
今日のビジネス環境では、顧客獲得と維持のために、営業部門とマーケティング部門の連携が不可欠です。しかし、多くの企業が直面しているのが、部門間の連携不足や非効率なプロセスといった課題です。例えば、マーケティング部門が獲得したリード(見込み客)が、営業部門できちんとフォローされずに失われてしまう、といった状況は珍しくありません。このような課題を克服し、成果を最大化するための手法として、「THE MODEL(ザ・モデル:ザモデル)」が注目を集めています。
この記事では、THE MODELの概要から導入メリット、具体的な導入ステップ、そして、成功のためのポイントまで、詳しく解説します。
なお、THE MODELは「The Model」「ザ・モデル」「ザモデル」とも表記されますが、本記事では「THE MODEL」に統一します。
目次
THE MODELとは?
THE MODELとは、営業とマーケティングのプロセスを複数の段階に分け、それぞれの段階に特化した専門チームを配置した部門間を横断するフレームワークです。プロセスごとの成果指標を可視化し、各チームがそれぞれの役割に集中することで部分最適を図り、営業活動全体での成果の最大化を目的とします。
弊社メディックスが、2024年3月にSaaSプロダクトのマーケティング業務に関わった方を対象に実施した「BtoBマーケティング担当者(SaaS)アンケート調査結果」によると、「THE MODEL型組織は多くの企業で存在」しており、特に大規模企業において導入が進んでいることがわかります。このことからも、THE MODELが現代の営業組織における1つのスタンダードになりつつあると言えるでしょう。
▼参考:THE MODEL型組織構成の有無
※クリックすると拡大表示されます。
出典:株式会社メディックス「BtoBマーケティング担当者(SaaS)アンケート調査結果」(調査期間:2024年3月18日 ~ 2024年3月20日 回答数 258名)
THE MODELの基本的なプロセス
THE MODELの基本的なプロセスは、以下の4つの部門が連携して顧客を獲得し、関係を構築していく流れになります。
マーケティング
Webサイトでの情報発信や広告、セミナー開催などを通じて、商品やサービスに関心を持つ可能性のある潜在顧客を発掘し、彼らにアプローチします。その目的は、見込み客の興味を喚起し、購買への最初のステップをうながします。
インサイドセールス
マーケティング活動を通じて獲得した見込み客と積極的にコミュニケーションを取り、ニーズを把握し、適切な情報を提供することで、購買意欲を高めていきます。具体的には、メールや電話、オンラインでの商談などを活用して、見込み客との関係を深め、信頼関係を構築します。
フィールドセールス
購買意欲が高まった見込み客に対して、直接対面またはオンラインでの商談を行い、具体的な提案や交渉を通じて、最終的な成約を目指します。顧客のニーズに合わせた最適なソリューションを提案し、契約締結までをサポートします。
カスタマーサクセス
顧客が商品やサービスを最大限に活用し、成功を収められるよう支援します。導入サポートやトレーニング、定期的なフォローアップなどを実施し、顧客満足度を高め、長期的な関係を構築します。これにより、顧客の継続利用やアップセル・クロスセル(追加販売・関連販売)を促進し、顧客生涯価値(LTV)の向上を目指します。
このように、THE MODELは、それぞれの専門家が担当することで、より効率的かつ効果的な営業活動を実現します。
THE MODELの導入によるメリット
THE MODELは、営業組織の効率化と成果向上を実現するためのフレームワークです。組織文化の変革や部門間の連携といった課題を乗り越え、適切な導入と運用を行うことで、企業は大きなメリットを享受できます。
THE MODELを導入することで、企業は下記のような具体的なメリットを受けることができます。
営業プロセスの最適化
各プロセスに専門チームを配置することで、ボトルネックを解消し、スムーズな流れを実現します。
リソースの効率的な活用
各チームがそれぞれの役割に集中できるため、人的資源や時間、予算を無駄なく活用できます。
営業成果の向上
プロセス全体の効率化と最適化により、リード獲得率、成約率、顧客満足度、顧客生涯価値(LTV)などの向上が期待できます。
組織全体の成長
営業活動が効率化され、成果が向上することで、組織全体の成長を促進することができます。
