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製造業のマーケティングとは? 手法・事例・優先順位を独自調査をもとに解説

Jul 24, 2026 10:06:30 AM

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「良い製品なのに知ってもらえない」「何から始めればいいかわからない」。製造業でマーケティングを任された方から、よく聞く声です。顧客が問い合わせ前に、念入りにWebで情報収集をするようになった現在、従来のやり方だけで戦うのは難しくなりました。

この記事では、製造業マーケティングの基本から、成果を出した企業の事例までを、弊社独自に実施した、製造業の実態調査結果とともに解説します。

なお筆者は、メディックスで製造業のBtoBマーケティング支援に携わり、note等でも継続的に発信しています。現場で見てきた視点も交えてお伝えします。(筆者プロフィールはコラム下部に記載)

※本記事で引用している調査の概要(調査名・対象・期間など)は、記事末尾の「調査概要」に記載しています。

 

製造業のマーケティングとは? 定義と他業界との違い

 

製造業のマーケティングとは何か。その意味を理解するには、まず「マーケティング」そのものの意味をおさえる必要があります。多くの現場で「マーケティング=広告や販促」と捉えられていますが、その理解では製造業の成果にはつながりません。

 

マーケティングの定義は、「売る技術」から「価値の創造」へ

 

参考になるのが、日本マーケティング協会の定義です。同協会は2024年、マーケティングの定義を34年ぶりに刷新しました。新しい定義では、マーケティングを次のように説明しています。

 

 

(マーケティングとは) 顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。

 

出典:公益社団法人日本マーケティング協会「マーケティングの定義」(2024年1月25日制定)

 

注目したいのは、旧定義からの変化です。1990年の定義は「市場創造のための総合的活動」という、どちらかといえば企業側から見た「売れる仕組みづくり」に重心がありました。一方、新定義では、顧客や社会と共に価値を創ること、そして関係性を醸成することへと軸足が移っています。詳しくはマーケティングの新定義と製造業の関係⧉をnoteの記事で解説しています。

この定義の変化は、製造業にとって特に意味を持ちます。

 

なぜこの定義の変化が製造業に効くのか

 

製造業の製品は、構造が複雑で、検討期間も長いという特徴があります。無理に「売り込む」テクニックは、かえって顧客の警戒を招きます。それよりも、顧客が抱える課題を一緒に見つめ、共に解決策を探るなかで信頼を積み上げていくほうが、結果として大きな受注につながります。まさに新定義が示す「価値の共創」と「関係性の醸成」が、製造業の商談の実態と重なります。

だからこそ、これまで「認知を広げるのは広報の仕事」「売るのはマーケティングの仕事」と分けて考えられてきた活動を、一本の線としてつなげ直す視点が必要です。需要を作り出す考え方、いわゆるデマンドジェネレーション(需要創出)も、同じ延長線上にあります。デマンドジェネレーションについては製造業に必要なデマンドジェネレーション⧉をnoteの記事で詳しく述べています。

良い製品を作れば自然に売れる。かつてはそれで通用しました。ただ、性能の近い製品が増え、価格だけで比べられる場面も多くなっています。技術力のある企業ほど、その価値を自ら伝え、顧客との関係を築く必要が出てきました。生き残る製造業と消える製造業を分けるものは何か、という視点は変化の時代の製造業をマーケティング視点で考えた⧉noteの記事にまとめています。

 

BtoCや一般的なBtoBとの違い

 

製造業のマーケティングには、消費財の売り方がそのまま当てはまりません。理由は購買の構造にあります。

まず、意思決定に複数の人が関わります。設計部門が仕様を確認し、調達部門が価格を交渉し、最後は上長が稟議で承認します。担当者一人で意思決定することはありません。
次に、検討期間が長くなります。情報収集から発注まで半年、長ければ一年を超えることもあります。

そして、判断が感情ではなく経済合理性で下されます。性能、コスト、納期、供給の安定性。こうした条件が冷静に並べられ、比較されていきます。

これらの購買プロセスを図にすると、次のようになります。

 

