「LTVが注目されているのには理由があるの?」
「LTVを伸ばすためにできるマーケティング施策を知りたい」
BtoB企業のマーケティング担当者のなかには、このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
1人、あるいは1社の顧客から生涯を通じてもたらせる利益であるLTVを、重要な事業指標とする企業が増えています。その一方、LTVがマーケティング部門にどのような関係があるのか、どう取り組めば貢献できるのかがわからないBtoBマーケターもいるようです。
LTVは、顧客母数の少ないBtoB企業にとってこそ重視すべき指標です。そしてマーケティング部門も、内容を理解した上で、業務に取り組むことが求められます。
本記事では、LTVが注目されている理由や計算方法、最大化させるためのマーケティング施策まで解説します。
目次
LTVとは
LTVとは、Life Time(一生・生涯)とValue(価値)を略した言葉で、「顧客生涯価値」と訳されます。自社と取引を開始した1人、または1社の顧客から、生涯にわたって得られるトータルの利益を指します。
企業や商品、サービスに対する顧客ロイヤルティが高いほど、LTVは高くなるのが一般的です。LTVは、事業の業績に直結する重要な指標であるため、企業は最大化を目指す取り組みが求められます。
LTVが注目されている理由
近年、LTVが重要な指標として注目されているのには、次の2つの理由があります。
- 新規顧客開拓が困難になりつつある
- サブスクリプションビジネスの急速な普及
順番に解説します。
新規顧客開拓が困難になりつつある
LTVが重要視されるようになった理由の1つは、多くの企業にとって新規顧客開拓が困難になってきていることです。
日本の人口は2008年をピークに減少に転じ、少子高齢化・人口減少が加速しています。人口が減れば当然市場は縮小し、その結果パイの奪い合いが発生するため新規顧客獲得にかかるコストは増大していきます。
そこで多くの企業は、新規顧客の獲得より、既存顧客の維持に目を向けるようになりました。マーケティングにおいては「新規顧客獲得にかかるコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかる」とされているためです。既存顧客と良好な関係を構築できれば、リピート購入だけでなく、アップセル・クロスセルが期待できるようになります。
既存顧客をできるだけ維持してLTVを高めることは、新規顧客の獲得に奔走せずとも、継続的に利益が上がる事業運営を可能にするのです。
サブスクリプションビジネスの急速な普及
LTVが注目されているもう1つの理由は、近年、SaaSをはじめとしたサブスクリプションビジネスが急速に普及していることです。
従来の買い切り型のビジネスモデルでは、顧客が商品やサービスを購入して所有した時点でLTVは最大化しました。そのため既存顧客の維持よりも、新規顧客獲得のほうがはるかに重要なことでした。
一方、サブスクリプション型ビジネスは、顧客と契約した時点のLTVは、顧客獲得にかかったコストを上回ることはありません。サブスクリプション型ビジネスでは、顧客に継続してもらうことにより、初めて企業に利益をもたらすのです。
そのための重要な指標がLTVです。LTVを増やすことを目的とした、カスタマーサクセスという概念・取り組みが注目されているのも、このためです。
カスタマーサクセスについて詳しくは、下記以下の記事をご覧ください。
「カスタマーサクセスとは?重要視されている理由と、KPI設定・取り組む方法を紹介」
LTVの計算方法
一般的にLTVは、次の計算式で求めます。
LTV=顧客の平均購入単価×収益率×購買頻度×継続期間
下記の顧客の例で計算してみましょう。
顧客の平均購入単価:30万円
収益率:50%
購買頻度:1ヵ月に1回(1年に12回)
継続期間:3年
LTV=30万円×50%×12回×3年=540万円
なお、上記の計算式では新規顧客獲得コストと既存顧客維持コストが考慮されていません。収益が支出を上回ることがなければ黒字にはならないため、より現実的なLTVを算出するには次の計算式を用います。
LTV=(顧客の平均購入単価×収益率×購買頻度×継続期間)-(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)
上記と同じ顧客の新規顧客獲得コストが200万円で、既存顧客維持コストが1年あたり40万円とした場合、LTVは次のようになります。
LTV=540万円-(200万円+40万円×3年)=220万円
LTVを伸ばすマーケティング施策の例
LTVを伸ばす方法としては、大きく下記以下の3つがあります。
- 契約期間を伸ばす
- 購買単価を増やす
- 顧客維持コストを減らす
それぞれについて、具体的なマーケティング施策を紹介します。
契約期間を伸ばす
契約期間を伸ばすためには、下記のような施策を打つのが効果的です。
- プロダクトやサービスへの早期定着を目指すオンボーディングに注力する
- 長期契約によるディスカウント(年間契約で20%OFFなど)を提供する
- 解約の兆候がある顧客にダウンセルを提案する
