
「どの施策から手をつけるべきか」。製造業でマーケティングを任された方から、繰り返し聞かれる質問です。展示会、Web広告、SEO、SNS運用。選択肢は年々増え、何をやるべきか迷ってしまいます。
この記事では、製造業のマーケティング業務に関与した129名への独自調査をもとに、実際どの施策がどれだけ使われているかをデータで解説します。あわせて、予算規模や体制の実態もふまえ、自社に合った優先順位の考え方を整理します。
なお筆者は、メディックスで製造業のBtoBマーケティング支援に携わり、note等でも継続的に発信しています。現場で見てきた視点も交えてお伝えします。(筆者プロフィールはコラム下部に記載)
製造業マーケティングの全体像は、製造業のマーケティングとは? 手法・事例・優先順位を独自調査をもとに解説でまとめています。
※本記事で引用している調査の概要(調査名・対象・期間など)は、記事末尾の「調査概要」に記載しています。
製造業で実際に使われているマーケティング施策
まず押さえておきたいのが、実際どの施策にどれだけの企業が取り組んでいるか、という実態です。
実施率トップは「オフライン展示会」
当社は、製造業のマーケティング業務に関与した129名に調査を行いました。現在実施中の施策として最も多く挙がったのは「展示会・イベント出展(オフライン)」で、52.7%でした。次いでWeb広告47.3%、オンライン展示会38.0%、テレビCM33.3%と続きます(当社「BtoBマーケティング担当者アンケート調査」2026年版、n=129)。
対面で名刺を交わし、実機を見せられる展示会は、今も製造業の営業活動における入り口として機能しています。SaaS業界のようにWebだけで完結する商材とは、事情が異なるわけです。
図① 製造業が実施しているマーケティング施策

出典:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット「【2026年版】BtoBマーケティング担当者アンケート調査」(n=129 ※製造業従事者のみ)
Web施策に絞ると「サイト拡充」が最優先
施策をWeb領域に絞ると、様子が変わります。当社の調査では、実施中のWeb施策として最も多かったのは「Webサイトの拡充」で40.3%でした。次いでSNS広告33.3%、オンライン展示会32.6%、SEO25.6%、動画広告25.6%と続きます(同調査、n=129)。
Webサイトの拡充について、事業に貢献するサイトへ見直す考え方はカタログ型Webサイトからの脱却をテーマにしたセミナーレポートで、SEOの進め方は製造業のSEO対策の必要性と成功のポイントを解説した記事で、それぞれ詳しく扱っています。
一方、AEO・AIO対策に着手している企業は17.8%にとどまりました。多くの企業が、AI検索対策よりも前に、まず土台となる自社サイトの整備を優先している実態がうかがえます。基礎を固めてから次の一手に進む。堅実な順序といえそうです。生成AI時代への対応については、製造業のAI検索対策(LLMO)とは? 顧客の生成AI利用を調査データで解説で詳しく解説しています。
図② 製造業が実施しているWEBマーケティング施策

出典:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット「【2026年版】BtoBマーケティング担当者アンケート調査」(n=129 ※製造業従事者のみ)
なぜ製造業は「展示会」への依存が根強いのか
前章で見た通り、オフライン展示会52.7%、オンライン展示会38.0%と、形式を問わず展示会は製造業マーケティングの中心にあります。Web広告やSNSが普及した今も、なぜここまで存在感を保っているのでしょうか。
理由の1つは、製造業特有の商材の複雑さにあります。工作機械や産業用ロボットのように、構造が複雑で、実際に動く様子を見せなければ価値が伝わりにくい製品が少なくありません。カタログの写真だけでは伝わらない使い勝手や、実機に触れて初めてわかる精度があります。展示会は、そうした情報を一度に伝えられる場です。
もう1つの理由は、購買プロセスへの関わり方です。意思決定に複数の部門が関わる製造業の購買では、展示会に足を運ぶこと自体が「検討を始めた」というシグナルになります。設計担当と調達担当が連れ立って会場を回る、という光景も珍しくありません。オンライン展示会が伸びている背景にも、同じ理屈が働いていると考えられます。移動時間をかけずに、複数部門で情報収集できる手軽さが評価されているのでしょう。
顧客側がどのように情報収集し、購買行動を進めているかは、製造業製品選定者の情報収集源をまとめた調査記事でも取り上げています。
だからといって、展示会だけに頼るのは危険です。検討が長期化する製造業の購買では、展示会で得た接点をその後どう育てるかが問われます。展示会後のフォローをどう設計するかは、次章の優先順位の考え方にもつながります。
施策の優先順位は「即効性」と「資産性」で決める
実施率の高い施策が、そのまま自社にとって最優先とは限りません。優先順位を決めるうえで軸になるのが、「即効性」と「資産性」の2つです。
即効性とは、成果が出るまでの速さです。展示会やリスティング広告は、出展・出稿すればすぐに見込み客と接点を持てます。資産性とは、続けるほど効果が積み上がる性質です。SEOやオウンドメディアは、成果が出るまで時間はかかるものの、一度上位に定着すれば長く集客し続けます。
多くの製造業にとって現実的なのは、即効性の高い展示会や広告で当面の商談を確保しつつ、並行してSEOやオウンドメディアという資産を育てる進め方です。目先の商談と、中長期の集客基盤を、両方同時に手がける発想が求められます。
優先順位を左右する「予算」と「体制」の実態
施策選びの理屈がわかっても、実際に動かせるかどうかは、予算と体制次第です。当社の調査から、この2点の実態を見ていきます。
年間予算は「決まっていない」企業が最多
当社の調査では、年間マーケティング予算について「特に決まっていない」と回答した企業が14.7%で最も多く、次いで「1億円以上」が13.2%でした(同調査、n=129)。残りは50万円未満から5,000万円台まで、幅広く分散しています。
大企業ほど予算規模が大きい一方、明確な予算枠を持たずに都度判断している企業も相応にいます。自社がどちらのタイプかによって、打てる施策の選択肢は大きく変わります。自社の予算感を整理したい方は、予算執行の前にしたいセルフチェックをまとめたnoteの記事⧉も参考にしてください。
図③ 製造業の年間マーケティング予算