図① 製造業関連製品の購買プロセスと主な情報収集源

画像1_製造業バイヤーの購買プロセス(認知→1次選定→2次選定→最終選定→社内稟議→発注)

 

認知から発注まで、顧客はいくつもの段階を通ります。段階ごとに見ている情報も、比べている相手も変わります。だからこそ、どの段階の顧客に何を届けるのかを分けて考える必要があります。

実際、当社が製造業関連製品の選定に関与した793名に行った調査でも、製品導入時に比較検討する取引先は「2〜3社」が最も多い結果でした。さらに、導入前から発注先の会社を知っていたと答えた人は6割を超えています。検討に入る前から、顧客の中では候補が絞られ始めています。早い段階での認知獲得が、いかに大切かがわかります。製造業製品選定者の情報収集源をまとめた調査記事では、過去に実施した調査結果も紹介しています。

 

同じ製造業でも、BtoBとBtoCで進め方は変わる

 

ひとくちに製造業といっても、売る相手によってマーケティングの重心は変わります。
工作機械や電子部品のように企業へ売る場合は、先ほどの長い購買プロセスを前提に組み立てます。技術資料やホワイトペーパーで検討を後押しし、商談へつなげる流れが中心です。
一方、食品や日用品のように消費者へ売る製造業では、ブランドの認知や、店頭で手に取ってもらう工夫が重視されます。SNSやテレビCMなど、多くの人へ一度に届く手法の比重が高まります。

自社がどちらに近いのか。見極めることが、このあと紹介する施策選びの出発点になります。

 

なぜ今、製造業にマーケティングが必要なのか

 

製造業のマーケティングが語られる機会は、ここ数年で急に増えました。かつては営業のルート訪問と展示会があれば受注が回っていた会社でも、その前提が崩れ始めています。背景には、大きく3つの変化があります。

 

変化1:顧客は営業に会う前に、候補を絞り終えている

 

最も大きな変化は、顧客の情報収集の仕方です。以前は、製品を探すときにまず営業担当へ声をかけ、カタログを取り寄せていました。現在は違います。検索し、Webメディアを読み、比較サイトを見て、候補をある程度絞ってから問い合わせる。営業が顧客と接触した時点では、すでに勝負の大半がついています。

当社が製造業関連製品の選定に関与した793名に行った調査でも、認知のきっかけとなる情報収集源は検索エンジン(自然検索)が最も多く、次いでWebメディアが挙がりました。(当社「製造業製品選定者アンケート調査」2026年版、n=793。認知のきっかけフェーズで自然検索36.8%)営業訪問よりも先に、顧客はオンラインで情報収集を始めています。つまり、Web上で見つけてもらえない会社は、そもそも検討の土俵にすら乗れないことを意味します。

 

図② 製造業関連製品選定時の認知のきっかけフェーズにおける情報収集源

画像2_認知のきっかけ情報収集源-1

出典:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット「【2026年版】BtoBマーケティング担当者アンケート調査」(n=129 ※製造業従事者のみ)

 

購買行動の変化については、顧客の情報収集の実態を掘り下げた製造業のデジタルマーケティングの課題を解説した記事でも詳しく触れています。

 

変化2:製品の差別化が難しくなり、価格競争に陥りやすい

 

2つ目は、市場そのものの変化です。技術が成熟し、性能の近い製品が各社から出るようになりました。特に海外メーカーの台頭が顕著です。カタログ上のスペックだけでは差がつきにくくなり、結果として価格でしか比べてもらえません。値下げ競争に巻き込まれ、利益が削られていく。多くの製造業が厳しい局面に立たされています。

価格競争から抜け出すには、製品のスペックとは別の軸で「選ばれる理由」をつくる必要があります。自社の技術が顧客のどんな課題を解決するのか、導入後にどんな変化が生まれるのか。そうした価値を言葉にして伝える活動こそがマーケティングです。価格以外の土俵で勝つための考え方は、スペック競争を抜け出すソートリーダーシップの思想⧉をnoteの記事で論じています。

