください。
従来のように左から右にスムーズに流れる検討プロセスは、もはや主流ではなくなっており、現在では、お客様が様々な段階でWebの情報を取り入れながら検討を進める複雑なプロセスになっています。
冒頭でもお伝えしましたが、営業の課題は企業内でも非常に大きな経営課題になっていると感じます。特に営業人員の不足が、売上や受注の未達に直結するため、この問題を解決することが喫緊の課題となっています。人手不足が営業力に影響を与えており、さらに顧客のニーズが高度化し、デジタルで情報収集を行う時代において、これに対応しなければ、社内での問題の押し付け合いが起こり、顧客が他社に流れてしまう可能性もあります。
また、営業の高齢化も深刻な問題です。豊富なノウハウを持つベテラン営業が数年後にいなくなることを想定すると、営業チームの維持や売上の確保が難しくなる可能性があります。そのため、営業改革とマーケティング強化をセットで取り組むことが不可欠です。多くの企業がコロナを機にWebサイトの刷新やデジタルマーケティングを試行していますが、「そろそろ本格的に取り組む時期ではないでしょうか?」ということが私からのメッセージです。
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次に、お客様がWebで情報を集める時代において、企業は何をすべきか?について、事例と合わせてお話します。企業が発信したい情報を発信するのではなく、お客様が求める情報を提供することが重要です。飛び込み営業やテレアポだけでは届きにくい今、インバウンド型のアプローチが求められています。ホワイトペーパーやハウツーガイドなど、顧客にとって便利な情報が必要とされています。
Chapter1-2:製造業のマーケDX成功事例紹介
Chapter1-3:製造業のマーケDXを成功させるポイント
Chapter1-2、1-3については、アーカイブ動画およびセミナー資料をご確認ください。
Chapter2:メディックス 大内田 講演パート
【スピーカー紹介】
※登壇者の肩書はセミナー当時のものです。
製造業がデジタルマーケティングで成果を出すために取り組むべき施策について、3つ紹介します。ここで重要なのは「成果を出す」という点です。株式会社イノーバの宗像様が言及したように、製造業は労働人口の減少など、外部環境の変化によって危機的な状況に直面しています。
その中で、デジタルマーケティングを行うのであれば、広告の露出数やWebサイトの閲覧数に一喜一憂するのではなく、売上や商談の創出という具体的な成果に結びつける意識を持つことが重要です。これらにつながる3つの施策をお話しします。
また、最近、BtoBマーケティングの注目度は高まっていますが、オンライン上で見ることができるBtoBマーケティングの成功事例の多くは、IT企業のものが中心です。ITと製造業では同じBtoBであっても、取るべきマーケティング戦略に違いがあると感じており、ここでは製造業が成果を出すためのデジタルマーケティング施策について、取り組むべきポイントを紹介します。
Chapter2-1:製造業が取り組むべき施策①「カスタマージャーニーマップの作成」
まず1つ目の取り組むべきポイントとして、カスタマージャーニーマップの作成をおすすめします。デジタルマーケティングといえば、Google広告やYahoo!広告、バナー広告、Webサイトなどがすぐに思い浮かぶかと思いますが、これらはあくまで手法です。それらを効果的に活用するためには、事前の準備が非常に重要です。
カスタマージャーニーマップとは、下図のように、お客様が商品やサービスを知ってから実際に購入や利用に至るまでの行動や感情を可視化したものです。情報収集が複雑化している中で、お客様の行動をしっかりと分析し、取るべき顧客とのコミュニケーションを明確にすることで、マーケティング施策をより効果的に進めることができます。
カスタマージャーニーマップの重要性について深堀したいと思います。プロモーション活動において「いつ、誰に、何を伝えるべきか」を明確にすることは、非常に重要です。株式会社イノーバの宗像様から「押しつけるのではなく、惹き付ける」というお話がありましたが、客を惹き付けるためには、顧客が必要な情報を、必要なタイミングで届ける、ことが求められます。したがって、「いつ、誰が、どんな情報を欲しているのか?」を明確に言語化する必要があります。
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例えば、上図の上段は、成果が上がらないマーケティング活動の例です。経営戦略や製品サービス開発から、そのままプロモーション施策に進んでしまい、「誰に、何を、伝えるべきか」が不明確なまま、広告やWebサイトの制作が進められ、マーケティング予算の投資対効果が低くなります。一方、上図の下段は、成果の上がるマーケティング活動の例では、製品サービス開発とプロモーション施策の間にカスタマージャーニーマップの作成を挟んでいます。これにより、「誰に、何を伝えて、どう態度変容を促すか」が設計されたマーケティング活動が可能になります。この、「誰に、何を伝えて、どう態度変容を促すか」を設計することを、我々はコミュニケーション(設計)戦略と呼んでいます。