契約期間を伸ばすためには、顧客に「このプロダクトを使い続けたい」と思ってもらえるような動機づけが重要です。その意味でプロダクト導入時の手厚いオンボーディングにより価値を感じてもらったり、長期契約に対するディスカウントでお得感を与えたりするのは効果があります。
ダウンセルはネガティブなイメージがありますが、解約されてしまってLTVが打ち止まるよりは良いはずです。利用状況にあった適切なプランを提案することは、顧客にポジティブな印象を与えるため、顧客ロイヤルティの向上も期待できるでしょう。
購買単価を増やす
顧客の購買単価を増やすことは、LTVの向上にもっとも単純で効果がある施策です。購買単価を増やすには、アップセルやクロスセルを働きかけると良いでしょう。
アップセルとは、現在よりもより収益性の高いサービスへと移行してもらうことを指します。
<アップセルの例>
- ベーシックプランを契約している顧客に上位プランへの切り替えを提案する
- 毎年契約更新がある顧客に、3年契約を提案する
一方クロスセルは、利用を検討している、あるいは現在利用しているサービスとあわせて使うことで、顧客の利便性が高まるものを追加購入してもらう施策です。
<クロスセルの例>
- サーバを契約している顧客に、セキュリティオプションを提案する
- パソコンをリースしている企業に、複合機のセットリースを提案する
いずれにおいても、既存顧客に働きかけるときには、信頼関係が構築されていることが前提です。さらにはその提案が、顧客のメリットにつながるものでなければなりません。
自社都合のみでアップセル・クロスセルを提案した場合、押し売りと感じられてかえってマイナスの印象を与えてしまうので注意が必要です。
アップセル・クロスセルについて詳しくは、下記の記事をご覧ください。
「BtoBのアップセルを成功させるポイントは?アップセルに適したタイミングも解説」
「BtoBのクロスセルを実行するステップと注意点とを合わせて解説」
顧客維持コストを減らす
顧客から収益が上がっても、顧客維持コストが大きいとLTVは減少します。そのため顧客維持コストの削減に努めることも、LTVを向上させるには重要です。
顧客維持コストを減らすには、顧客ロイヤルティを向上させる取り組みが欠かせません。ロイヤルティの高い顧客は、企業やブランド、プロダクトに強い愛着を感じる傾向が高く、簡単には他社に乗り換えることがないためです。それだけではなく、他者に製品やサービスをおすすめするなど、集客に貢献してくれることすらあります。
顧客ロイヤルティを向上させるには、プロダクトの導入前から導入後を通して、良いCX(顧客体験)を提供することが求められます。さらに「この企業の製品だから使いたい」「この素晴らしいサービスをほかの人にも知ってもらいたい」と思ってもらえるよう、ブランドイメージを高める取り組みも行いましょう。
いずれについても、顧客ロイヤルティの向上が自社の収益に大きく影響すると理解した上で、全社的に取り組むことが大切です。
CXについて詳しくは、下記の記事をご覧ください。
「BtoB企業にCXが必要な理由とは?CXの向上に取り組む方法も紹介」
BtoB企業は特にLTVを意識することが重要
LTVの向上は、もはやどの企業にとっても欠かせない取り組みですが、特にBtoB企業は重要指標として意識する必要があります。
BtoBは、BtoCと比較して、もともと市場全体における顧客数が少ないことが特長です。そのため、自社の顧客が解約するということは、競合企業に流れてしまっている可能性が高くなります。
顧客が減り、新規顧客を獲得しようと努力しても、そもそもの母数が少ないためそう簡単にはいきません。さらに新規顧客の獲得には、既存顧客の維持よりも5倍のコストがかかるので、既存顧客の解約が増えると収益は悪化していきます。
BtoB企業において、既存顧客の維持は最優先すべき施策の1つなのです。LTVを指標とし、既存顧客の維持に努めましょう。
まとめ
日本の人口は減少を続け、増加に転じる兆候はみられません。市場が縮小していくなか、既存顧客の維持は、どの企業にとっても最重要課題です。特に顧客の母数が少ないBtoB企業においては、LTVを指標とした上で、既存顧客を維持する努力が必要です。
とはいえ、既存顧客との接点は、カスタマーサポート部門が担当する企業が多いのではないでしょうか。さらにLTVは、マーケティング部門だけでコントロールできるものではないため、実業務のKPI指標とはしていない企業もあるでしょう。
しかし、LTVはCACを含めて算出されるため、マーケティング施策に費やすコストにも大きくかかわります。そのためマーケティング部門でも、その詳細のほか、LTVを最大化させるメリットや施策について知っておくことが大切です。
なお、メディックスは、1998年に企業向けIT製品情報サイト「キーマンズネット」の制作支援を開始して以来、IT系企業を中心に、20年以上400社超えのデジタルマーケティング支援を行ってきました。そのため、実案件を通した豊富な経験とノウハウを、組織的に保有しています。
本記事で紹介したCX向上の取り組みにも活用できるカスタマージャーニーやコンテンツの制作はもちろん、Web広告などの集客施策からマーケティングオートメーション(MA)の導入・運用支援まで、ワンストップで提供可能です。
BtoBマーケティングの改善に課題をお持ちでしたら、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。