 

変化3:人手不足で、営業を効率化せざるを得ない

 

3つ目は、働き手の問題です。製造業でも営業人材の確保は年々難しくなっています。限られた人数で成果を出すには、確度の低い見込み客まで一件ずつ訪問する従来のやり方には限界があります。

そこで、興味の度合いに応じて見込み客を育て、確度が高まった相手に営業が集中する仕組みが求められます。Webで見込み客を集め、メールやコンテンツで関心を育て、機が熟したところで商談につなぐ。一連の流れをつくることが、少人数でも成果を出す鍵になります。マーケティングと営業をどう連携させるかは、この記事の後半で改めて取り上げます。

こうした変化は、特定の業種だけの話ではありません。当社が、製造業のマーケティング業務に関与した人129名にした調査では、製造業のマーケティング担当者が抱える最大の課題は「費用対効果が見えづらい」ことでした(当社「BtoBマーケティング担当者アンケート調査」2026年版、n=129、48.1%)。裏を返せば、多くの企業がマーケティングの必要性を感じながらも、手探りで進めている段階にあるということです。次章では、課題の中身をさらに具体的に見ていきます。

 

図③ 製造業のマーケティング担当者が抱える課題

画像3_製造業マーケターの課題-1

出典:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット「【2026年版】BtoBマーケティング担当者アンケート調査」(n=129 ※製造業従事者のみ)

製造業のマーケティングが抱える主な課題

 

製造業でマーケティングに取り組もうとすると、他業界にはない壁にぶつかります。弊社が実施した製造業のマーケティング業務に関与した人129名への調査でも、多くの企業が共通の悩みを抱えていました。ここでは代表的な3つの課題を取り上げます。

 

課題1:ノウハウと人材が足りない

 

まず挙がるのが、社内にマーケティングの知見を持つ人がいないという問題です。営業や技術と兼任で担当しているケースも多く、専任で戦略を練る体制が整っていません。何から手をつけるべきか、判断する基準そのものが不足しているのです。
失敗を避けるうえで押さえておきたい典型的なつまずき方は、製造業マーケティングでよくある失敗のパターン⧉をnoteの記事にまとめています。

 

課題2:「良いものを作れば売れる」という文化が根強い

 

2つ目は、社内の意識の問題です。技術力に自信のある会社ほど、「良い製品を作れば、いずれ評価される」という考えが根強く残っています。その結果、価値を伝える活動への投資が後回しになり、社内でマーケティングの必要性を理解してもらうこと自体に苦労します。担当者が孤軍奮闘する構図が生まれがちです。

 

課題3:リードは獲得できても、商談につながらない

 

3つ目は、施策を始めた企業がぶつかる壁です。展示会やWebで見込み客(リード)は集まるものの、それが商談に発展しない。当社の調査では、「量から質への転換」でつまずいているケースが多いことがわかりました。

具体的には、弊社が実施した製造業のマーケティング業務に関与した人129名への調査では、目標としたリード獲得数を達成できた企業が半数を超える一方で、商談化率の目標を達成できた企業はそれを大きく下回りました。(当社「BtoBマーケティング担当者アンケート調査」2026年版、n=129。マーケティング経由の総リード獲得数の達成率55.3%に対し、マーケティング経由の有効商談化数・案件化数の達成率36.7%)リードを獲得することはできています。しかし、その先の「商談につなげる仕組み」が追いついていない企業が多いのです。

図④ 各KPIの達成状況

画像4_マーケティングKPIの達成率-1

出典:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット「【2026年版】BtoBマーケティング担当者アンケート調査」(n=129 ※製造業従事者のみ)

 

ここで挙げた3つは、あくまで代表的な課題です。自社の状況に近い悩みや、より詳しい対処法については、課題ごとに深掘りした、製造業のマーケティングが抱える課題の詳しい解説をご覧ください。次章では、こうした課題を乗り越えるために「どの施策から手をつけるべきか」を整理していきます。