出典:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット「【2026年版】BtoBマーケティング担当者アンケート調査」(n=129 ※製造業従事者のみ)
Web予算比率は「25〜75%未満」に集中
マーケティング予算のうちWebにかける割合を見ると、「50〜75%未満」が27.1%、「25%未満」が26.4%と、この2つでほぼ半数を占めます。「75〜100%」まで踏み込む企業はわずか3.1%でした(同調査、n=129)。
展示会やテレビCMといったオフライン施策への支出が大きい製造業らしい配分です。SaaS業界のようにWeb予算を大半に振り切る発想は、まだ主流ではありません。
図④ 製造業のWEBマーケティング予算比率

出典:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット「【2026年版】BtoBマーケティング担当者アンケート調査」(n=129 ※製造業従事者のみ)
施策は「自社で内製」が主流
施策の実施体制では、「自社で企画立案から実行まで行っている」が40.3%で最多でした。次いで「広告代理店やコンサルティング会社を活用し、企画立案から実行まで行っている」が29.5%です(同調査、n=129)。
内製と外部委託がほぼ二分される結果です。専任担当を置けるかどうかが、この選択を分けています。営業とマーケティングが連携した体制づくりの視点は、製造業のCX向上をテーマにしたセミナーレポートでも取り上げています。
図⑤ 製造業のマーケティング施策の実施体制

出典:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット「【2026年版】BtoBマーケティング担当者アンケート調査」(n=129 ※製造業従事者のみ)
外部に委託するなら、何を基準に選ぶか
内製の体制が整わない場合、外部委託が選択肢に入ります。ここで気になるのが、製造業の担当者が委託先に何を求めているかです。
当社の調査では、外注先に求めることとして「BtoBマーケティングの理解や実績」が37.2%で最も多く挙がりました。次いで「成果(KGI・KPI)の最大化」34.1%、「素早い・丁寧なレスポンス」33.3%と続きます(同調査、n=129)。
技術的な専門用語が飛び交い、意思決定に時間がかかる製造業の商談。その独特な進め方を理解している委託先かどうかが、成果を左右する分かれ目になっています。単に施策を代行してもらうのではなく、業界特有の商習慣まで汲み取ってもらえるか。委託先選びでは、この視点を持っておきたいところです。
この「BtoBマーケティングの理解や実績」を重視する声は、裏を返せば、業界を問わない一般的なマーケティング支援会社では、製造業の商談プロセスまで踏み込んだ提案がしづらいという実情の表れでもあります。メディックスは、BtoB企業のマーケティング支援に25年以上取り組み、製造業を含む500社以上の支援実績があります。委託先を選ぶ際の判断材料の1つとして、こうした実績と専門性も参考にしていただければと思います。
まとめ:施策は「実施率」より「自社の予算・体制」で選ぶ
製造業で使われているマーケティング施策の実態と、優先順位の考え方を見てきました。要点を3つに絞って振り返ります。
第一に、実施率が最も高いのは今も展示会です。ただし、Web施策のなかではサイト拡充が先行しており、AI検索対策はまだ2割弱にとどまります。
第二に、優先順位は「即効性」と「資産性」の2軸で考えます。展示会や広告で当面の商談を確保しつつ、SEOやオウンドメディアという資産を並行して育てる進め方が現実的です。
第三に、実際に動かせるかどうかは、予算規模と体制次第です。内製か外部委託かを判断する際は、施策の代行力だけでなく、BtoB・製造業への理解を基準に選ぶ必要があります。
施策選びでよくある失敗のパターンは、製造業マーケティングでよくある失敗のパターンを解説したnoteの記事⧉でも取り上げています。優先順位づけの土台となる需要創出の考え方は、これからの製造業に必要なデマンドジェネレーションをまとめたnoteの記事⧉もあわせてご覧ください。
自社がどの施策に取り組むべきか迷ったら、まずは自社の予算とWeb比率、体制を棚卸ししてみてください。そこから見える現実的な選択肢が、次の一手になるはずです。
調査概要
本記事では、株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニットが実施した次の独自調査のデータを引用しています。
【2026年版】BtoBマーケティング担当者アンケート調査結果
実施主体:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット
調査方法:インターネット調査 調査対象:業種が製造業で、自社の非SaaS商材のマーケティングに関与した方
有効回答数:129名
調査期間:2026年3月19日〜2026年3月21日
※本記事の調査データおよび図表の著作権は株式会社メディックスに帰属します。引用の際は出典の明記をお願いします。
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2015年にメディックスに入社。入社以来、BtoB特化のデジタルマーケティング支援部隊に所属。大手製造業(電機メーカー、鉄鋼業など)をはじめとするBtoB企業を100社以上担当。データセンター事業者にて、マーケティング担当者としての常駐経験あり。BtoB企業のマーケティング、セールス領域において、戦略設計から実行、運用まで一気通貫で対応可。現在はBtoB製造業様のマーケティング支援を行う営業グループの責任者としてマネジメント業務に従事。