「BtoBに、マーケティングファネルを活用してみたい」
「マーケティングファネルは古いと聞いたけれど、実際はどうなのか?気になる」
BtoBのマーケティング担当者で、このように考えて悩んでいる方がいるようです。
購買プロセスを表すマーケティングファネルは、顧客に適切なアプローチを行うために活用されるフレームワークで、BtoBにおいても有効です。マーケティングファネルが、どのようなものかを理解して、自社で活用してみましょう。
本記事では、マーケティングファネルの概要や、BtoBにおいて重要とされる理由、メリット・デメリットと、各フェーズにおける具体的な施策・コンテンツまで紹介します。
目次
マーケティングファネルとは
マーケティングファネルとは、見込み客が商品やサービスを認知してから購買に至るまでのプロセスを図に表したもの。また、それを活用するフレームワークを指します。
BtoB商材のマーケティングファネルでは、「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購買」の4つのプロセスで表されるのが一般的です。詳しくは、このあとの「マーケティングファネルの種類」で説明します。
また、マーケティングファネルは、認知から購買に向かうに従い、見込み客の母数が減っていく様子が、漏斗(ろうと=ファネル)のような形になることから、このように呼ばれています。
カスタマージャーニーマップとの違い
購買プロセスを図示するという点では、カスタマージャーニーマップを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
マーケティングファネルが、見込み客の購買プロセスの推移のみに焦点をあてているのに対し、カスタマージャーニーマップは、顧客の「行動」や「思考・感情」も含めた「カスタマー・エクスペリエンス(顧客経験価値)」に注目し、顧客の旅(ジャーニー)の道筋にみたて、可視化している点が異なります。
見込み客の購買プロセスを俯瞰的に把握して、課題を抽出するなら、マーケティングファネル。顧客とのタッチポイント(顧客接点)を整理し、各フェーズにおいて、顧客に対してどのような施策を打つか、を検討するなら、カスタマージャーニーマップ。といったように、目的に応じて使い分けるといいでしょう。
もう1つ、よく似た用語としては「パイプライン」もあります。パイプラインは、営業担当者の視点で営業プロセスを図示している点が、マーケティングファネルと異なります。
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BtoBで、マーケティングファネルが重要な理由
従来のBtoBにおける購買プロセスは、取引先の営業から商品やサービスの情報を直接提供してもらい、検討した上で購買に至る。というのが一般的でした。営業が訪問し、直接顧客の現状を把握しながら、必要な情報を提供することが可能だったのです。しかし、現在ではBtoCと同様に、情報収集はオンラインで行うのが一般的になりました。
BtoBでは、購入する商品やサービスが高額になることが多く、そして、意思決定までに多くの関係者が関わるなど、BtoCよりも検討期間が長くなる傾向にあります。オンラインでの情報収集が一般的になったことにより、この長い検討期間の大半を「顧客による調査と評価」が占めるようになったのです。
それと同時に、営業と顧客との直接の接触が減った結果、顧客が購買プロセスのどの段階にいるのかが、見えにくくなりました。しかし、各段階において、顧客が必要としている情報は異なります。
「認知」の段階にいる顧客には、「興味・関心」を持ってもらえるような情報を提供し、「比較・検討」の段階にいるなら、他社サービスと比較するための情報を提供しなければ、次のステップに進んでもらえません。適切な段階で、適切なアプローチを行うためには、マーケティングファネルで、自社のサービスに対する顧客の購買プロセスをきちんと把握し、顧客が今、どの段階にいるのかを見極めることが重要になります。
コロナ禍により、営業と顧客の接触の減少が加速していることを考えると、マーケティングファネルは、BtoBにおいて欠かせないものとなっていくでしょう。
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マーケティングファネルは古い?