 

製造業のマーケティング手法と「何から始めるか」


製造業で使えるマーケティング手法は、決して少なくありません。むしろ選択肢が多すぎて、どれに手をつけるか迷うのが実情です。この章では、まず主要な手法を一通り整理し、そのうえで「限られた予算と人員で、まず何から始めるべきか」という優先順位の考え方を示します。

 

製造業で使われる主なマーケティング手法


代表的な手法を挙げると、次のようになります。

SEO・オウンドメディアは、検索から見込み客を集める施策です。技術課題に関する記事を用意し、検索経由での接点をつくります。ホワイトペーパーは、製品の選び方や技術ノウハウをまとめた資料で、ダウンロードと引き換えに見込み客の情報を得られます。展示会は、対面で名刺を獲得できる製造業の定番施策です。近年はここにデジタルのフォローを組み合わせる形が増えています。

このほかにも、メールマガジンによる継続的な情報提供、リスティング広告での顕在層の獲得、YouTubeなどの動画コンテンツ、そして、製造業専門のWebメディアの活用があります。
実際にどの手法が使われているか。当社のマーケティング担当者調査では、実施している施策の上位はオフライン展示会と、Web広告、オンライン展示会、テレビCMでした(当社「BtoBマーケティング担当者アンケート調査」2026年版、n=129。オフライン展示会52.7%、Web広告47.3%、オンライン展示会38.0%、テレビCM 33.3%)。製造業のマーケティングは、すでに複数の手法を組み合わせて進めるのが当たり前になっています。

各手法の具体的な進め方のうち、SEOについては、製造業のSEO対策の必要性と成功のポイントを解説した記事で、事業に貢献するWebサイトのつくり方については、カタログ型サイトから脱却するWebサイト戦略のセミナーレポートで、それぞれ詳しく扱っています。

 

では、何から始めるべきか

 

手法が多いぶん、すべてに一度に取り組むのは現実的ではありません。優先順位をつける必要があります。判断の軸になるのが、「即効性」と「資産性」の2つです。

即効性とは、成果が出るまでの速さです。展示会やリスティング広告は、出せばすぐに見込み客と接点を持てます。資産性とは、続けるほど効果が積み上がる性質です。SEOやオウンドメディアは成果まで時間がかかりますが、一度上位を取れば長く集客し続けます。

即効性と資産性の2軸で整理すると、自社が今どちらを優先すべきかが見えてきます。すぐに商談がほしいなら即効性の高い施策から、中長期で安定した集客基盤をつくりたいなら資産性の高い施策から着手します。多くの製造業にとって現実的なのは、即効性のある展示会や広告で当面の商談を確保しつつ、並行してSEO・オウンドメディアという資産を育てる進め方です。

なかでも検索エンジンの対策は外せません。当社の製品選定者調査では、顧客が製品を探し始める認知のきっかけの段階で、検索エンジン(自然検索)が情報源のなかで最も多く利用されていました(当社「製造業製品選定者アンケート調査」2026年版、n=793。認知のきっかけフェーズで自然検索36.8%)。顧客が最初に動くのは検索からです。だからこそSEOは、後回しにせず早く着手したい施策なのです。

予算をどう配分するかで迷ったときの考え方は、予算執行の前にしたいセルフチェック⧉をnoteの記事で整理しています。

自社に最適な施策の組み合わせや、予算規模別の優先順位の付け方は、製造業のマーケティング手法と優先順位の詳しい解説記事で、さらに掘り下げていく予定です。次章では、この数年で情報収集の前提を大きく変えつつある「AIの影響」を取り上げます。

 

 

生成AI・AI Overviews時代の製造業マーケティング

 

ここ1〜2年で、顧客の情報収集の仕方がまた大きく変わりました。生成AIの登場です。生成AIの普及は、これまで有効とされてきた施策の前提を揺るがし始めています。製造業のマーケティングを考えるうえで、避けて通れないテーマになりました。