また、先述の「BtoBマーケティング担当者(SaaS)アンケート調査結果」によると、THE MODEL型組織における、KGI・KPIの運用方法について聞いた設問では、56.8%が他部門のKGI・KPIに関与と回答。部分最適ではなく、部門横断でKPIマネジメントが推し進められている状況がみえてきます。
▼参考:組織間のKGI運用方法
※クリックすると拡大表示されます。
出典:株式会社メディックス「BtoBマーケティング担当者(SaaS)アンケート調査結果」(調査期間:2024年3月18日 ~ 2024年3月20日 回答数 258名)
THE MODELの導入方法と注意点
- THE MODELを導入する際には、下記のステップを踏むことが推奨されます。
1.現状分析
現状の営業プロセスを詳細に分析し、課題や改善点を明確にする。
2.目標設定
THE MODEL導入によって達成したい目標を設定する。
3.組織設計
各チームの役割と責任を明確に定義し、人員配置を行う。
4.プロセス定義
各プロセスの詳細な流れやKPI(重要業績評価指標)を設定する。
5. ツール導入
必要に応じて、CRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)などのツールを導入する。
6.トレーニング
各チームメンバーに対して、THE MODELに関するトレーニングを実施する。
7. モニタリングと改善
導入後の効果を測定し、継続的な改善を行う。
ただし、THE MODELの導入には、次の注意すべき点もあります。
組織文化の変革
THE MODELは、従来の組織構造や働き方を変える可能性があります。そのため、導入にあたっては、組織文化の変革を促す必要があります。
部門間の連携
各チームが連携してプロセスを進めることが重要です。そのため、部門間のコミュニケーションを円滑にするための施策が必要です。
適切なツール選定
THE MODELの効果を最大化するためには、適切なツールを選定し、活用することが重要です。
THE MODELの導入ステップ
本章では、前の章で触れたTHE MODELの導入ステップについて、もう少し詳しく解説します。
ステップ1:現状分析
まず、自社の営業プロセスを詳細に分析し、現状の課題やボトルネックを明確にすることが重要です。例えば、下記のような項目について確認します。
・現在の営業プロセスは、どのように定義されているか?
・各プロセスにおける担当者は誰か?
・各プロセスにおける目標やKPIは何か?
・顧客情報は、どこでどのように管理されているか?
・部門間の情報共有は、スムーズに行われているか?
これらの項目を分析することで、自社の営業プロセスにおける改善点や課題を明確にし、THE MODEL導入の必要性や導入効果を、具体的に把握することができます。
ステップ2:目標設定
THE MODEL導入によって達成したい目標を設定します。目標設定は、導入プロジェクトの指針となり、導入後の効果測定の基準にもなります。目標設定の例としては、下記が例として挙げられます。
<目標設定例>
・リード獲得数を2倍にする
・商談化率を30%向上させる
・顧客生涯価値(LTV)を20%向上させる
・営業部門の生産性を15%向上させる
これらの目標は、自社のビジネス状況や課題に合わせて、具体的に設定することが重要です。
ステップ3:組織設計
THE MODEL導入における組織設計では、各チームの役割と責任を明確に定義し、人員配置を行います。
マーケティングチーム
見込み客獲得(リードジェネレーション)を担当し、ウェブサイトやコンテンツマーケティング、広告などを活用してリードを獲得します。
インサイドセールスチーム
マーケティングチームから獲得したリードを育成し、商談化(アポイントメント獲得)を目指します。電話やメール、オンライン商談などを活用してリードとのコミュニケーションを行います。
フィールドセールスチーム
インサイドセールスチームから引き継いだ商談をクロージング(成約)に導きます。顧客との対面やオンラインでの商談、提案書の作成などを担当します。
カスタマーサクセスチーム
顧客のオンボーディング(導入支援)やアップセル・クロスセル(追加販売・関連販売)、解約防止などを担当し、顧客満足度向上と顧客生涯価値(LTV)の最大化を目指します。