一方で、「マーケティングファネルは、古いのでは?」という考えもあるようです。その理由としては、情報収集源の多様化が挙げられます。
インターネットが普及し、商品やサービスを購入する際、検索エンジンやSNS、レビュー、比較サイトで情報収集するのは、もはやあたり前になりました。消費者と企業のコミュニケーションの取り方が変化し、顧客は様々な情報をもとに、購入に至るまでの道のりを行きつ戻りつし、時には情報を取捨選択するなかで、まったく別の道に外れて戻ってこなくなるようなことも珍しくなくなりました。一直線で購買まで進むことは、少なくなってきたのです。
その結果、購買まで一直線に向かう従来のマーケティングファネルでは、現在の多様化した購買プロセスをとらえることは困難であるとの見解から、「古い」といわれるようになったと考えられます。
ただし、BtoBにおいては、マーケティングファネルはまだ有効とされています。それは、BtoBではビジネス上、必要なものとして商品やサービスを検討するため、大きく道を外れることがなく、検討から購買まで一直線に進む傾向が依然としてあるからです。
そのため、BtoB企業が購買プロセスを俯瞰的に分析する際には、マーケティングファネルは、まだ十分に有効な手法と考えられます。
マーケティングファネルのメリット・デメリット
ここまで、マーケティングファネルがBtoBにおいて有効であるとお伝えしてきましたが、活用するメリット・デメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
マーケティングファネルのメリット
BtoBでマーケティングファネルを活用すると、自社の顧客が、どのようなプロセスを踏んで購買に至るのか?を可視化した上で、課題抽出や改善がしやすいことが、メリットとして挙げられます。
例えば、「認知」の度合いは高くても、なかなか「興味・関心」というフェーズに至る割合が少ないのであれば、興味を抱いてもらうための施策が弱いのでは?と考えられます。また、「比較・検討」フェーズから「購買」に進む段階で離脱する見込み客が多いなら、競合他社に流れている可能性を考え、対応が必要です。
このように、マーケティングファネルの、どの段階で見込み客がつまずいているのかがわかれば、適切に対処できるようになります。
マーケティングファネルのデメリット
マーケティングファネルは、必ずしもすべての購買プロセスがあてはまるわけではないことが、デメリットといえます。マーケティングファネルは、見込み客が認知から購買まで、ステップバイステップで一直線に進むことが前提とされています。
BtoBにおいては、まだその傾向が強いことは確かですが、自社のビジネスモデルが該当するとは限りません。コンサル型なのか、SaaS型なのか、買い切り型なのか、によっても異なりますし、コロナ禍で、展示会や郵送DM、テレアポといったオフライン施策が困難になったなどの事情によっても、顧客の購買プロセスは変化します。
自社の事情を踏まえながらオリジナルのマーケティングファネルを作成し、戦略を練るようにしましょう。
マーケティングファネルの種類
マーケティングファネルには、「パーチェスファネル」「インフルエンスファネル」「ダブルファネル」の3種類があります。それぞれどのようなものか?紹介します。
パーチェスファネル
認知から購買に至るまでに、見込み客の母数が減っていくことで、逆三角形になるものが「パーチェスファネル」です。
パーチェス(Purchase)は「購買」という意味を持つため、「購買ファネル」とも呼ばれます。マーケティングにおいてファネルというときには、「パーチェスファネル」を指すのが一般的です。
パーチェスファネルに密接に関係している概念として、消費者行動モデル「AIDMA(アイドマ)」」があります。
AIDMAとは、
・A(Attention):認知
・I(Interest):興味・関心
・D(Desire):欲求
・M(Memory):記憶
・A(Action):行動
の頭文字をとったものです。
これらのプロセスに対して見込み客の数をあてはめていくと、プロセスが進むほどに絞り込まれて減っていきます。それを図示したのがパーチェスファネルです。つまり、パーチェスファネルは、AIDMAにおける心理的プロセスをベースにしているということです。
インフルエンスファネル
インフルエンスファネルとは、購買後における「継続」「紹介」「発信」の3段階のプロセスを図にしたもので、三角形になることが特長です。
インフルエンス(Influence)が「影響」を意味することからわかるように、購入後の消費者が拡散する影響までを見据えた、マーケティング活動を検討するときに活用します。
インフルエンスファネルのベースとなっているのは、消費者行動モデル「AISAS(アイサス)」における心理的プロセスです。
AISASとは、
・A(Attention):認知
・I(Interest):興味・関心
・S(Search):検索
・A(Action):行動
・S(Share):共有
の頭文字をとったものです。
インターネットの普及によって、購入後に行う「Share(共有)」が加わったことが特長です。この考え方にもとづき、購入後の行動に注目して図示したのがインフルエンスファネルです。
ダブルファネル
パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたものが「ダブルファネル」で、砂時計のような形になります。
「認知から購買まで」「購買から良い口コミを獲得するまで」を切り離さずにセットで検討することで、マーケティングの成果を最大化したいと考えるときに活用するファネルです。
各フェーズの具体的な施策・コンテンツ
前項では、マーケティングファネルの種類とフェーズについて解説しました。実際にマーケティングファネルを活用していくには、フェーズごとに必要な施策・コンテンツを理解する必要があります。
メディックスは2021年に、BtoBのIT製品と製造業製品の選定者を対象として、認知〜購買に至るまでの「情報収集源」、「Web上で見たい情報」、「Webサイト上で取る行動」、「社内稟議に必要なコンテンツ」などを調査しました。その結果をもとに、各フェーズにおける効果的な施策・コンテンツを考察します。
認知
「認知」フェーズでは、見込み客に商品・サービスを知ってもらう必要があります。調査結果から、情報収集源としては「検索エンジン」や「Webメディア」が多く利用されていることが判明しました。また、Web上で見たい情報としては「製品・サービス概要(特長など)」が多く挙げられました。