 

顧客はもう「検索」だけをしていない


以前は、顧客が情報を探す起点は検索エンジンでした。現在は、ChatGPTをはじめとする生成AIに直接たずねる人が増えています。当社が製造業関連製品の選定に関与した793名に行った調査でも、製品選定にあたって生成AIを利用する人が、認知のきっかけから最終選定まで、あらゆる段階で見られました。用途としては「製品の比較表の作成」「評判・口コミの要約」「製品のリストアップ」が上位に挙がっています。(当社「製造業製品選定者アンケート調査」2026年版、n=793。認知のきっかけフェーズで比較表の作成43.2%、評判・口コミの要約43.2%、製品のリストアップ38.4%)

検索結果の上位に表示されるだけでなく、生成AIの回答のなかで「自社が引用される・言及される」ことが、新しい接点として重要になってきました。

図⑤ 製造業製品選定者の認知のきっかけにおける生成AIの活用方法

画像5_認知のきっかけフェーズにおける生成AIの活用方法-1

出典:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット「【2026年版】製造業製品選定者アンケート調査結果」(n=793)

 

このAI検索に取り上げられることについては、「製造業のAI検索対策(LLMO)とは? 顧客の生成AI利用を調査データで解説」という記事で詳しく解説しています。

 

AI Overviewsが「クリックされない検索」を生んでいる

 

もう一つの変化が、GoogleのAI Overviews(AIによる検索結果の要約表示)です。検索するとページの最上部にAIの回答が表示され、ユーザーはリンクをクリックせずとも、欲しかった回答が得られます。これまでSEOで上位を取れば流入が見込めた構図が、崩れ始めています。

AI Overviewsが広がる環境では、「検索エンジン向けの最適化(SEO)」に加えて、「AIの回答に選ばれるための最適化」という新しい視点が必要です。AIO(AI Optimization)やLLMO(大規模言語モデル最適化)と呼ばれる領域です。実際、AI検索への対策にすでに着手している製造業企業も出始めています(当社「BtoBマーケティング担当者アンケート調査」2026年版、n=129。AEO・AIO対策に取り組んでいる17.8%)。まだ2割弱ですが、逆に言えば、早く動けば競合に先んじられる領域だということです。

 

製造業がいま準備すべきこと

 

では、具体的に何をすればよいのか。基本の方向性は、これまでのコンテンツづくりと変わりません。顧客の疑問に正確に答え、一次情報や独自データを示し、専門性と信頼性を明確にする。こうしたコンテンツは、検索エンジンにもAIにも評価されやすくなります。この記事が独自調査データを多用しているのも、同じ考え方に基づいています。

AI時代にAIから「指名」されるために、BtoB企業が取り組むべきことの全体像は、AIに指名されるBtoB企業のLLMO対策⧉をnoteの記事で詳しく定義しています。

AIO・LLMOの具体的な進め方や、製造業でのコンテンツ設計の実践手順は、AI時代の製造業マーケティングの対応策の詳しい解説記事で掘り下げています。次章では、こうした施策で得た成果を、実際の企業がどう実現したのか、成功事例を見ていきます。

 

製造業のマーケティング成功事例

 

ここまで施策の考え方を見てきましたが、実際に成果を出した企業は何をしたのか。当社が支援した製造業のなかから、5つの事例を紹介します。いずれも課題も規模も異なりますが、共通するのは「自社の状況に合った打ち手を選び、着実に実行した」点です。


事例1:株式会社神戸製鋼所 — MA活用で新規用途を開拓


大手鉄鋼メーカーの神戸製鋼所は、新規の用途開拓にデジタルマーケティングを取り入れました。マーケティングオートメーション(MA)を活用して見込み客を育て、コンテンツで自社技術の価値を伝える取り組みにより、目標を上回る有効リードの獲得につなげています。取り組みはマーケティング専門メディアのMarkeZineにも掲載されています。詳細は、株式会社神戸製鋼所のマーケティング支援事例⧉で紹介しています。