簡単に言い換えると、カスタマージャーニーマップを作成するということは、顧客に刺さるトークを明確にし、惹きつけるメッセージを持つということで、その状態でプロモーションやコンテンツ制作、広告展開、サイト制作を行うことが、成果を出すために重要なポイントであり、カスタマージャーニーマップ作成の重要性でもあります。
では、どのようにこのコミュニケーション設計を進めていくか?について、次に紹介します。
※Chapter2-1の続きについては、アーカイブ動画およびセミナー資料をご確認ください。
Chapter2-2:製造業が取り組むべき施策②「休眠顧客の掘り起こし」
2つ目の取り組むべきポイントとして、「休眠顧客の掘り起こし」を紹介します。「休眠顧客』という言葉に馴染みがない方もいらっしゃるかもしれませんが、これは以前に取引があり、連絡を取ってはいたものの、現在は接点が途絶えてしまっているお客様のことを指します。営業担当者が持っている名刺の中で、現在は利用していないものと言い換えることができます。
こうした休眠顧客は、過去に接点があるため、もう一度コミュニケーションを取ることができれば、取引を再開できる可能性が高いと考えられます。しかし、営業のリソースは限られており、既存顧客の対応で手一杯な上、山積みとなった、休眠顧客の1件1件にアプローチするのは現実的ではなく、そのまま放置されてしまいがちです。
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特に、製造業は営業活動やプロモーション活動に長い歴史があることが多く、その分、休眠顧客も多いことが考えられるため、この休眠顧客の掘り起こしは、非常に有効な取り組みと言えます。ただし、営業リソースの限界から、個別に電話やメールでアプローチするのは現実的ではありません。そのため、デジタルを活用して休眠顧客を掘り起こすことが効果的だと考えています。
休眠顧客を掘り起こす方法として、大きく2つの方法が挙げられます。1つはメール配信、もう1つは広告配信です。
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まずは、メール配信についてですが、MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用すれば、事前に設定したメールを一括で何百、何千件と配信することが可能です。また、特定の条件に応じてメールを自動で送るステップメールも設定できるため、限られたリソースで効率的に休眠顧客へアプローチできます。さらに、メールの開封やリンクのクリックなどの反応も確認できるので、例えば、「○○社の△△さんがメールを開封し、リンクをクリックした」といった情報に基づいて、優先的に営業アプローチすることが可能です。
ただし、メール配信は色々な企業が行っており、開封率やクリック率も高くはありません。関心を示した顧客を絞り込む目的では有効ですが、絞られ過ぎてしまう可能性もあります。また、メールアドレスを知っている顧客にしかアプローチできない、というデメリットもあります。
そこで、もう1つの広告配信についてですが、バナー広告などを活用して、Webサイト上で特定の企業に属する人だけを指定して、広告を配信することが可能です。例えば、A社とB社の従業員に向けて広告を配信するということも可能です。メールに比べて顧客がインターネットを利用している時間の多くにアプローチが可能となります。
また、企業名を指定することで、過去に取引があった担当者だけではなく、別の部署への認知の拡大にもつながります。ただし、広告配信の仕様上、指定する企業数や種類によっては配信に制限がある場合もあります。
メディックスでは、休眠顧客の掘り起こしをサポートする「M-reactivation(エム-リアクティベーション)」というサービスも提供しています。例えば、展示会やイベントで多くの名刺を交換したものの、そのうちフォローできているのはごく一部で、残りは放置されている場合などに、このサービスを活用していただければ、メールや広告配信でのフォローが可能です。ぜひ、ご相談ください。
既存顧客の掘り起こしとして、メールや広告を活用する方法を紹介しましたが、ここでのポイントとして『脱・俺の客、俺の部署の客』という視点も重要です。
Chapter2-2の続きについては、アーカイブ動画およびセミナー資料をご確認ください。
Chapter2-3:製造業が取り組むべき施策③「用途開発」