「認知」フェーズの見込み客に対しては、自社Webサイトやブログなどで商品・サービスの概要を紹介しましょう。SNSやWebメディア、Web広告などを組み合わせるとさらに効果的です。また、SEO対策も重要です。
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興味・関心
「興味・関心」フェーズでは、「認知」から一歩進んで、商品・サービスに興味を持ってもらうことが重要です。調査結果では、このフェーズでの情報収集源は「検索エンジン」と「Webメディア」に加えて「ベンダ・メーカーのホームページ」も挙げられました。Web上で見たい情報は「価格」が多く、Webサイト上で取る行動としては「見積もり依頼」や「製品選定ガイドのダウンロード」、「導入事例ダウンロード」が多いという結果でした。社内稟議に必要なコンテンツとしては「製品パンフレット」の割合が高いことも判明しました。
「興味・関心」フェーズの見込み客には、ホワイトペーパーや、セミナーやウェビナーなどを活用して、商品・サービスの価値を伝えましょう。導入事例や製品パンフレットなどのコンテンツを提供するのも効果的です。
比較・検討
「比較・検討」フェーズでは、見込み客の購買意欲を高めていきます。調査結果では、Web上で見たい情報として「価格」、「機能詳細」、「導入事例」が多く挙げられました。Webサイト上で取る行動は「見積もり依頼」や「Webフォームより問い合わせ」が多く、社内稟議に必要となるコンテンツは「詳細見積もり」が最も多いという結果でした。
このフェーズでは、価格を含め、より詳細な情報を提供する必要があります。他社の商品・サービスとの差別化ポイントがわかる資料などを用意しましょう。商品・サービスのデモやトライアルなどを実施する方法もあります。
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購買
「購買」フェーズでは、商品・サービスを購入してもらうために背中を押すことが重要です。調査結果から、このフェーズでの情報収集源は「ベンダ・メーカーの営業担当」が最も多いことが判明しました。社内稟議に必要となるコンテンツは「詳細見積もり」の他ほかに、「値引き調整」「契約・購入方法関連資料」「サポート体制資料」が多く挙げられました。
「購買」フェーズの見込み客には、安心して購入してもらえるように、機能・仕様の詳細や価格、契約・購入方法、購入後のサポート体制などの情報提供を行いましょう。マーケティング担当者と営業担当者の連携も重要です。
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継続・紹介・発信
購入後の「継続」、「紹介」、「発信」フェーズでは、顧客に継続的に商品・サービスを利用してもらうとともに、拡散・共有してもらうことが重要です。そのためには、購入後の問い合わせ対応やサポートの体制を充実させて、顧客満足度を高めていく必要があります。
さらに近年では、ユーザ交流会やコミュニティプラットフォームを設置する企業も増えています。企業にとっては、商品・サービスに対する感想や意見を収集できるだけではなく、顧客との関係性を維持できるメリットがあります。結果として解約を防ぎ、LTV向上につながります。顧客にとっては、商品・サービスの活用方法や疑問を共有することで、効果的に運用できるメリットがあります。
※本記事で紹介しているアンケート調査の結果は、それぞれ、下記よりダウンロードできます。
【2021年版】IT製品選定者アンケート調査結果
【2021年版】製造業製品選定者アンケート調査結果
新しい3つのフレームワーク
ここまで、マーケティングファネルの3つの種類と、それにもとづいた施策・コンテンツについて解説してきました。ここからは、2000年代以降に登場した新しいフレームワークを3つ紹介します。
顧客意思決定ジャーニー
2009年にコンサルティング会社のマッキンゼーが提唱したのが「顧客意思決定ジャーニー」です。
従来のマーケティングファネルのような一直線のプロセスではなく、循環するプロセスを定義しているのが特長です。顧客は、購入した商品やサービスを利用し、その体験をもとに、次の購入を決定します。また、商品やサービスを評価し、その評価を共有する行動を続けます。このように、購入後の体験が顧客のロイヤリティを高め、再購入を促すことを「ロイヤリティループ」と呼んでいます。
フライホイール
「フライホイール」は、マーケティング会社のHubSpotが2018年に提唱しました。顧客を中心として、マーケティングやカスタマーサービス、営業といった各部署が顧客を取り囲む円形の図で示されます。各部署が連携して顧客に価値を提供し続け、サイクルを回転させることによって、LTVが高まるという考え方です。
マイクロモーメントファネル
「マイクロモーメント」とは、Googleが2015年に提唱した概念です。「何かをしたい」と思った直後に、モバイルデバイスで行動を起こす瞬間を指します。このマイクロモーメントに着目し、「買いたい」と思ったらすぐに購入するという行動を表現しているのが「マイクロモーメントファネル」です。
まとめ
マーケティングファネルは、自社の見込み客の購買プロセスを可視化し、俯瞰的に見ることで課題を抽出・改善していくのに役立つフレームワークです。
マーケティングファネルを活用して見込み客の育成を図る場合には、MAツールを活用すると効果的です。自社のビジネスモデルに沿って作成したマーケティングファネルにあわせて、見込み客をステージ分けし、正しくナーチャリングプログラムを設定することができれば、効率的な育成が可能になるでしょう。
また、ナーチャリングプログラムを作成するという点では、カスタマージャーニーマップを活用するのもおすすめです。ターゲットとなる顧客とのタッチポイント(顧客接点)を最適化し、マーケティングファネルの各ステージにおいて、顧客が必要としている情報とその情報を受けた後の態度変容が想定できれば、より効果的なナーチャリングプログラムの設定が可能になります。
メディックスでは、MAツールの導入・運用支援やカスタマージャーニーマップの作成など、BtoBマーケティングの施策サービスを提供しています。BtoBマーケティングの改善に課題をお持ちでしたら、お気軽にお問い合わせください。
MAサービスについて、詳しくは、こちらもご覧ください。