事例2:イシグロ株式会社 — BtoB-ECで売上5倍


配管・管材の専門商社であるイシグロは、BtoB向けのECサイトを開設したものの、当初は売上が伸び悩んでいました。そこで「あるべき姿」から逆算してサイトを設計し直し、広告運用とあわせて改善を重ねた結果、3年で売上を5倍に伸ばしています。ECという明確な成果指標を持つ事例です。詳しくは、イシグロ株式会社のBtoB-EC支援事例をご覧ください。


事例3:AGC株式会社 — データ活用の基盤づくりと内製化


ガラス・化学品大手のAGCは、複数のWebサイトのデータをGoogle Analytics4だけでは十分に分析できないという課題を抱えていました。そこでBigQueryを活用したレポーティング環境を構築し、顧客理解の解像度を高める取り組みを進めています。特徴的なのは、外部に任せきりにせず、自社でデータを扱えるようになるための技術習得を並行して進めた点です。マーケティングの基盤となる「データを活かせる組織づくり」の事例といえます。詳しくは、AGC株式会社のデータ活用・環境構築の事例⧉で紹介しています。


事例4:茨城県産業技術イノベーションセンター — セミナーを通じた啓発


茨城県産業技術イノベーションセンターは、県内の中小製造業を支援する公的機関です。同センターは、企業の新規事業づくりを後押しするセミナーを月1回のペースで開催しており、そのテーマの一つに「BtoB製造業のデジタルマーケティング」を選びました。単にマーケティングツールの使い方ではなく、「なぜデジタルマーケティングが必要なのか」という考え方から丁寧に伝えたいという要望に応え、メディックスが講師として登壇しました。客観的なデータを根拠に必要性を説く構成が評価され、参加者アンケートでは全員が「満足」と回答しました。支援機関と専門会社が連携し、地域の製造業に啓発を広げた事例です。詳しくは、茨城県産業技術イノベーションセンターの登壇事例をご覧ください。


事例5:トビー・テクノロジー株式会社 — リスティング広告で問い合わせ145%


アイトラッキング(視線計測)技術で世界的なシェアを持つトビー・テクノロジー株式会社は、展示会やDMに加え、デジタルでのリード獲得の比率を高めることを課題としていました。日々変化する検索エンジンへの対応を専門家に任せ、リスティング広告を見直した結果、問い合わせ数が前年比145%に増加しました。従来はリーチできなかった潜在層からの問い合わせも獲得できるようになりました。当初の予算を超えて新しいキーワードに挑戦したことが、成果につながっています。広告運用で確かな成果を出した事例です。詳しくは、トビー・テクノロジー株式会社の広告運用事例をご覧ください。

これら5社に共通するのは、流行りの施策に飛びつくのではなく、自社の課題を見極めたうえで打ち手を選んでいる点です。テーマ別の取り組みは、用途開発の方法と成功事例を解説した記事や、製造業のマーケティング担当者が集うお悩み相談会のレポートでも紹介しています。より多くの事例や、自社に近い業種・課題の事例は、製造業のマーケティング成功事例をまとめた記事でご覧いただけます。

次章では、こうした成果を測り、次の一手につなげるための「KPI設計」の考え方を見ていきます。

 

製造業のマーケティングを成果につなげるKPI設計

 

施策を実行したら、次はその成果をどう測るかです。ここを曖昧にすると、「やってはいるが、うまくいっているのかわからない」という、あの費用対効果の見えなさに逆戻りします。最後に、成果を測り、次の一手につなげるためのKPI設計を見ていきます。


製造業のKGIは「売上」より「利益」が選ばれている


まず、最終的なゴール(KGI)をどこに置くか。当社のマーケティング担当者調査では、KGIとして最も多く挙がったのは「利益額・利益率の向上」でした(当社「BtoBマーケティング担当者アンケート調査」2026年版、n=129。利益額・利益率の向上24.0%、マーケティング経由の売上金額18.6%)。売上そのものより、利益を重視する企業が多いのです。