最後に、「用途開発」を紹介します。用途開発という言葉は、製造業のお客様であれば聞いたことがある方も多いかと思います。簡単に説明すると、用途開発とは、自社が持つ技術や製品の新たな活用方法、つまり、新しい用途を見つけることを指します。既存の市場や利用されている領域ではなく、全く異なる市場での用途や新しいニーズに対応することで、競争を避けつつ新しいビジネスチャンスを創出することが目的です。
例えば、既存の市場が成長していかない場合や、縮小が予測される場合に、製品やサービス自体はそのままに、異なる市場に新たなビジネス機会を見出すことは、用途開発の取り組みと言えます。
用途開発が製造業にもたらす効果は大きいと考えています。特に日本の製造業は現在、様々な外部環境の変化に直面しています。その結果、これまで主戦場としていた市場で物が売れにくくなったり、マーケットシェアの維持が難しくなったりしている状況をよく耳にします。こうした中で、自社の優れた技術や製品を活かし、現在の市場以外でも販売できる可能性を探ることができれば、製造業にとって大きな成果につながるのではないかと考えます。
例えば、外部環境の変化の1つとして、グローバル化があります。海外企業の参入により、競争が激化します。また、人口減少による市場の縮小、新たな技術革新も市場シェアの維持や拡大が困難になる要因です。そして、もう1つとして、EV技術の進展は技術革新と考えられますが、こうした新しい技術の登場や競争相手の参入によって、マーケットシェアが奪われてしまい、市場が縮小するなど、既存マーケットでシェアを維持すること、拡大することが一層難しくなっているのです。
こちらは、マーケティングの分野でよく言及される「アンゾフの成長マトリクス」を示したものです。横軸に製品が既存か?新規か?を配置し、縦軸に市場が既存か?新規か?と配置しており、現在の製品を新しい市場で販売できないか。と考える成長戦略を「新規市場開拓戦略」と呼んでいます。これがまさに用途開発の一例です。
新しい製品を開発するのは難易度が高く、ヒト・モノ・カネの投資が必要です。一方で、既存の製品を異なる市場で販売することができれば、新たな投資は最低限で取引を拡大することができます。この新規市場開拓戦略には、マーケットインの視点が重要になります。プロダクトアウトの考え方だけでは成功が難しいため、「マーケティング」が大いに活かされるところです。また、デジタルマーケティングを活用することで、その市場に自社の製品や技術が本当に必要とされているかどうかを、迅速に検証することも可能です。デジタルマーケティングと「新規市場開拓戦略」は、非常に相性が良いと考えています。
以上のことから、製造業企業には、この用途開発×デジタルマーケティングをぜひ、進めていただきたいです。
メディックスでは、この用途開発を支援するサービスを新たにローンチしました。このサービスでは、最短2カ月で、既存の製品や技術がどのようなもので、それをどの(新規)市場に展開する余地があるのか?を、検討する支援をいたします。また、その市場に向けて、どのようなプロモーションを行うことで、製品が本当に必要とされているか、を確認する方法も提案いたします。もし、ご興味がございましたら、ぜひ、ご相談ください。
Chapter3:株式会社イノーバ 宗像氏 × メディックス 大内田 対談パート
Chapter2-2以降の内容については、アーカイブ動画およびセミナー資料をご確認ください。
ここでは、株式会社イノーバ 宗像氏とメディックス 大内田が製造業マーケティングについて対談を行いました。次のような議題が挙がりました。
・2人が製造業(マーケティング)に興味をもった背景、理由 ・製造業が行うマーケティング施策として、「はじめの一歩」は、どこから踏み出せばよいか? ・製造業がマーケティング施策を行う上で、社内の理解を得るためには、どのようにしたらよいか? ・(マーケティングの)プロジェクトを上手く進める上で、キーパーソンとなるのは誰か? ・ニッチな商材や業界なので、デジタルマーケティングは合わないんじゃないか?と考えているが、実際はどうか? ・(製造業に限らず)BtoBマーケティングを早くから取り組んでいるトップランナーは、どのような取り組みをしているか? |
対談パートを含め、本セミナーは全編録画されております。全編通してご覧になりたい方や、講演資料の提供をご希望される方は、下記フォームよりお申し込みください。
※本記事は、2024年11月6日に開催された「デジタルを武器に会社を強くする。製造業のためのマーケティングDX戦略と実践」の講演内容を要約したものです。
※記載内容は、当時の情報を元にしておりますので、予めご了承ください。また、登壇者の肩書などはセミナー当時のものとなります。
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