各チームの人員配置は、自社のビジネス規模や目標に合わせて適切に行う必要があります。
ステップ4:プロセス定義
各プロセスの詳細な流れやKPIを設定します。例えば、マーケティングプロセスでは、リード獲得のためのチャネルやコンテンツの種類、リードナーチャリング(育成)の方法などを定義します。インサイドセールスプロセスでは、リードへのアプローチ方法や商談化の基準などを定義します。
各プロセスにおけるKPIを設定することで、目標達成に向けた進捗状況を把握し、改善点を特定することができます。
ステップ5:ツール導入
THE MODELの導入効果を最大化するためには、適切なツールを選定し、活用することが重要です。例えば、CRM(顧客関係管理)ツールを活用することで、顧客情報の一元管理やプロセス全体の可視化、進捗管理などが可能になります。MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用することで、リードナーチャリングの自動化や効果測定などが可能になります。
ツール選定にあたっては、自社のビジネスニーズや予算に合わせて、最適なものを選ぶことが重要です。
ステップ6:トレーニング
THE MODEL導入にあたっては、各チームメンバーに対して、THE MODELの概念や役割、プロセス、KPIなどに関するトレーニングを実施することが重要です。トレーニングを通じて、メンバーの理解と意識を高め、スムーズな導入と運用を促進することができます。
ステップ7:モニタリングと改善
THE MODEL導入後も、定期的なモニタリングと改善を行うことが重要です。設定したKPIを定期的に確認し、目標達成に向けた進捗状況を把握します。もし、目標達成が難しい場合は、プロセスやツールの改善、人員配置の見直しなどを検討します。
THE MODELは、一度導入すれば終わりではありません。継続的な改善を通じて、より効果的な営業組織を構築していくことが重要です。
ステップ8:組織文化の変革
THE MODELの導入は、単に組織構造や業務プロセスを変えるだけではありません。それは、組織文化の変革をともなう大きな挑戦でもあります。
従来の営業組織では、個人の成果や競争が重視される傾向がありました。しかし、THE MODELでは、チームワークと連携が不可欠です。各チームがそれぞれの役割を理解し、互いに協力することで、初めて効果を発揮します。
そのため、THE MODEL導入にあたっては、組織全体で協力し、共通の目標に向かって進むという意識改革が必要です。経営層は、THE MODELの導入意義や目的を明確に伝え、メンバーの理解と協力を得ることが重要です。
ステップ9:部門間の連携
THE MODELでは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの各チームが連携してプロセスを進めることが重要です。各チームが連携することで、顧客情報をスムーズに共有し、顧客体験を向上させることができます。
部門間の連携を促進するためには、定期的なミーティングや情報共有の場を設けることが有効です。共通の目標やKPIを設定し、協力して目標達成を目指すことが求められます。
ステップ10:適切なツール選定
THE MODELの導入効果を最大化するためには、適切なツールを選定し、活用することが重要です。CRMやMAなどのツールは、顧客情報の一元管理、プロセス全体の可視化、進捗管理、リードナーチャリングの自動化などを可能にし、THE MODELの運用を効率化します。
ツール選定にあたっては、自社のビジネスニーズや予算、既存システムとの連携などを考慮することが重要です。また、ツールの導入だけではなく、適切なトレーニングやサポート体制の整備も不可欠です。
まとめ
THE MODELは、部門間での連携が必須となる現代の営業活動が直面する課題を解決し、効率化と成果の向上を実現するための有効なフレームワークです。しかし、導入にあたっては、組織文化の変革や部門間の連携、適切なツール選定など、多くの課題を乗り越える必要があります。
本記事で紹介したステップやポイントを参考に、自社の状況に合わせてTHE MODELを導入し、継続的な改善を通じて、より効果的な営業組織を構築していくことが、今後のビジネス成功の鍵となるでしょう。
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