背景には、価格競争があります。値引きで売上を積んでも利益が残りません。だからこそ、利益にこだわるKGI設定が選ばれていると考えられます。マーケティングを「コスト」ではなく「利益を生む投資」として社内で位置づけるうえでも、利益重視の視点は重要です。


KPIは「リード数」より「有効商談数」を見る


次に、KGIに至る中間指標(KPI)です。ここでも調査結果は明確でした。最も重視されているKPIは「マーケティング経由の有効商談数化数・案件化数(SQL)」で、マーケティング経由の総リード獲得数を上回っています(当社「BtoBマーケティング担当者アンケート調査」2026年版、n=129。マーケティング経由の有効商談数化数・案件化数(SQL)46.5%、マーケティング経由の総リード獲得数36.4%)。

有効商談数の重視は、前半で紹介したよくある課題の「リードは獲得できても商談につながらない」と表裏一体です。リードの数だけを追っても、質が伴わなければ売上にはつながりません。だから、営業が実際に商談できる有効なリードの数を指標に据える企業が増えています。KPIを「量」から「質」へ移すこと。質への転換が成果につなげる第一歩です。

 

図⑥ 製造業マーケティングのKGI・KPI階層

画像6_KPIとKGI-1

 

次の一手は、部門をまたいだデータ連携(RevOps)

 

では、リードの「質」を高め、商談につなげるには何が要るのか。鍵になるのが、マーケティングと営業のあいだにあるデータの分断を解消することです。マーケが獲得したリードの情報と、営業の商談の進捗が別々に管理されていると、どのリードが本当に商談につながったのかが見えません。
データの分断をなくし、部門をまたいで収益プロセス全体を最適化する考え方を、RevOps(レブオプス=レベニューオペレーション)と呼びます。当社の調査でも、この領域を外部の力を借りて整えたいというニーズが高まっていました(当社「BtoBマーケティング担当者アンケート調査」2026年版、n=129。2026年度に外部委託したい領域として「データ連携基盤の整備」が21.7%)。まだ取り組んでいる企業は多くありませんが、だからこそ、ここに早く着手できるかどうかが、将来の差を生みます。

営業とマーケティングの連携をどう設計するかは、営業改革を含む製造業CX向上セミナーのレポートで具体的な事例とともに紹介しています。

KPIの立て方や、RevOpsを含めた収益プロセスの整え方は、製造業マーケター129名の実態を掘り下げた記事でさらに深く扱っていく予定です。市況の変化がマーケティングに与える影響という広い視点は、ナフサ不足と製造業マーケティングを論じたnoteの記事⧉も参考になります。

 

まとめ:製造業のマーケティングは「何から始めるか」で決まる

 

製造業のマーケティングについて、基本から施策、事例、KPIまで見てきました。最後に、要点を3つに絞って振り返ります。

第一に、製造業の顧客は営業に会う前に、検索やWebで候補を絞り終えています。だからこそ、Web上で見つけてもらう仕組みが欠かせません。

第二に、施策は数が多いぶん、優先順位が重要です。即効性のある展示会や広告で当面の商談を確保しながら、SEO・オウンドメディアという長く効く資産を並行して育てる。両者の併用が現実的な進め方です。

第三に、成果は「リードの数」ではなく「商談の質」で測ります。有効商談数をKPIに据え、マーケと営業のデータを連携させることが、費用対効果の見えなさから抜け出す鍵になります。

そのうえで、最初の一歩として何をすべきか。もし迷うなら、まずは自社の顧客がどの段階で何を見ているかを把握することから始めてください。顧客の情報収集の実態がわかれば、どの施策に投資すべきかは自ずと見えてきます。本記事で紹介した調査データは、その出発点になるはずです。

調査概要


本記事では、株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニットが実施した以下の2つの独自調査のデータを引用しています。

【2026年版】製造業製品選定者アンケート調査結果
実施主体:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット
調査方法:インターネット調査
調査対象:直近1年以内に製造業製品の導入に関与した方
有効回答数:793名
調査期間:2026年3月19日〜2026年3月21日


【2026年版】BtoBマーケティング担当者アンケート調査結果
実施主体:株式会社メディックス ビジネスマーケティングユニット
調査方法:インターネット調査
調査対象:業種が製造業で、自社の非SaaS商材のマーケティングに関与した方
有効回答数:129名
調査期間:2026年3月19日〜2026年3月21日

※本記事の調査データおよび図表の著作権は株式会社メディックスに帰属します。引用の際は出典の明記をお願いします。


▼製造業のマーケティングについてご相談したい方へ
「何から始めるべきか、自社の状況に合わせて相談したい」という方は、お気軽にお問い合わせください。過去25年以上、500社以上のBtoB企業を支援してきた知見をもとに、貴社の課題に合わせたご提案をいたします。

 

 

この記事の著者プロフィール

 

大内田プロフィール画像正方形

大内田 将輝(おおうちだ まさき)


株式会社メディックス
ビジネスマーケティングユニット 3G
製造業支援グループ マネジャー

2015年にメディックスに入社。入社以来、BtoB特化のデジタルマーケティング支援部隊に所属。大手製造業(電機メーカー、鉄鋼業など)をはじめとするBtoB企業を100社以上担当。データセンター事業者にて、マーケティング担当者としての常駐経験あり。BtoB企業のマーケティング、セールス領域において、戦略設計から実行、運用まで一気通貫で対応可。現在はBtoB製造業様のマーケティング支援を行う営業グループの責任者としてマネジメント業務に従事。


●SNS

X:大内田将輝|BtoB・製造業マーケティング⧉
note:大内田将輝|BtoB・製造業マーケティング⧉


●出演したコンテンツ※一部

ビジネスメディアを深掘る!広告価値を、メディアと広告代理店が本音で語る〜Vol.09『日刊工業新聞社』〜⧉

【プラットフォーマーの戦略】IBM+パートナーで作り出す「共創DXのかたち」⧉

OpenWorkリクルーティングの見込み顧客を2倍に!ビジネスに貢献するBtoBマーケティングの極意⧉

目標を上回る有効リード獲得!神戸製鋼所の挑戦に学ぶ、製造業がデジタルマーケで用途開発&成果を出す秘訣⧉


●登壇したセミナー※一部

価格競争から脱却する「ソートリーダーシップ」戦略〜製造業の新しいデジタルマーケティングと動画活用〜
未来を切り開くBtoB製造業のデジタルマーケティング戦略⧉
デジタルを武器に会社を強くする。製造業のためのマーケティングDXの戦略と実践
製造業向け 事業に貢献するWebサイトとは?~カタログ型Webサイトからの脱却!~


●執筆した他の記事※一部

製造業のAI検索対策(LLMO)とは? 顧客の生成AI利用を調査データで解説
製造業マーケティングの教科書シリーズ⧉
PR・広報とマーケティングを「つなげる」ことで、製造業はもっと強くなる。⧉
スペック競争を抜け出す切り札。製造業に必要な「ソートリーダーシップ(独自路線)」の思想⧉
これからの製造業に必要な「デマンドジェネレーション(需要創出)」⧉
LLMO対策の答え。AIに「指名」されるBtoB企業が、取り組むべき「AI時代のBtoBマーケティング」を定義する。⧉

技術の事業化と『用途開発』⧉

 

Tag: 製造業 BtoBマーケティング


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メディックスBtoBマーケティング編集部

デジタルマーケティングの基本的な考え方や最新情報、実践的なノウハウを探している、BtoBマーケティング担当者向けに、日々のマーケティング業務のプラスになるお役立ち情報を厳選して発信しています。

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